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No.397(2016/6/20)
アルゼンチン大統領が経済界とレイオフ停止の合意

 昨年12月、クリスチナ・キルチネル左派政権を2.8%の僅差で倒して政権についた中道右派のマクリ大統領は、経済界との合意で、レイオフを90日間停止すると発表した。
 マクリ大統領は高い失業率とインフレの克服、政府支出の削減を公約として当選したが、就任後も事態は改善されていない。
 政府筋によるとキルチネル政権下で雇用された公務員の多くに欠勤が多く、レイオフはやむを得ないとしているが、労働組合は無差別な解雇が広がっているとして抗議姿勢を強めている。
 他方、前政権の野党は「正当な理由のない解雇禁止」の法案を提出している。今回のレイオフ90日間停止の合意の期間内にどのように事態が改善されるか、注目が集まっている。

ウーバー社がニューヨークで最初の労働組織を承認

 インターネットによるタクシー配送のウーバー社が同社で最初となる「労働組織」(※「労働組織」とするのは強制的な組織加入や組合費のない限定的な組織であるため)を承認した。この組織はニューヨーク市の3万5000名運転手による独立ドライバー・ギルド(IDG)とよばれるもので、全米機械工労組(IAM) の傘下に所属する。

 各種判例では、運転手を独立業者としてきたため、労働組合はタクシーやリムジン運転手の組織化に取り組んでも労組結成の事例は少なく、通常の会社が支払う社会保険料や医療保険、退職金基金などを回避して最低の労務費で事業を拡大、ウーバー社もカリフォルニア州を中心にインターネットを通じて45万名の運転手と契約し、タクシー配送事業の規模を急拡大してきた。

 こうした中で合意された今回の5年協定は、「団体交渉権は認めない。しかし労働条件を討議する場、法律相談の割引料金、ロードサイドアシスタンスや生命保険の提供、苦情処理制度などを認める」とするものである。

 しかし、そうしてできた労働組合にも“御用組合”の疑いがかかっている。協定について会社は「合意は会社が目指す運転手との緊密な協力に向けて、より良いコミュニケーションを図るものだ」と説明する一方、IAM関係者も「合意は双方にとってベストなもの」とする。運転手の収入増のために必要な各種保障と支援を図りながら、将来の労働組合結成の権利も残している。長年無視されてきた運転手の声をIDGが変える。御用組合の疑いも評価の高いIAMには通用しない」と評価する。

 また、ワシントンのある著名なシンクタンクも「この合意は一般の契約業務の形を変えるだけではない。新たな組織が生まれる可能性がある。強制的な組織加入や組合費のない限定的な労働組織というものを多くの会社が受け入れる素地があり、とてもエキサイティングに感じる」とここでも高い評価をする。

米国2大労組が協力関係の強化を計画

 米国最大の2つの労働組合、サービス労組(SEIU 200万人)と州地方自治体労組(AFSCME 160万人)が全米各地において、政治活動、組織活動そして協約交渉に至り協力関係を強化する計画を立てた。

 両労組はその決議案の中で「双方の労働組合には文化や構成の違いがあるが、労働運動に対する政治的迫害、拡大する所得格差や職場環境の劣悪化に対して、違いを超えて共通の目標を打ち立てなければならない時代が来た。正式合併の可能性を含めて協力関係を強化する」と述べている。

 決議案は5月5日のSEIU役員会で採択され、AFSCMEは6月の役員会にかけられるが、正式採択は今年開催される各労組の定期大会の承認による。
 AFSCME(サウンダース会長)は大多数が公務員だが、SEIU(ヘンリー会長)は公務員と民間がほぼ100万人であり、ニューヨーク、カリフォルニア、イリノイに多く所在する。

 具体的な活動としては、最近ペンシルバニアで行われたような在宅介護労働者の組織化協力、政治面では学校や病院への補助金の共同申請のメリットなどがある。

 両労組はその他にアメリカ教員連合会(AFT)と全国教育協会労組(NEA)という2つの教員組合とも緊密な協力関係を築いており、組合費の徴収廃止問題では共同でその阻止に向けて活動を展開している。なおこの問題では最高裁9名の判事のうち共和党指名の判事が2月に死亡したことにより、現勢力は共和党4名、民主党4名の拮抗状態となり、廃止決定が出来ない状況になっている。

 しかしながら、両組織の文化にはかなりの違いがあり、地方組織などには懸念を表明するものもかなり多い。特にSEIUの革新的な運動と積極的な組織化活動がAFSCMEに受け入れられるかどうか。SEIUは多額の経費を使ってマクドナルドなどの「時給15ドル要求運動」を主導して、各州における最低賃金15ドルの実現にも大きな影響を起こしているが、こうした風土を共有できるかどうか。その他にも、10年前にAFL-CIOを脱退したSEIUだが、この関係が合併の暁にどうなるのか。ヘンリー会長は「この問題は両労組の関係が強化された後で考えればよい」と述べている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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