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No.389(2016/4/13)
カンボジアの国会で懸案の「労働組合法」が成立

 4月4日、カンボジアの国民議会(国会)で、同国でこの8年間ほど議論が続いてきた懸案の「労働組合法」が成立した。政府は2008年からILO(国際労働機関)の協力も得て制定に向けての検討に入り、2011年には草案を提示したが、厳しい意見の対立などから論議は難航した。2014年に入り、政府は改めて検討を本格化、三者構成による審議を再開し、同年10月に原案を発表した。しかし、対象とする労働者、労働組合の権利と運営、労使紛争処理、政府の関与などをめぐり労使の対立が続き、コンセンサスには至らなかった。2015年11月、政府は改めて「労働組合法」案を決定、国民議会に提出したが、野党や労働団体は反対を強め、抗議活動などが続くなか、このほど与党の賛成多数で可決された。
 カンボジアでは、内戦と恐怖政治の時代を経て、1993年に現在の「カンボジア王国」が発足したが、労働法制の歩みは1997年に制定された「労働法」(Labor Law of Cambodia)にはじまる。この法律は労働契約、労働基準等を中心とする総合的な内容であり、労働組合、労働紛争処理に関する規定が不十分であることが指摘されていた。これについて、労働団体は、カンボジアがILOの第87号条約(結社の自由・団結権保護)、第98号条約(団結権・団交権)を批准していることから、これを踏まえた労働組合の権利の実現をはじめ規定の大幅な強化を求めた。一方、使用者側は、同国の経済を支える繊維・衣料産業などで労働争議が多発していることを指摘、労働組合活動の管理と規制、労使紛争処理への政府の関与などを規定する新しい労使関係法とするよう主張した。
 今回制定された「労働組合法」は、これまでの「労働法」の労使関係にかかわる部分を拡充し、労働裁判所を規定するなど、労働組合法としての体裁を整えたものとなった。しかしながら、公務員や教員などが対象外であることや、労働組合に財務状況の提出の義務づけ、労組の運営や労使紛争処理への行政の関与など、国際的な組織へのウオッチの強化を含め、行政の労組に対するコントロールの色彩を濃くしたものといえる。
 この内容について、労働団体は、現行の「労働法」を実質的に改悪するものとして強く抗議し、カンボジアの加盟組織を支援してきたITUC(国際労働組合総連合)やインダストリオールなどの国際産業別労働組合も「カンボジア労組の修正要求を全く反映していない」等と批判する見解を発表した。また、政労使三者のコンセンサスによる法案づくりを支援してきたILOの現地支局は声明を発表、「1997年の労働法制定以来の新法であり、政労使は今後この法律の公正で公平な実施に目を向けることが重要」としつつ、「主要な改善が見られるが様々な課題も残されている」、「ILO条約との整合性については、ILO本部の専門家による委員会の検討範囲である」としている。
 なお、現在、カンボジアの労働団体は、主要なナショナルセンターとして、「カンボジア労働組合総連盟」(CCTU)、「カンボジア労働組合連盟」(CCU)、「カンボジア労働連盟」(CLC)の三つがある。この三組織は、政治的には、それぞれ、与党「人民党(旧人民革命党)」系、野党「救国党(旧民主党等)」系、中立系といわれるが、いずれもITUCに加盟しており、2012年には「ITUCカンボジア加盟組織協議会」(ITUC-CC)を結成、政策面での連携を強めてきた。また、JILAFは2001年度から労組の若手リーダーを日本に招聘するプログラムを、2009年度からは現地でセミナーなどの支援事業を行い、労働法制への対応を含む建設的な労使関係構築への協力を続けている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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