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No.385(2016/3/16)
ナイジェリアの新政権と労働組合の動向

 アフリカ西部の大国、ナイジェリアで、経済政策をめぐる政府と労働組合の対立が先鋭化している。同国では、昨年の大統領選挙で政治と経済の改革を訴えた野党、「全進歩会議(ACP)」のムハマンド・ブハリ氏が当選、11月には新内閣がスタートした。しかし、原油生産に依存する同国の経済と財政は石油価格低迷の直撃を受けており、政府は公共料金の引上げの意向を表明したが、労働団体や市民組織が強く抗議し、2月1日に予定していた電気料金の引上げは棚上げとなった。さらに2月8日には、首都アブジャをはじめ全国で、政府方針の撤回を求める大規模な行動が行われた。政府は燃料などの石油製品への補助金についてもカットを行う方針であるが、労働組合は抵抗の姿勢を強めている。
 昨年の大統領選挙では、まん延する汚職と社会的格差の拡大への対応が焦点となり、1999年の民政移管以来、政権の座にあった「国民民主党(PDP)」の現職・G.ジョナサン氏が敗北、ナイジェリアでは初めてとなる平和裏の本格的な政権交代として注目された。労働団体は、ブハリ大統領の汚職撲滅の方針について、最大組織の「ナイジェリア労働会議」(NLC: Nigerian Labour Congress、約500万人)が全面的な支持を表明するなど、新政権の清新さへの期待がある。一方、公共料金引上げについて、労働団体は、「好景気の時期に原油収入から積み立てられた巨額の基金が、腐敗した政治のなかで失われた」などとして反対姿勢を強めており、ゼネストを行う可能性も示している。
 また、労働団体は最低賃金の大幅な引き上げを求めている。現在の月額1万8000ナイラ(約1万260円)は、前政権時代の2010年のものであることから、その後の通貨ナイラの対米ドル・レートの急落、物価の上昇や経済の成長を考えれば抜本的な改善が必要との主張である。さらに、NLCのA.ワッバ会長は、「このような時期に最低賃金の引下げを口にする州知事もあるが、それは労働組合への宣戦布告であり、我々は警戒を強める」と述べている。
 ナイジェリアは、アフリカ諸国のなかで最大の人口(1億7850万人・2014年)を擁するが、2013年には、国民総所得(GNI)においても南アフリカを上回りトップとなった(5264億ドル=約59兆7990億円・世界24位)。経済は、アフリカ最大の産油国としての収入をベースに、2001年からの10年間、7~10%の成長を見せた。しかし、産業構造は原油生産と農業が中心であり、製造業への直接投資はようやく拡大の動きを見せている段階である。また、格差と貧困の拡大が大きな影を落としており、一日の所得が1.25ドル(約142円)以下の貧困層が国民の7割近くを占め、一人当たりのGNIでは2950ドル(約33万5120円)、世界149位にとどまっている。社会開発が遅れる北東部では、イスラム過激派組織ボコ・ハラムが活動を強めるなどの治安問題も抱えている。
 同国の労働組合は、英国の植民地時代の19世紀末に始まり、1912年には最初の全国組織を結成、その後、今日までアフリカ西部の労働運動の中心地の一つである。現在、ナショナルセンターとしては、最大組織のNLCのほか、「ナイジェリア労働組合会議」(TUC:Trade Union Congress of Nigeria、約50万人)などがあり、いずれもITUC(国際労働組合総連合)の加盟組織である。産業別では、石油・天然ガス産業、公務部門をはじめ、各分野の組織があるが、最近では非正規・インフォーマル労働者の増加への対応やNGOとの連携などにも力を入れている。

*1ナイラ=0.57円(2016年3月10日現在)
*1ドル=113.01円(2016年3月10日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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