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No.384(2016/3/10)
ブラジルの労働事情

 2016年1月22日に行われた中南米チームの労働事情を聴く会から、ブラジルの報告(概要)を紹介する。ブラジルからは、ブラジル中央統一労働組合(CUT)、労働組合の力(FS)/、ブラジル一般労働組合 (UGT)の3組織が参加した。

 ブラジルは、現在、大変大きな危機を迎えている。初めは政治的な危機に始まり、その後、経済的な危機に移った。2015年は様々な問題が重なり、経済成長はマイナスになったと見られる。失業率は、2014年には過去最低の4.3%を記録したが、2015年に入り徐々に上昇し7月~9月期には8.9%に達した。経済・失業率とも、さらに悪化することが予測されている。経済が低迷する中で、消費者物価は10%前後の上昇を続けインフレは加速している。
 政治的な危機とは、経済の低迷に加え与党の政治家が関与したとされる汚職疑惑が拡大しており、ルセフ大統領の弾劾を求める声の高まりとともに、政権に抗議する大規模なデモが行われていることである。
 さらに懸念される問題は、ブラジル議会で可決された法案(2015年4月下院で可決、上院に送付)である。この法案はアウトソーシング、派遣労働を拡大するものである。現行の派遣法は、清掃、警備等に限定されていたが、法が改正されると、民間企業では全ての事業活動に派遣労働者を使うことが認められることになる。
 労働組合は、この法案に断固反対する立場で法案の凍結を求めており、5月のメーデーのほか、月末に「全国抗議行動の日」とし、連邦直轄区と25州で派遣法と財政調整に反対するデモを行った。
 ある研究によれば、派遣労働者は平均して正規雇用労働者より25%少ない収入で、3時間長く働いていることが明らかになった。また、ブラジルには、労働手帳に記入のある労働者(正規雇用を証明し、社会保障を受けるために必要)は4740万人いるが、そのうち1270万人(26.8%)は派遣労働者である(2013年)。
 景気の低迷と失業率が上昇する中で、インフォーマル(非公式)就業者も増加したと推測される。現時点では、フォーマル就業の減少を示す傾向は確認されていない。2015年第1四半期の全国家計調査を見ると、労働手帳に使用者の署名を受けている民間部門労働者は78.2%(フォーマル)となっているが、家事使用人は、この数字が32.3%と大幅に低下する。つまり、家事使用人の大多数はインフォーマル就業者となる。また、家事使用人の大部分は女性である。
 ブラジルでは女性の賃金は、同じ職務を遂行する男性より平均して25%低い。これはフォーマル労働市場の話であり、インフォーマル就業の場合は状況がさらに悪化する。女性は、失業者及びインフォーマルで不安定な状況下で働く労働者の大部分を構成し、家事使用人はこの数字の相当部分に対応している。
 労働組合の最も大きなチャレンジは組織の拡大であると同時に、民主主義を守っていくことである。アウトソーシング、派遣労働の拡大には反対の旗を揚げ続け、生活を守るため賃金の引き上げを求め闘っていく。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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