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No.381(2016/3/2)
エジプトの労働事情

 2015年12月4日に行われた中東・アフリカ北部チームの労働事情を聴く会から、エジプトの独立エジプト労働組合総連盟(EFITU)の報告(概要)を紹介する。

【労働者の権利を守る新労働法の制定を!】

 エジプトはアラブ世界最大の国であり、人口は9000万人を超え、労働者数も2700万人を超えている。しかし、このうち労働組合に加盟しているのは500万人に過ぎない。
 2011年の革命以前の40年間は、法律によって労働者を労働組合に強制的、自動的に加入させる仕組みがあった。その労働組合は、政権に忠実であると同時に、エジプト労働者の権利の擁護を放棄していた。このことは国際条約違反である。エジプト政府は、ILO87号条約(結社の自由)も98号条約(団結権・団交権)も署名はしているが、これに違反していた。
 組合員はこうした状況に対して怒り、多くの人達がこの労働組合を脱退するという現象が起き、さらには全国規模のデモなどの行動にも結びついていった。中でも有名なのが、エル・マハラ・エル・コブラの町の繊維工場労働者のストライキである。この運動がエジプト各地のストライキや抗議デモを誘発し、2011年2月のエジプト革命につながった。
 革命後は、独立した労働組合が数多く設立され、87の労働組合がつくられた。これらの労働組合によって、独立エジプト労働組合総連盟(EFITU)という組織が形成された。その後、EFITUに加盟した組織数は321組合に達し、組合員数は120万人となっている。
 独立労働組合によるストライキなど正当な組合活動に対して、政府は、騒乱を引き起こすとして、ストライキや抗議デモを犯罪とみなす法律を制定した。一方で、エジプト政府はILOから、独立労働組合を社会対話に参加させるように圧力もかけられた。その結果、国民社会対話評議会へ参加し、最低賃金法に関わる協議や、新しい労働法や労働関係調整法の制定などの成果が得られた。最低賃金は、従来の600エジプトポンド(78米ドル=約円)から1200エジプトポンド(156米ドル=約円)に引き上げるということに成功した。
 しかしながら、EFITUは幾つかの重要な課題に直面している。1つ目は、有期雇用を正規雇用へ転換させるという課題である。2つ目は、独立労働組合に参加したことを理由に解雇された労働者の復職である。3つ目は、新しい労働法の成立である。4つ目は、最低賃金を公共部門だけではなく民間部門にも適用させ、さらに水準を引き上げていくことである。さらに、民間企業に対しては、年間の利益から20%を労働者に配分することを義務づけるという課題もある。
 新労働法では、労働者にとって多くの権利を実現することができたと考えている。例えば、労働契約を行うときは、必ず労働事務所において、証人の前で署名をしなければいけないことになった。また、これまでは会社が勝手に労働者を辞めさせ、別の人を雇うというようなことがあったが、新法では、勝手なことができないように労働事務所で、離職あるいは新しい仕事の契約に署名することになった。さらに、解雇されたときの賃金も保障され、労働者は解雇が最終的に確定するまで賃金が支払われることになる。
 また、新法では労働紛争を専門に扱う労働裁判所を設置することになる。従来の裁判では、判決まで5年も6年もかかっていたが、労働裁判では2カ月~3カ月で紛争の解決をめざすことになる。
 エジプトは、かつて人民議会の50%が労働者及び農民の代表が議席を占めていたが、これは現在廃止されている。今回の選挙(2015年10月~12月に実施。2013年のクーデター後、初の選挙)で、我々は18人の候補者を立てたが、財政的な問題もあり、残念なことに1人も当選させることができなかった。したがって、当選した議員たちにEFITUの考えが通るよう働きかけを行っていく。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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