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No.380(2016/2/26)
香港・東ティモールの労働事情

 2015年11月15日に行われたアジア・太平洋チームの労働事情を聴く会から、香港、東ティモールの労働事情を紹介する。

【香港の労働事情】

 香港の総雇用者数は2015年5月~7月の間で379万7800人、同期間の労働力人口は393万1900人となっている。失業率は、3.2%~3.3%で推移している。また、不完全雇用率(就業時間が週35時間未満)は1.4%となっている。
 現在、最も重要な問題は長時間労働の是正である。政府の調査によれば、労働者の4人に1人は長時間労働を強いられている、あるいは長時間勤務であるという結果が出ている。58万人以上の労働者が週に60時間は働いているという状況にある。この中には、海外から香港に来て、家政婦、メードとして働いている家内労働者も含まれている。香港は、世界でも最も労働時間の長い都市の一つとして知られている。
 香港労働組合連合(HKCTU)は長時間労働の規制をするよう、長年、政府に強く要請してきた。HKCTUの提案は、週44時間労働を標準時間とし、時間外割増率50%、時間外を含めた最長の労働時間を60時間以内とすることである。
 また、別の調査によれば、長時間労働による悪影響が労働者に出ているということが明らかになっている。調査によれば、およそ4割のドライバーは、長時間労働のために十分な休息時間がとれていない。このような状況では事故を起こしやすく、運転手や乗客だけではなくて、ほかの車や歩行者にも危険が及ぶことになる。
 政府は長時間労働問題について協議をするため、Standard Working Hours Committee(標準労働時間委員会)を立ち上げ議論を開始した。しかし、問題が解決されるまでの道のりはまだ長いと考える。
 香港政府は、労働時間に関する法規制を実施することを保証していない。従って、労働時間を規制するためのロードマップやタイムテーブルを持っていない。現在、政府で準備しているのは、香港において労働時間に関する法律を導入すべきなのかということを市民に問いかける、いわばヒアリングの準備だ。このヒアリングの期間は2年であり、労働時間に関する法律の導入を可能な限り遅らせるために、政府はあらゆる手段を講じていると考えられる。

<JILAF注>
 ・スイスの大手金融機関UBSが2015年9月1日に公表した「Prices and Earnings 2015」の結果では、香港の年間労働時間は2606時間で最も長い。
 ・香港の労働時間は、週休1日、国の祭日、有給休暇7~11日、振替休日、出産休暇等が法で定められているが、1日あるいは週の労働時間や時間外割増率などの定めはない。

【東ティモールの労働事情】

 東ティモールは、オセアニアに位置する小国であり、所得水準も低位にある。人口は119万人で、その68.52%が農村部、31.48%が都市部に住んでいる。また、人口の45.78%が15歳未満となっている。
 経済は、石油・ガスなどの天然資源収入もあり2ケタの成長を記録するなど好調を維持してきた。東ティモールの経済は、主にサービス産業が基礎となっており、農業がGDPに占める割合は18.42%、製造業は26.34%となっている。独自通貨を持たず、米ドルを採用しているため、国独自の通貨政策は持つことはできない。
 労働組合が直面する課題としては、インフォーマルセクターで働く労働者、海外へ出稼ぎに行く労働者の問題を抱えている。東ティモールでは、労働人口の85%がインフォーマルセクターで働いており、ほとんどの人が、不安定で危険な労働条件のもとで仕事をしている。インフォーマルセクターで働く人たちは、労働法が適用されず、常に使用者によって搾取されている。また、韓国やオーストラリアなど海外に出稼ぎに行く労働者たちも3K(きつい、汚い、危険)職場で働くなど非常に厳しい状況に置かれている。
 人口の46%が15歳未満と若い国であるが、その一方で若年層の雇用の場も少なく失業率は高い。こうした背景には、教育の不足によって技能が低いことも影響している。教育の不足は、労働組合あるいは労働者の権利への関心の低さにつながっているため、労働組合の組織率も低い。こうした状況から、労働者の権利と利益を守るための闘いは厳しい状況に置かれている。さらに、法律の執行が十分ではなく、政府も法律をきちんと執行していこうという意思が欠如している。また、労使関係の政策に関する社会的な対話に対しても政府は関心を示していない。
 このような問題に対応していくためには、新しいアプローチを見つけていくことが必要である。そして、政府との対話を強化していくことも必要である。また、組合員に対しては、労働者の権利と利益を守れるよう教育を強化し、組織を拡大しつつ労働組合の力を強化していくことも重要である。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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