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No.376(2016/2/9)
ナイジェリア・ガーナの労働事情

 2015年10月23日に行われたアフリカ英語圏チームの労働事情を聴く会から、ナイジェリアとガーナの労働事情を報告する。

ナイジェリアの労働事情

【原油安で厳しい経済状況の中、テロによる治安問題も】
 ナイジェリアの人口は、現在、1億7000万人。土地は非常に肥沃であり農業に向いている。また、石油や天然ガスなど天然資源にも恵まれている。このため国の歳入の多くを石油に依存している。原油価格が低迷している中、2015年の実質GDPの見通しは5.68%、物価上昇率の見通しは11%となっており、厳しい状況が続くと見込まれている。

  2013年 2014年 2015年
(見通し)
実質GDP(%) 5.7% 6.3% 5.68%
物価上昇率(%) 8.7% 8% 11%

 最低賃金は、前回(8年前)決定された水準と変わっていない。再交渉を要求しているが、まだ交渉は始まっていない。月額18,000ナイラは約90.5米ドル(約1万750円)となるが、この水準で生活し、税金を支払わなくてはならない。ナイジェリアでは税金が免除される制度はない。
 ナイジェリアでも非正規雇用は大きな問題となっている。非正規雇用の多くは、カジュアルワーカー、臨時雇用、契約労働と呼ばれている。ナイジェリアの非正規労働者は、ほかに職がなく、雇用の場がないため仕方なく、不本意に非正規として働かざるを得ない者が多い。特に新卒者の場合は、ほかに選択肢がなくて非正規労働者にならざるを得ない。このような労働者は、年金や退職金の権利がなく、一般的に住宅手当、通勤手当等も受けられない。民間部門のこうした雇用がインフォーマルセクターであり、最大の雇用の受け皿となっている。
 まず一番の課題は、公務部門、民間部門の双方で非正規労働が増加していることである。賃金の未払いも問題である。中には、500~600時間の賃金が未払いとなっている労働者もいる。公務員の給与の支払いも滞っていることも問題となっている。
 年金制度が職業別に分かれているので、非正規労働者をどのように対応させるのか、また年金受給資格を得るための拠出が難しい非正規労働者が多いことも課題である。
 さらに、2008年以降、過激派組織ボコハラムの活動で治安が脅かされている問題もある。2014年には、さらに攻勢を強め北東部の町や村を占領したり、数百人の人質を取ったりした。チボクにある寄宿学校では、約300人の女子学生が誘拐された。
 これらすべてに共通するのは、責任あるリーダーシップの欠如という点である。相手を信頼すること、自ら自信を持って相手も尊重すること、約束を守ること、この3点が欠けると問題が深刻になる。
 まずは状況を監視し、ピケを張り、集会を開催する。課題を抱える組合に組織として関与する。ストをしなければ動かない使用者が多いので、団体交渉に応じない場合はストで対抗する。
 新しい大統領が選出されて以降、政府と労働組合との関係は協力的になっている。公務員賃金未払い問題にも救済措置を出す指示が出された。
 我々はあきらめることなく政府に対話を呼びかけていく。必要な法律の制定や政策導入を求めて、ロビー活動を行っていく。

*1ドル=118.78円(2016年1月28日現在)

ガーナの労働事情

【不安定なインフォーマル労働の拡大続く】
 ガーナ経済は原材料の輸出に依存した経済である。ガーナは過去30年間、著しい経済成長を達成した。しかし、国内総生産(GDP)成長率を見ると、2013年の7.3%から、2014年には4.2%に低下し、2015年は3.5%と予測されており、経済活動の鈍化を示している。2013年に1,841米ドルであった1人当たり所得は2014年には1417米ドル(約16万8311円)に低下した。
 ガーナ経済は米ドルに左右されやすい経済である。自国通貨安とエネルギー価格の上昇によりインフレが起きている。2013年12月のインフレ率は13.5%であるが、2014年12月には17%に上昇した。2015年の見通しは13.7%となっているが、これが達成できるかどうかは為替の影響が大きい。
 現在の最低賃金日額は3米ドル(約356円)に満たない。2013年は5.24ガーナ・セディ(2.4米ドル=約285円)、2014年は6ガーナ・セディ(1.9米ドル=約226円)で、2015年は7ガーナ・セディ(2.0米ドル=約238円)と予測されている。ガーナの特徴として賃金の低さが挙げられる。ガーナ生活水準調査の結果によれば、インフォーマル経済で働く人が多く、労働人口の45%の月収が平均149.04ガーナ・セディ(約42米ドル=約1989円)であり、これは2014年の全国最低賃金月額の162.00ガーナ・セディ(約45.5米ドル=約5404円、最低賃金月額を得るためには、最低月27日働く必要がある=規則)を下回っている。
 法定労働時間は1日8時間、週40時間だが、インフォーマル経済に従事する多くの人が、生活のために1日8時間以上の長時間労働をせざるを得ない状況にある。
 労使関係は比較的穏やかな状況を保っているが、主として不当な労働条件を理由にした数多くの労使紛争が起きているのは事実である。労使紛争を扱う機関である全国労働委員会が受理した件数は、2007年に686件、2008年に632件、2009年に722件となっており、増加傾向にある。残念ながら、直近のデータはない。
 ガーナの労働法によれば、労働者を雇う場合には労働契約が必要であり、特に6カ月以上の雇用契約の場合は書面で契約することが必要である。契約書には、採用日、役職、賃金、労働時間、時間外手当、年次休暇、またけがや病気の場合の条件、解雇予告、社会保障、年金制度などの詳細が含まれていなければならないことになっている。しかし、残念ながら現実は全くそうなっていない。雇用主側には、労働者から搾取しようという意図があり、またこのような違反を取り締まる監督機関の権限が非常に弱く機能していないのが実態である。
 正規の仕事があるにもかかわらず、それが契約社員や臨時雇いなどの非正規(インフォーマル)の仕事に置きかわる状況が出てきている。労働者が非正規の働き方を選ぶのではなく、雇用主側に労働者から搾取しようという意図があるためにこのような状況が生まれている。
 ガーナの労働市場は、インフォーマルセクターが拡大しつつある。本来であれば、フォーマルの仕事であるものもインフォーマルに置き変わっている。インフォーマル経済ではほとんどが独立自営の労働者であり、収入は不安定で、休暇の余裕はない。
 労働組合の組織率(組織化された産業部門で働くフォーマルセクターの労働者の割合)は1999年には50%と見積もられていたが、2006年までに36%に低下した。経済が成長しない中で、失業者が増え、組織率が低下している。フォーマル経済が縮小する一方、インフォーマル経済下の労働者は組織化されず、圧倒的に不安定就業で、何のセーフティーネットもない。
 企業別組合など、全国的な独立労働組合の乱立が、ガーナ労働組合会議(GTUC)とその加盟組織の地位を脅かしている。ガーナの労働法では、企業別労働組合は独立していなければならないとされている。つまり、問題を抱えていてもナショナルセンターや産業別組合の支援を得られない。従業員にとっては組合員のメリットがないため、このような労働組合が労働組合に対する失望感を拡大している。企業別労働組合ではなく、産業別組織のブランチとして企業内に労働組合を作れば、こうしたデメリットはなく、ナショナルセンターや産業別組織の支援を受けることができる。

争議件数

申立/訴え種別
合計受理件数
2007年 2008年 2009年
即時解雇 163 134 136
不当解雇 172 151 235
退職金/退職手当 65 47 41
給与不払い 77 49 62
労働者補償 26 14 5
剰員解雇/離職手当 56 42 40
その他 127 195 203
686 632 722

その他=職場復帰、不当労働行為、休暇不払い・未取得、不当待遇、劣悪な労働条件等

*1ドル=118.78円(2016年1月28日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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