バックナンバー

No.374(2016/2/2)
タイ軍事政権下の労使紛争と国際労働運動の対応

 2014年5月軍事政権になって以来、タイでは多くの企業が契約労働者、移民労働者を雇う傾向が強まり、正規労働者への圧力を強めて労使紛争の背景となっている。ある企業では、組織化を阻止するため、従業員の6割を契約労働者に入れ替えた。インダストリオールは、2015年10月にILO結社の自由委員会に18の企業をリストアップし苦情を申し入れた。

 インダストリオールのILO結社の自由委員会への苦情要旨
  1. 3900万人の労働者の約半数はインフォーマル労働者で過酷な状態下にあり、タイ政府はその保護を怠っている。2014年5月の軍事クーデター後の政府になっても変化していない。
  2. タイの法律は75%の労働者に、結社の自由と団体交渉の権利をもたらしてなく、東南アジア諸国のリーダーでありながら、労働組合の組織率はわずか1.5%だ。
  3. 多くの多国籍企業が進出している工業団地では、半数の労働者が非正規労働者で、数年同じ職に就きながらタイの労働法は労働組合加入を困難にしている。また、組織化をしようとすると、その非正規労働者は解雇されてしまう。
  4. 労働者が労働組合結成に動くと解雇され、裁判所で職場復帰命令を出しても、使用者が無視する。他の例だと、企業が意図的に裁判を長引かせ、労働者に職場復帰より金銭的解決を強いる。
  5. インダストリオールは、タイ政府に対し、労働法の見直しを要請する。そしてILO条約87号と98号の批准を求める。

 タイのナショナルセンターは、政府への請願デモ、集会が大衆集会法2015によって制限され、フラストレーションをためている。大衆集会法2015は次のように規制し、違反者には罰金及び最高10年以上の禁固刑が課せられ、以下の厳しい制限が設けられている「全ての集会は24時間前に届け出ること、王宮のある地域から150m以内の集会は禁止、当局が必要と判断したら国会・政府庁舎・裁判所から50m以内での集会は禁止、当局の許可がない限りラウドスピーカーは夜中から午前6時まで使用禁止、デモは午後6時以降禁止、集会は平和裏に行われなければならない、従って集会参加者はいかなる武器も所持してはならない」
 インダストリオールのユリキ書記長は、12月14日タイ労働省に対し、ILOへの苦情のフォローも含め、10月にILOへ苦情を申し立てたように、ILO条約87・98号を批准し、タイにおける結社の自由及び団体交渉の権利を確立すること、国営企業法と労使関係法が、タイの良好な労使関係を確立することを妨げている、との指摘を行った。これに対し、労働省は、現在法改正を含めて検討すると回答した。
 インダストリオールは、米国政府から多額の資金支援を受けている国際労働連帯アメリカンセンター・タイ事務所と連携して、7人のオルガナイザーを配置し、タイでの労働組合組織化と、労働組合役員の研修をこれから行うとしている。ただ、米国がタイに特恵関税制度を付与するか議会での審議もあり、政治的にタイ政府に圧力をかける狙いもある。こうした動きは個別企業労使関係にとっては不安定要因ともなる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.