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No.372(2016/1/26)
カンボジアの労使紛争

 2015年12月17日に行われた労使紛争未然防止セミナーにおいて報告された、カンボジアの事例(概要)について報告する。

<報告者>
◇プレット・ソ ウオト氏 カンボジア労働総連合(CLC)
◇ダン・エンカカダ カンボジア使用者協会(CAMFEBA)
◇キム・ピッチダ カンボジア縫製業協会(GMAC)

【プレット・ソ ウオト氏】
 カンボジア労働総連合(CLC)は、衣料品、観光、建設、運輸、業種混合、プランテーション、農業、インフォーマルの8つの加盟組織で合計の組織人員は9万8000人となっている。カンボジア全体の労働組合は、2015年7月時点で3400組合、産別組織が111、総連合は12となっている。
 労使紛争の現状は、労働組合の無い企業では増加傾向にあり、労働組合があり、労働協約が締結されているところは減少傾向にある。
 労使紛争の原因の1番目は、労働条件に関する事で、使用者の労働法違反、特に退職金や残業手当の未払い等が問題となるが、賃金水準が低く働く者のニーズを満たしていないことも問題である。次に多いのは、労働組合の設立を使用者側が認めない事による紛争である。背景には、労働組合結成に対する使用者側の不当労働行為(不当解雇)がある。また、労働組合設立の手続きも複雑であるうえに、会社側は労働組合の設立について、労働省に抗議を行い妨害している。3つ目は組合員への差別で、労働組合に入った者を、退職金を払わずに解雇したり、賃金の引き上げも不平等に扱ったりしている。4つ目は、紛争解決までに非常に時間がかかるうえ、最終的な仲裁裁定を使用者側が守らないこともある。
 カンボジアには労働裁判所は無く、すべて仲裁委員会が紛争の処理にあたっている。交渉で解決できない場合、あるいは交渉を拒否されたりしたときは、労働省への不服申し立てを行い、それがだめな場合は、仲裁委員会に持ち込まれることになる。それでも解決しない場合はストとなるが、この場合は過半数の賛成が得られるかが問題となる。ストを行うためには、全労働者の50%プラス1以上の賛成が必要であるが、自らの生活のため賛成に及び腰になる労働者も多い。
 ストライキが可能となるには、交渉からはじまり、不服申し立て、仲裁裁定を経るため2カ月以上必要となる。さらに、工場の前でストを行うと交通妨害があったとして違法ストにされ、罰金、解雇等の不利益を被る。
 JILAFを含めて日本への期待は、労使紛争の未然防止に関する情報交換を行い、今まで以上に連携を強化して欲しい。特にサプライチェーン全体を通して労使関係が良くなる事を期待したい。国内法のみならずILOの条約についても尊重することを、各バイヤーに働きかけ、遵守するよう指導をしてほしい。

【ダン・エンカカダ氏】
 さまざまな課題を乗り越えるために、まず労働諮問委員会があり、全ての労使関係の問題、課題に対応している。このほか、仲裁・評議会があり、さらに労働裁判所の設置について検討中である。
 労働諮問委員会は、政府から14人、経営側7人、労働組合側7人で構成され、最低賃金もここで論議される。2016年の新しい最低賃金は、見習い月額135ドル(約円)、正規社員140ドル(約円)。さらに交通費として7ドル(約円)を支給する。また、在職年数による加算(2年で2ドル=約円、4年で4ドル=約円)もある。
 経営側から見た問題としては、1つの工場内でも5~6つの労働組合があり、それらの労働組合が組織化のための人気取りをしていることがある。これら全ての労働組合を満足させるのは、非常に至難の業であることを理解して欲しい。労働組合の人気取りのため、理不尽な要求をしてくることもある。労働組合数が多ければ、その対応でマネジメントにも支障が出る。
 労働組合の問題としては、労働組合がばらばらであることと、労働組合が複数あること。そして、外部からの介入があること。違法なスト、または山猫ストがあることである。また、大きな労働組合と締結した協約を、小さな労働組合が締結を拒否するという問題もある。私たちは、こうした問題を解決して、労使関係をより調和のとれたものにしていきたいと思っている。

【キム・ピッチダ氏】
 経営側としても、1件の労使紛争が起きれば、膨大な損失となるので、できるだけ回避したいと考えている。
 労使紛争の現状は、法に定めた水準を越えた要求を、それぞれの労働組合が行ってくるところから始まっている。そして現状は、どんどん労働組合が拡大する中で、どうしたらモラルや倫理的な部分に対応できるのかが問題だと考える。そのためには、しっかりとした法律の整備が必要である。現在、国は労働組合法の制定ならびに労働裁判所の設立に向けて動いている。
 労使紛争の未然防止策としては、カンボジアは法律に関しても、労使関係についても知識が不十分であり、この部分については経営者間で勉強会を開催している。また、工場内での団体交渉や労使協議の充実も重要と考える。もう一つの方法としては、労働監督官へ訴えることもできるので、これも紛争の未然防止につながると考えている。

以 上

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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