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No.369(2016/1/12)
ネスレ社、タイにおける奴隷労働の存在を認める

 27万人を超える従業員を抱えている世界的な大手食品、ネスレ社(本社ジュネーブ)は、過去にアメリカ公正労働協会(FLA)から、チョコレート原料であるカカオ豆の生産に児童労働が存在するとの指摘・勧告があったが、今度は加工食糧品の原材料である魚介類の仕入先であるタイにおいて、過酷な奴隷労働があることを確認したと発表した。ネスレは、児童労働に関しては、FLAの勧告を受入れ、サプライヤー規約の改善などを通じて児童労働の撲滅に取り組んでいる。
 タイで奴隷労働を強いられている漁業労働者は、主として、隣国のミャンマーやカンボジアから人身売買などの形で連れてこられ、満足な食事もなく長時間労働を強制され、監禁状態におかれる。船上では重い漁網に引きずられて、海中に投げ出される事故も多く、船で死亡すれば海中に投棄されるという。
 ネスレの商品には、シュリンプなどのエビ類が多いが、ウォルマートや、クローガーなどの大手企業もこうした魚介類を仕入れており、レストランで出されるイカ料理のカラマリ、ロール用のカニカマ、冷凍スナッパー(フエダイ)なども、同様の奴隷労働によるものが多く、ほぼ全ての米国、欧州の食品企業が関与している。
 グローバル企業は訴訟を恐れ、こうしたケースで実態を認めることは少ないが、ネスレ社は、奴隷労働防止への対策として、すべての仕入先業者や船舶関係者への人権教育の徹底、状況が改善された時の褒賞、外部有識者による監査制度、企業内における担当経営者の設定などを約束した。
 こうしたネスレ社の対応を評価する声がある一方、米国内で昨年8月にキャットフード購入者から、奴隷労働の商品を買わされたとして集団訴訟が起きているほか、タイからの魚介類仕入れ業者に対して数件の集団訴訟が起されていることから、訴訟被害を最小限にするための対応にすぎないとの声もある。
 ネスレ社は、過去に水の供給を民営化するためのキャンペーンを展開し、水資源を国や地方自治から奪い取り、それを水不足で困っている地域に高く売って、大儲けしようと考えているとの批判を、本社のあるスイス人ジャーナリストによって告発されている。

働く米大学院生の労働組合加入に拍車

 ワーキングプアにあたる低賃金の非常勤教員が、大学教員全体の約半数を占めるといわれる米国の大学で、全国労働関係委員会(NLRB)が、私立大学で働く大学院生を単なる学生ではなく、大学の従業員と見なす方向性を示唆したことから、大学院生の労働組合への組織化に拍車がかかり始めた。
 米国では、経済的に恵まれない大学生が、奨学金と生活費のローンを抱え、まともな職に就けず、卒業後に生活が困難になるケースが多く発生している。大学院に進む学生の場合は、さらにローンの負担が増えるため非常勤教員として働くケースが多いものの、これまでは労働組合の組織化が困難であった。こうした背景もあり、労働条件を巡るトラブル・紛争を解決する手段を持つことができなかった。ある学生は「教員として働いている時間の方が長いし、生徒も私を教員と見ている。去年給与を削られたのが痛い」と語る。
 大学院生の労働組合加入問題については、ニューヨーク大学が私立で唯一の大学として全米自動車労働組合(UAW)が組織化しているが、私立大学はNLRBが所管している。他方、公立大学に関しては州の労働法に準拠するが、これもUAWがカリフォルニア大学、マサチューセッツ大学、コネチカット大学などで数万人を組織している。
 その中でUAWは、2004年に私立のブラウン大学大学院生の組織化も試みたが、NLRBに否決された。それが10月、UAWからの再度の申請を受けて、NLRBが3対1の評決で審査再開を決定したことから、事態が変わりはじめた。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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