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No.368(2016/1/5)
ASEAN経済共同体(AEC)の発足 
―人口6億人を超える規模の一大経済圏が誕生―

 12月31日に、ASEAN経済共同体(AEC)が発足した。
 AECは、2003年のASEAN首脳会議で創設が決まったもので、ASEANがより一体となることで、国際社会の中で競争力を高めたいという考えから生まれたが、今日までの論議は、難航を重ねた。今回の発足によって、ASEAN加盟国10カ国による、人口6億人を超える規模の一大経済圏が誕生することになる。
 AECは、現時点では、欧州共同体(EU)のように通貨の統合を含む、高度な経済統合を目指すものではない。AECに続いて、ASEAN統合が将来的には、文化・社会や政治の領域でも統合することを検討するとされている。これまで、政治的にも経済的にも分断されてきた、この地域をゆるやかな単一市場に統合し、まず関税について例外項目を除き、加盟10カ国間で基本的に撤廃することが当面の主要な目標である。このことを中心に、サービス、資本、投資についての自由化をすすめるが、課題も山積している。
 1人当たりGDPが約5万ドル(約607万円)を超えるシンガポールもあれば、1268ドル(約15万3910円)にすぎないミャンマーなど、加盟国間での経済格差は大きい。AECの発足により、加盟国間の関税はゼロとなり、非関税障壁も解消することが目標とされている。これは発展途上の国々にとってみれば、諸刃の剣である。自国の産業を保護するための政策を事実上、放棄することを意味するからである。
 一方、合法、非合法の移民労働者がさらに増加し、先進地域では、各国労働者の雇用不安や労働条件の引き下げ、後進地域では、労働者不足や労働者保護の弱体化に結びつくとの懸念もある。経済統合によって、最適の国や地域に生産拠点を集約することが起こりうるが、その際に生じる雇用問題への対策としても、政策や制度の整備を行うことが不可欠となっている。各国の労使のみならず、ASEAN労働組合協議会(ATUC)や、ASEAN使用者連盟(ACE)など、この地域の労使の対応の強化が求められる。また、各国の労働行政や労働法制のあり方が、それぞれの政労使の論議の焦点となっていくであろう。

*1ドル=121.54円(2015年12月21日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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