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No.365(2015/12/17)
カナダ自由党政権誕生の陰に教職員組合との黒い陰

 10月19日の連邦選挙の結果、カナダの政権は、進歩保守党(ハーパー政権)から自由党へ移行し、首相にはジャスティン・トルドー党首が就任した。新首相は「現代カナダの父」とされ、今も人気が高い元首相の故ピエール・トルドー氏の子息である。政権交代に中心的な役割を果たしたのが、オンタリオ州における自由党の大躍進であるが、その陰にオンタリオ州の自由党政府と教職員組合との黒い結び付きのあることが、グローブ・アンド・メール新聞により明らかにされた。
 それによると、教職員組合は2008年以降、自由党州政府からの秘密の補助金を含めて、3回の選挙で650万カナダドル(約5億7356万円)を進歩保守党攻撃の宣伝広告に使用し、80万カナダドル(約7059万2000円)を自由党に政治献金したとされる。秘密の州政府補助金は、労働協約交渉にかかった経費を負担する名目で374万カナダドル(約3億3301万7600円)が支払われたと言われている。
 教職員組合には、オンタリオ州イングリッシュ・カソリック教員協会(OECTA)とオンタリオ州中学校教員連合会(OSSTF)の2組合の組合員10万人を中心に、その関係団体や、大組織のカナダ公務員労働組合(CUPE)などが含まれる。なかでもCUPEは、野党新民主党(NDP)の主要な支持組織のメンバーであり、複雑な様相を見せている。
 通常、教員組合との協約交渉には学校区があたるが、オンタリオ州の場合は州政府が直接関与することになり、その時から交渉費用の補助が行われるようになったという。
 この点について、トロントのトリー市長(進歩保守党)は「労使交渉の費用を、政府が負担するなど聞いたことがない。交渉は自分の費用で行うべきことで、正しいこととは思えない」と述べている。
 自由党州政府は、補助金と政党支援との関係はないというが、同新聞が明らかにするまでは秘密にされてきた。その後、自由党州政府は領収書の必要はないとしてきた態度を突如翻して、正式に領収書の提出を求めると言明したが、疑惑は晴らされておらず、今後会計検査院による監査が実施される予定だ。

*1カナダドル=88.24円(2015年12月15日現在)

過去の関連記事.
メルマガNo.270(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2014/270.html

米タクシー運転手を労働者として認定へ

 米国のタクシー運転手は、長年独立業者として扱われ、労働組合加入ができないでいた。これに対しアリゾナ州の事務・専門職従業員国際労働組合(OPEIU)が、イエローキャブ会社の運転手200人を共通利害団体として協会に組織して、権利を主張してきたが、会社との団体協約は締結できていない。このようなケースは全米に数多く存在する。
 そうした間に、全国労働関係委員会(NLRB)が、宅配大手FEDEXの運転手について「真の独立業者とは、事業の損益に責任を持つもの」と規定し、今年「親会社が下請け企業労働者の賃金労働条件をコントロールできる場合、その労働者は親会社と交渉できる」としてから、各地のNLRBの判決が変化してきている。NLRBのこうした決定は、2014年に発表した、マクドナルド社がフランチャイズ加盟店の共同雇用主とみなす、との見解にも表れている。
 OPEIUのケースも、実態は会社ロゴの車を会社からリースして、会社から職業訓練を受け、就業も会社規則に従い、会社の配送指示により乗客先に赴くものであった。
 こうしてイエローキャブの運転手たちは、アリゾナ州NLRBの承認を獲得して労働組合投票を待つばかりとなったが、同様のことが各地で起こりつつある。
 しかし、OPEIUのシュワーツワルド法律顧問は「ニューヨークやワシントンDCのタクシー運転手は少し違う。乗客を拒否することもあり、会社のコントロールが効かず、労働組合が認められるかどうかわからない。しかし今回のNLRBの決定で、労働組合に有利な状況ができつつあるのは事実だ」と語る。
 そこで想起されるのが、スマートフォンのアプリケーションを使ってタクシー配車サービスを行っている、ウーバー配送会社の労働権問題である。会社指示による乗客訪問という側面はあるが、運転手には、イエローキャブより自由な裁量権がある。ウーバーをめぐる問題については、ウーバー発祥の地であるカリフォルニア州をはじめとして、法廷で争われている。主たる争点は、ウーバーによって乗客を紹介されるタクシー運転手が、ウーバーと雇用関係があるかどうか、それとも請負であるのかということである。
 その他注目されるのは、シアトル地域のチームスター労働組合が、NLRBを通り越して、タクシー運転手の交渉権を、シアトル市規約により勝ち取ろうとしているケースがある。その行方は定かではないが、環境が変化していることには間違いがない。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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