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No.363(2015/12/9)
ベトナム労使紛争の現状

 2015年10月15日に行われた再招聘チームの労働事情を聴く会から、ベトナム労働総同盟(VGCL)の労使紛争の現状を紹介する。

【ベトナムにおける労使紛争の実態と解決手段】
 ベトナムにおけるストライキは、2009年6月~2014年11月までの間に、全国で3104件発生した。この争議には、自発的ストライキ(集団的に作業を停止=法的な手続無しに行う争議が多い)と、労働組合指導のもとで行われたストライキ両方が含まれている。企業の種類別に見ると、外資系企業が占める争議の割合は全体の74.9%を占めている。次いでベトナム資本の民間企業が24.8%となっている。また、国営企業における争議はわずか8件で、全体の0.26%にすぎない。このように、ストライキの発生が最も多いのは外資系企業である。
 外資系企業の争議件数を国別の割合でみると、最も多発している国は、台湾の企業で全体の24.5%に達する。次いで、韓国企業で24.4%となっている。日本企業であまり争議は起きていないため6.6%に過ぎない。このほかの国の企業は、合わせて19.5%となっている。
 日本企業の特徴は、先端的な技術を導入しているため、職場はかなりいい環境だといえる。いい環境の中で、機械の安全を確保するのと同時に、人間の安全も確保することができている。このようなハイテク技術を導入した職場は、一部には有害物質も扱う職場もあるが、繊維や皮革産業の工場と比べると環境もよく安全性も高い。これはベトナムに進出している日系企業の大きな特徴だといえる。また、日系企業は、高い技術を導入しているため、採用している労働者もほとんど専門学校の卒業生であり、専門知識を持ち、スキルも高くマナーも良い労働者が多いのも特徴である。
 産業別に争議の発生件数をみると、繊維産業の企業が最も多く全体の36.5%を占めている。次いで、皮革産業が18%を占めている。このほか、木材産業では10.6%、電子産業は6.99%となっている。このほかの産業における争議は全体の28%となっている。
 ベトナムでは、ストライキの目的について2つの形態に分けている。一つは、法律に定められた権利に関する紛争であり、もう一つは、労働者が受けるべき利益に関する紛争である。法律に定められた権利を侵害されたために起きたストライキは959件で、全体の30.4%を占めている。労働者の利益に関する紛争は1272件で、40.77%となっている。さらに、労働法の権利と労働者の利益が混在した紛争は全体の26.67%を占め、このほかの原因で起きる紛争は1.83%占となっている。
 争議日数や参加者の規模からみると、ストライキが1日~2日間で終わり、参加者数も600人~700人程度の規模が一般的である。例外的なものとしては、ホーチミン市の履物工場では35日間のストライキとなった。また、ドンナイ省の台湾系の企業では、ストライキに参加した労働者の数は1万8000人に及んだ。
 ベトナムにおけるストライキの特徴は、時期的には1月~2月の間、または、ベトナムの旧正月の前後に起きる傾向がある。あるいは、政府が最低賃金の引き上げを決定した時点で行われているということもある。
 労働争議が起きる原因については次の、6つがあげられる。
 1番目は、賃金への不満(低賃金、賃金の不払い、賃金体系の不備)、2番目は社会保障が不十分であること。3番目の原因は、労働時間、残業時間(法定を超える残業時間)に関する争議。4番目は、会社の規則が労働者にとっては不適切な内容であったり、労働協約が守られていなかったり(あるいは締結しない)することにある。5番目の原因は、会社側の不当解雇、あるいは仕事を休ませたりすることで起きている。6番目は、仕事場の環境、仕事に関係する条件などが法定要件を満たしていないことである。
 ベトナムにおける労働争議解決の手段は、2つに分かれる。1つは個別労働紛争における解決、2つ目は集団労働紛争における解決である。さらに集団的労働紛争の解決については、労働者の権利に関する争議と、労働者の利益に関する争議に分かれている。
 個人と企業の間で起きる個別労働争議の解決は、労働調停員を通じて解決を求めてゆく。労働調停員が解決できない場合は、裁判によって解決を図るよう申請を行う。
 集団労働争議の解決は、まず労働調停員を通じて解決を求めてゆく。労働調停員が解決できない場合は、また2つの方法で解決を図ってゆく。1つ目は、労働者の権利に関する争議の場合は、まず、郡レベルでの人民委員会委員長に申請して解決を求める。郡レベルの人民委員会委員長で解決できない場合は、県レベルの裁判によって、解決を図る。
 労働者の利益に関する場合は、基本的には労働仲裁評議会を通じて解決してゆく。労働仲裁評議会が解決できない場合は、裁判によって解決を図ってゆく。

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ベトナムにおけるストライキの実施状況

合計 企業の種類
国営企業 外資系企業 民間企業
合計 韓国 台湾 日本 その他
件数 % 件数 % 件数 % 件数 % 件数 % 件数 % 件数 %
2009 342 4 1.17 263 76.9 93 27.2 81 23.7 35 10.2 54 15.8 75 21.9
2010 507 1 0.20 412 81.3 125 24.7 134 26.4 32 6.3 121 23.9 94 18.5
2011 993 3 0.30 734 73.9 201 20.2 252 25.4 72 7.3 209 21.0 256 25.8
2012 601   0.00 469 78.0 149 24.8 182 30.3 33 5.5 105 17.5 132 22.0
2013 384   0.00 261 68.0 106 27.6 71 18.5 22 5.7 62 16.1 123 32.0
2014 293   0.00 198 67.6 86 29.4 44 15.0 12 4.1 56 19.1 95 32.4
合計 3,120 8 0.26 2,337 74.9 760 24.4 764 24.5 206 6.6 607 19.5 775 24.8
資料:ベトナム労働総同盟
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