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No.356(2015/11/12)
TPP交渉で危機に立たされるカナダ自動車部品労働者

 環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉については、10月5日に参加12カ国の大筋合意がされたが、カナダ労働組合は猛反発している。カナダのハーパー首相は「自動車業界からの反対はあるが、TPP交渉から離脱するわけにゆかない」と言明した。
 TPP協議について、すでに日米間に自動車の内製化比率の合意ができており、自動車45%、自動車部品30%に変更される。ところが北米自由貿易協定(NAFTA)では米国、カナダ、メキシコで流通する自動車製品の内製化率は60%であり、このままでは、低関税・低賃金の製品により、カナダの8万人の自動車部品労働者の雇用が危険にさらされる。
 この点について、カナダ自動車部品工業会のボルペ会長は「ハーパー首相は2点を強調しているが我々も賛成だ。1つはTPPから離脱するわけにゆかないこと、2つは自動車部品産業の競争力が奪われてはならないことだ。このバランスが取れると思っている」と述べた。これに対し、最大の民間労働組合UNIFORのジェリー・ディアス会長は「首相はなぜTPP離脱を否定したのか。首相は世界で最低の交渉人だ。日本に対してどんな状況でも交渉を受け入れると表明したのだ」と批判している。
 カナダで9月19日に行われた総選挙で、中道左派の野党・自由党が勝利を収め、トルドー党首が次の首相に就任する予定となった。これを受けて、アメリカのオバマ大統領は、トルドー党首と電話で会談し、選挙の勝利について祝意を伝えるとともに、テロ対策や地球温暖化対策などを巡り、協力関係を強化することを確認した。

UAWとフィアット・クライスラーとの協約改定交渉

 全米自動車労組(UAW)の協約改訂交渉で、フィアット・クライスラー社(FCA)との間で、時間給およびプロフィット・シェアリング(企業業績にもとづく一時金)の増額、それに業績手当、生産面では乗用車がメキシコに移管、その代わりにトラックとSUVが導入されるという内容の暫定合意が成立していた。
 暫定合意された新協約は、全米37カ所の工場で働く3万9000人の組合員による批准投票を受けた結果、10月1日、UAWは労働協約案を否決したと発表した。
 クライスラーとの協約批准に失敗したUAWは、ストライキの実施をちらつかせながら再交渉し、2007年に導入された新規に雇用された労働者(下層階級)を対象とした時間給15.78ドル(約1917円)については、勤続8年でトップレベルに引き上げることで合意した。
 現在のトップ・ティア(ベテラントップ労働者の賃金)の28.00ドル(約3401円)は、4年間で29.76ドル(約3615円)になり、セカンド・ティア(中間層労働者)の中で、4年以上の経験者は4年間で29.00ドル(約3522円)へ、4年未満の者は22.50ドル(約2733円)から28.00ドル(約3401円)のゾーンとなる。サイニング・ボーナス(労働契約締結時に支払われる支度金)はトップ層で4000ドル(約48万5840円)、セカンド層で3000ドル(約36万4380円)となる。
 批准投票は10月12日から始まり、最終期限は設けられていない。
 今回の合意は、新規に雇用された労働者の賃金を8年間でベテラン並に引き上げるものである。この合意は、第2次大戦後にデトロイトの中間層が果たした役割である経済の発展と社会の安定を、中間所得層モデルの復活によって再現できると評価する有識者もいる。

*1ドル=121.46円(2015年11月5日現在)

農業労働組合の20年越しの労使紛争が再び長引く懸念

 労働組合を敵視する経営者と労働組合が激しく対立しているカリフォルニア州のジェラワン・ファーミングにおいて、全米農業労働組合(UFW)が、季節労働者数千人を組織化しようと2年前に労働組合結成投票を行ったが、果樹園側の妨害が指摘され、投票箱は開票されずに来ている。
 労働組合は司法に訴え、9月17日、裁判所は会社の不当労働行為を認める判決を出した。裁判に向け、UFWが105日をかけて103人の証言を集め、判決で不当労働行為が明らかにされた。会社は、労働者のロペス氏に2万ドル(約241万4800円)を支払い、休暇を与えながら、労働組合の結成に反対する1000人の署名を集めさせ、同時に一般昇給を実施して労働者の関心を買ったことが明らかにされた。
 このケースは、農業分野でいかに組織化が難しいかを物語る一例だが、1992年に伝説の労働運動指導者、シーザー・チャベツUFW会長(メキシコを中心とするラテンアメリカから来て劣悪な労働条件で働く農場労働者の組合を結成)が、組織化に動きながら労働協約交渉に至らなかった事例が有名である。農業労働組合は「当時の会社の力が強大すぎた。今や会社は判決に従う時だ」と言明するが、ジェラワン側は「労働組合は労働者を20年間見捨ててきた。労働者の選ぶ権利を尊重する会社の姿勢に変わりはない」と言う。
 また会社側弁護士は「申し立てと証拠が食い違っている。労働者2500人は自主的に労働組合を希望しないと署名した。州の農業労働関係委員会に上訴する。UFWは投票箱を開けたくない意向だ。事実を知りたくないのだ」と述べており、今後も両者の対立は継続するもようだ。

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