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No.354(2015/11/4)
ベトナムの労働事情

 2015年9月4日に行われたラオス・ベトナムチームの労働事情を聴く会から、ベトナム労働総同盟(VGCL)からの報告を紹介する。

【今年の争議件数は増加傾向、2016年の最低賃金は12.8%引き上げ】
 ベトナム経済は、2015年上半期のGDPは6.28%の増加が見込まれており、ここ数年の中では比較的高い成長となっている。同時期の消費者物価指数も、0.35%の上昇見込みとなっており安定的に推移している。
 ベトナムの人口は、2014年1月1日現在で9100万人となっており、農村に人口が偏在し、都市部人口の約2倍となっている。このため、地方から都市部への労働移動も頻繁に行われている。ベトナムの労働人口は、15歳以上を労働者と見なしているが、その数は4780万人で、男女の割合は男性が53.6%、女性が46.4%となっている。労働人口のうち、約半分にあたる45.1%が農林水産業で占められている。その次がサービス業で33.1%、工業・建設業は21.8%となっている。国営セクター、非国営セクター別で見ると、国営セクターは10.4%、非国営セクターが86.3%と大部分を占め、FDI(外国資本系)の占める割合は3.3%となっている。
 失業率は、全国平均で2.44%となっており、都市部の方が農村に比べ失業率が高い。また、半失業の問題がある。これは仕事不足率と言っているが、仕事が定期的に無い人たちのことで、その割合2.52%となっている。
 次に、賃金の動向であるが、本年度の賃金は2014年度に比べて14.75%上昇した。しかし、VGCLの調査結果から見れば、労働者の賃金は押しなべて低い水準にある。毎月の賃金が300万ドン(約1万6200円)~400万ドン(約2万1600円)の労働者の割合は19.9%、400万ドン(約2万1600円)~500万ドン(約2万7000円)の労働者は32.4%、500万ドン(約2万7000円)以上の労働者は26.7%となっている。
 また、最低賃金は最低限の生活に必要な水準の75%しか満たしていない。最低賃金の引き上げについては非常に白熱した議論を続けてきており、賃金評議会の中で、2016年度の最低賃金の引き上げ率は12.8%という結果を勝ち取ることができた。
 VGCLの労使関係に対する考え方は、連合とほぼ同じである。可能な限り安定的な労使関係を構築することによって企業の発展に貢献し、その結果が労働者の雇用機会あるいは生活改善の機会につながるように考えている。
 VGCLとしては、ストライキというものは回避すべきだと考えており、最悪の状態になる前に早期解決を図ることを目指している。しかし、少し気がかりなデータが出ている。2015年6月現在で、民間企業の労働争議がすでに74件起きており、これは2014年1年間の争議件数96件と比べても早いペースで争議が起きていることを示しており、心配している。
 ベトナムにおけるストライキの多くは、韓国、台湾系の企業で発生している。日本企業もないわけではないが、非常にわずかな件数となっている。
 ストライキが起きる原因は、いくつかあるが、まずは経営者側の不当行為、これは賃金を支払わない、あるいは劣悪な労働条件におくというようなことがあげられる。このほか、労働組合幹部の経験の浅さ、あるいは能力の低さに起因するもの、あるいはベトナム人労働者の法律知識等の不足から起きることもある。そして最後に、ベトナムの文化と外国企業の文化には明らかな相違があるなかで、なかなかその溝が埋められないことに加え、反労働組合的な経営者がいることにも原因があると考えている。

*1ドン=0.0054円(2015年10月29日現在)

ラオスの労働事情

 2015年9月4日に行われたラオス・ベトナムチームの労働事情を聴く会から、ラオス労働組合連盟(LFTU)からの報告を紹介する。

【投資の拡大で好調な経済続くが、インフォーマル労働者は70%】
 ラオスは、人口が680万9054人で農業が中心の国である。経済は7%~8%の成長が続き、1人当たりGDPが2014年の1628ドル(約19万6548円)から、2015年には1725ドル(約20万8259円)へ増える見込みである。ラオス経済が好調な理由は、海外からの投資(資源開発)が増え、雇用の拡大と労働者の収入も安定的に増えていることである。さらに、海外からの旅行者も増えたことによって観光業が発展し、雇用の増加にも寄与している。
 雇用が拡大しつつある中で、労働者の70%はインフォーマルセクターで働いている。こうした労働者には、社会保障が受けられない者が多い。また、教育レベルが低いのが特徴である。我々、労働組合としてもインフォーマル労働者対策を考えており、政府、あるいは外国、国際機関に対しても活動の支援を求めている。対策としては、例えば村の中で1村1品的な生産ができるように協同組合的なものをつくり、そこで生産ができるよう考えている。こうした活動のための資金は、政府、あるいは海外からの支援を仰ぐとともに、2015年からはJILAFからの支援も受けている。
 ラオス労働組合連盟(LFTU)は、三者構成機関の主体となり、最低賃金の改定を提言してきた。この結果、最低賃金は2015年4月から43.8%引き上げられ、1カ月90万キープ(約1万2600円)とすることに成功した。ラオスの最低賃金は全国一律に適用され、改定は3年から4年に一度行われ、今回の改定は3年3カ月ぶりとなる。
 ラオスの労働組合の活動には、3つの役割がある。一つ目は、広報・教育業務。この活動では、法の遵守、規律ある労働をするための思想教育などを行っている。また、各地に相談室を設け法律相談も行っている。
 二つ目の活動は、組織拡大である。組合員数は、2011年に15万人を超え、その後も着実に増加し、現在は21万419人となり、このうち女性が9万4286人。労働人口は73万5000人となるため、組織率は28%となる。郡レベルの労働組合連盟の数は148、草の根レベル、事業所、事務所レベルの労働組合は3797。職場レベル、ユニットレベルの労働組合が6789となっている。我々は、この5年間に組合員を30%増やすことに成功した。
 次に三番目の活動は、労働法に関することである。ラオス労働組合連盟は、三つの関係機関、三者機関と調整を行ったうえで、労働関係の改善、労働協約の締結、個別の労働契約について全国の工場等でモニタリングを実施し、法令が守られているかどうか、調査を行っている。また、150件の労働紛争の調停も行い、紛争に関係した労働者1613人に対して賃金の支払いを勧告した。その額は総計で約104億キープ(約1億4560万円)になった。さらに、労働安全に関する出張広報を357回実施し、4万2149人の労働者が参加した。
 工場の労働者7万人を登録した。登録は組織化とは別であり、その目的は、労働者の保護と管理のためである。この登録の対象はラオス人に限られている。また、サワンナケート県とチャンパーサック県には、移動労働者の受け入れセンターを設置した。ラオスでは、労働移動が非常に多く、労働者を把握し、管理と保護のために登録を行っている。サワンナケートのセンターでは、労働者が仕事につく前の相談業務も実施しており、国内で働くか、国外(タイ)で働くかを問わず相談を受け付けている。

*1ドル=120.74円(2015年10月29日現在)
*1キープ=1.014円(2015年10月29日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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