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No.351(2015/10/22)
インド、労働法改正をめぐりゼネスト

 9月2日、インドの各地で労働組合による大規模なストライキが行われ、主要な交通機関の多くがストップし、工場や金融機関などの操業にも影響がみられた。2014年4月の総選挙で登場したモディ政権の労働法制改正案に対する反対をアピールするもので、国内の多くの労働組合が参加、主催者側によれば「1億5000万人の労働者が参加したインド史上最大のストライキ」である。首都ニューデリーをはじめ、ムンバイ、バンガロールなどの主要都市では、終日、大規模な集会やデモが続いた。
 モディ政権は、発足の当初から、労働法制の改革を政策の一つに掲げた。経営者団体や外資系企業の団体は、現在のインドの労働法制が、あまりにも硬直的であるとして、長年にわたりその抜本的な改正を求めていた。新政権が30年ぶりに下院で単独過半数を持つこと、モディ氏が前職のグジャラート州首相時代に、先行するような労働の規制緩和を行っていたことなどから使用者側からの期待が高まっていた。
 今回の改正法案は、グローバル化のなかで企業が雇用調整を容易にすることに主眼がある。現行の基本的な労働法制の一つ、「労働争議法」(1947年)は、100人以上の事業所の解雇は行政の許可を要件としている。インド版非正規労働者法といわれる「請負労働法」(1970年)は、請負労働を一時的な業務にのみ認め、請負業を許可制としている。政府の法案は、それらをいずれも緩和しようとするもので、同時に、最低賃金の引き上げの方向を示していた。モディ政権は、与党となったインド人民党(BJP)の支持組織であるインド最大の労働団体、「インド労働者連盟」(BMS)などにも働きかけ、ゼネストを回避しようとした。
 インドでは、中央労働団体の支持政党が与野党に分かれているが、労働者に関する政策については10の団体が連携するかたちがある。今回も政府の労働法改正案への強い反対を表明、その撤回がなければ、9月に大規模なストライキなどの行動に入ることを通告していた。ただ、8月下旬には、政府と労働組合の交渉が繰り返され、与党系のBMSは全国的なゼネストの3日前に、ストライキには参加しない意向を表明した。BMSの幹部は「政権発足後1年間はねばり強く話し合いたい」としている。
 また、インドの新政権は、労働法制の改革の他にも、「モディノミクス」の二本柱として、間接税を一本化する「物品サービス税(GST)」の導入、政府や企業の土地収用を容易にするための「土地収用法」の改正を打ち出している。これらの検討はいずれも難航しており、反対する州が少なからずあるほか、与党の一部も難色を示している。インドでの久しぶりの本格的な政権交代として世界の注目を集めてスタートしたモディ政権は、政策の実現に向けて、大きな曲がり角に差し掛かっているといえる。
 なお、インドからは、その人口の将来についても、世界的に注目されるニュースが発信されている。7月29日に発表された国連の最新の「世界人口予測」によれば、インドの人口は、2022年には14億人台となり、中国を抜いて世界最大となる見通しである。これは、5年前の政府見通しを4年前倒ししたことになる。その場合、労働力人口は8億人を上回ることが予想されており、インドの労働情勢は今後、国際的な関心をさらに高めることになるとみられる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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