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No.350(2015/10/20)
モルドバの労働事情

 7月10日に行われたユーラシアチームの労働事情を聴く会から、モルドバ労働組合連盟(CNSM)から報告のあった労働事情の概要を紹介する。

【最低賃金、年金、労働法、非正規労働者など課題山積】
 まず初めに、最低賃金に注目して欲しい。2014年の最低賃金は月額117ドル(約1万3945円)で、ほかの国々に比べるとモルドバの最低賃金は低く、この金額から見ても豊かな国ではないことが分かると思う。現在、ナショナルセンターでは、政府及び国会に対して次のような要求を出している。まず、最低賃金額を平均賃金の50%から60%に設定し、その後、消費者物価の変動に合わせてスライドさせていくというものである。年金についても同様に、年金額の算出のもととなる所得を物価スライドさせるべきである。このように賃金や年金に関しては、尊厳のある生活を可能にするような最低限の保障をしていくべきである。
 労使紛争の件数の統計調査はないが、実際には争議は行われている。我々が抱えている課題の一つに、労使関係調整法の改悪阻止がある。また、国会は改正労働法を制定しようとしているが、これは改悪である。現行法は、使用者は労働組合の同意なく組合員を解雇できないとなっているが、この条文を改悪し、労働組合の同意がなくても使用者はしかるべき理由があれば、組合員でも解雇できるようにするものである。これを阻止しなければならない。労使紛争の解決をはかるための労働裁判所の創設を行うことも必要である。
 次に、効果的な社会的パートナーシップというものを創設したいと考えている。国レベルでは政労使の三者委員会があるが、産別レベルではないため、産別レベルの三者委員会を設置したいと考えている。
 モルドバにおける、非正規労働者を含む不安定雇用形態の労働者の状況を説明できる情報はないが、非正規労働は問題となっている。モルドバではインフォーマル経済に関する正式な調査はないが、ある調査によると、国内の労働者総数の57%が非正規労働者で、こうした非正規労働者の労働価値は総額150億レイ(約908億円)くらいになると見られる。産業部門によって実態は異なるが、労働者の40%程度が労働契約を結ばないで労働をしていると見られている。
 モルドバでは、移民として国を離れていく人、国外流出は非常に多い。その理由は、家族を養うためにいい職を求め、いい給料を求めて国外へ働きに行き、行先は、主にロシア、ヨーロッパ諸国、中でもスペイン、フランスが多い。
 モルドバでは「封筒入り賃金」払いという問題が横行している。これは、課税対象にならないように、賃金を封筒に入れて労働者に渡すことを指している。こうした慣行は、特に農業、商業、建設、輸送部門で横行している。性別では、女性よりも男性のほうが「封筒入り賃金」を受け取っている労働者は多い傾向にある。「封筒入り賃金」は不法就労と同じであり、有効な対策を打っていくことが必要である。
 最後に組織化についても大きな課題である。過去5年間に組合員数が9万人減少した。現在の組合員数を維持し、さらに増やしていくことが必要であると考えている。
 これまで取り上げた課題を解決するために、我々は、組合員に対して権利を保護するための相談、法律的な支援を行っていく。その際には、社会的パートナーシップのさまざまなメカニズムを利用していくとともに、経営者側との交渉を行い、労働協約にまとめていくことである。
 2014年にモルドバは、EUとの間で連合協定に調印した。その際、EU側から様々な改革の指示が出ている。その改革を実行するためにモルドバは行動計画を立案・承認した。労働組合としては、労働者の様々な権利が侵害されないように、国内法においてEU側からの指示がきちんと実行されているかどうか、注意深くモニタリングしていく必要があると考えている。

*1ドル=120.30円(2015年10月16日現在)
*1レイ=6.05円(2015年10月16日現在)

ウズベキスタンの労働事情

 7月10日に行われたユーラシアチームの労働事情を聴く会から、ウズベキスタン労働組合連合(TUFU)から報告のあった労働事情の概要を紹介する。

【堅調な経済成長で雇用も増加、労働者の権利保護に課題】
 人口は3100万人のウズベキスタンの主要産業は綿花栽培であり、このほか、天然資源にも恵まれ、天然ガス、ウラン、金などが豊富に産出し、建設需要の増加、海外からの投資の増加などで堅調な経済成長が続いている。実質GDPは、2013年に8%成長、14年に8.1%、15年は7.8%の成長が予測されている。
 今、世界情勢が大きく変わりつつある。非常に深刻な経済危機を迎えている国が幾つもあるが、ウズベキスタンは大統領が課題を見極め、様々な対策をとってきた結果、深刻な経済危機を免れるばかりではなく、堅調な成長を維持してきたと考えている。
 最低賃金は、2013年は1月額約23万スム(約1万120円)であったが、2015年は約35万スム(約1万5400円)となった。
 毎年約100万の新規雇用が中小ビジネスを中心に創出されており、失業率は4.5%以下に抑えられている。
 次に、ウズベキスタンの労働組合は、ウズベキスタン労働組合連合(TUFU)が唯一のナショナルセンターである。加盟組織は14の産別組織と14の地域組織がある。組合員数は600万人で、組織率は60%となる。
 労働組合が現在直面している課題の第一は、労働者の社会・経済及び労働者の権利保護である。二つ目は、組合員の法知識を向上させること。三つ目は、組合員とその家族の健康増進。四つ目は、労働者の労働安全衛生を確保することである。
 こうした課題を解決するため、まず国レベルの基本合意書をナショナルセンター、使用者団体、閣僚会議と締結し、その基本合意書に基づいて、産別は七つの関連省庁と産別合意書を締結する。そして、約1万8000の単組は、自らが所属する企業と労働協約を締結していくことである。
 最後に、ウズベキスタンは、旧ソ連の国々の中では綿花を栽培する国、綿花の国というイメージがあり、同時に綿花栽培では児童労働、児童を搾取しているという問題があった。2011年からは、この問題に対して労働組合として介入し、綿花の収穫に児童労働を使うということはなくなった。このことは、法律でも禁じられた。2013年に、ILOの調査委員会が現地視察のためウズベキスタンを訪れた。加えて、2014年にも追加的なモニタリングがILOによって行われ、その2回のモニタリングの結果、ILOは、ウズベキスタンで綿花収穫における児童労働が行われていないことを認め、第101回会議でウズベキスタンを児童労働している国のリストから除外した。

*1スム=0.044円(2015年10月16日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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