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No.349(2015/10/16)
ウクライナの労働事情

 7月10日に行われたユーラシアチームの労働事情を聴く会から、ウクライナ自由労働組合総連盟(KVPU)から報告された労働事情の概要を紹介する。

【混沌とするウクライナ情勢の中で崩壊寸前の経済・社会】
 ウクライナの面積は、60万3000キロ平方メートル、人口は約4200万人で、ヨーロッパの穀倉地帯として知られている。天然資源に恵まれ、鉄鉱石や石炭など資源を活かした鉄鋼業を中心とした重化学工業が発達している。2014年3月、住民投票によってロシアに編入・併合されたクリミアはウクライナのものであった。
 我々の労働団体は、ウクライナ自由労働組合総連盟(KVPU)といい、組合員数は27万人となっている。そのほかの労働団体にウクライナ労働組合連盟があり、こちらは800万人の組合員で、非常に大きな団体である。そのほか小さい労働組合の団体があり、15万人ほどの組合員がいる。KVPUの設立は1997年で、任意団体として設立・結成され、国内で活動している労働組合をまとめている。活動目的は、加盟組合の労働基本権、社会・経済的な権利と利益を保護していくことにある。我々は基本原理を、「人々の利益が最優先」としている。
 現在、国は大変な状況に置かれている中で、我々が最優先とすべき課題は次の通りである。まず、遅配のない賃金の支払いであり、タイムリーにきちんと賃金を支払うことを求めている。また、雇用の確保を求めた闘いと、社会保障の向上も求めている。そして、インフレ等に合わせて、賃金をきちんと調整することが必要である。また、定年後も働いている人たちに対しては、年金を満額支給するという制度を復活させ、年金に対する課税にも反対である。
 新しい労働法案の採択にも反対運動を展開している。新労働法案の採択に反対する運動として、我々は、議会の前に立ち、国民の生活を悪化させ、労働者の権利を侵害する法案に賛成しないように議員に訴えている。
 現在、ウクライナ国内では軍事行動がとられているということもあり、2014年の実質GDP成長率はマイナス7%に落ち込んだ。さらに、2015年末までの見通しも、マイナス19.3%が見込まれている。物価は高騰を続け、2015年は2倍となることが予測されている。
 こうした状況の中で、注目すべきは最低賃金で、2015年は改正されず前年と同額のまま据え置きとなった。ウクライナの平価価値(※)が下がっているため、最低賃金を米ドル換算すると月額101ドル(約1万2103円)から、2015年は55ドル(約6591円)へ下がってしまう。
 また、ウクライナでも封筒に入れた現金で賃金を受け取るという問題がある。ウクライナのインフォーマル経済は60%であり、そこで封筒に入れた賃金が支給されている。その割合が全体の40%になる。封筒に入れた賃金を受け取っている人たちに多いが、全労働者の中で、社会保障が受けられない人たちが14%いる。また、年金が申請できず、受給できない人たちも10人に1人いる。
 ドネツィク州とルハーンシク州には、炭鉱が非常に多い地域であり、ウクライナの一つの問題として、非合法の炭鉱で働く青年、女性の不法労働というものがある。そこで働く理由は、生活苦を少しでも楽にするため、家計の足しにするためである。ただし、女性は、坑道の中に入って1000メートルの地下で仕事はせず、地上での仕事が多い。炭鉱で非合法で掘るため、きちんとした設備を使わず、ほとんど手作業で採掘するという労働を強いられており、非常に危険であり、実際に犠牲者も出ている。
 現在、ウクライナでは軍事行動がとられていることから、ドネツィク州、ルハーンシク州、クリミア自治共和国からの移住者が増えている。そして、移住者の中で就職を希望する人は約11万~12万人いる。移住者の中で移民として登録をされたのは136万人となっている。その移民者には、一時手当金が支払われた。
 最後に日本政府の支援によって、ウクライナの移民を対象に実施されているプロジェクトがある。ウクライナ移住者の社会・経済問題に対して迅速な対応を行っているプロジェクトであり、この日本の支援に心からお礼を申し上げる。

(※)2015年2月現在、ウクライナの通貨は暴落し、長らく1ドル=8フリヴニャだった交換価値は1ドル=33フリヴニャまで下落した。
*1ドル=119.83円(2015年10月13日現在)
*1フリヴニャ=5.48円(2015年10月13日現在)

ジョージアの労働事情

 7月10日に行われたユーラシアチームの労働事情を聴く会から、ジョージア労働組合総連合(GTUC)からの報告(概略)を紹介する。

【最低賃金、労働者の権利、労使対話など問題山積】
 ジョージアの主要産業は、農業、食品加工業、鉱業となっており、経済は2014年が実質4.8%の成長、2015年は実質で5%の成長を見込んでいる。同様に物価上昇率は2014年に3.1%、2015年は3.5%の上昇が見込まれている。
 2006年に最低賃金法が制定されたが、その最低賃金の水準は月額20ラリ(約1005円)で、非常に少額である。国家公務員の最低賃金が135ラリ(約6785円)だ。もちろん20ラリ(約1005円)という低額では暮らしていけないので、実際には、法定の最低賃金よりも高い数字で働いている。
 1日の法定労働時間に関する条文はないが、普通の仕事では1週間40時間、特殊分野では48時間まで働かせることが可能となっている。時間外労働と休日労働の割増率に関する規定は無く。使用者と労働者の間で、事前に協議して決めることになっている。
 ジョージアには200万人の就労人口がいるが、このうち25万人が失業し、公式的な失業率は12.4%となっている。200万人の就業人口のうち、110万人が自営業者で、雇用労働者は69万2000人にとどまっている。自営業者の110万人のうち80%は自営農である。失業率について独立系のデータでは35%以上と指摘しているところもある。
 我々の労働組合が抱えている課題は、まずは労働法規の改善である。2013年に労働法に重要な修正が加えられたが、この改正は、我々は不十分なものと考えている。ストの手続が不適切な規定となっており、多くの部分でストが不当に制限されている。
 次に、我々の労働組合にとって非常に重要な問題が、労働時間と時間外労働に関する問題である。この件については、ジョージア労働組合総連合から憲法裁判所に提訴中であり、審理結果を待っているところである。
 2006年まではジョージアには労働監督局というのがあったが、2006年に廃止された。労働監督局を復活させることが喫緊の課題となっている。労働監督局を復活させるために、我々は複数の国際パートナー機関に働きかけて圧力をかけてもらった結果、漸く労働省の中に労働監督部という部署が最近できた。しかし、そこはまだ権限も限られており、効果的な仕事ができていない。
 もう一つ、社会対話の強化をしていかなければならないと考えている。社会対話は産業別レベル、地域レベル、色々あるが今後我々が強化していくべき制度である。中央に設置された三者委員会は政労使の代表で構成され、この委員会は首相の肝いりで2年前につくられた。政府の代表は首相となっているが、設立後の2年間で一度しかこの会議は開催されていない。
 我々にとって非常に大きな問題になっているのが、団結権と団体交渉権が制限されていることである。労働組合の活動家に対しては解雇を含めたさまざまな迫害が民間部門、国営企業を問わず行われている。我々はさまざまな国際機関の協力を得ながら、この問題と闘い解決を図っている。憲法裁判所、ILO、ヨーロッパ社会憲章委員会などさまざまな機関に訴えている。また、労働監督局の必要についても同様に訴えている。この闘いでは、ストや抗議行動に出ることもある。政府に対しては、EUとの連合条約調印の際に、ジョージアが国内で必要な改革を行うとの約束をしているので、その義務を履行するように要請しつつ、労働組合の正当な権利を守るため運動を進めていく。

*1ラリ=50.26円(2015年10月13日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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