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No.348(2015/10/14)
米労働組合の銀行が活躍

 労働組合が設立した銀行として、日本には労働金庫が全国で事業を60年以上にわたって展開しているが、アメリカでは労働組合が保有するアマルガメイテッド・バンク(合同銀行)がある。合同銀行の創立は92年前の1923年で、アメリカ合同繊維労働組合により設立され、その年金基金をベースに組合員に貯蓄やローン業務を提供してきた。
 2011年にはサブプライム問題で、1億5000万ドル(約180億2400万円)の赤字を出す経営危機に遭遇したが、商業分野やニッチの政治関係の取り扱いで業績を回復させ、2012年にはサービス労働組合(SEIU)のメストリッチ財務局長を銀行頭取に迎えて、業績を拡大させている。
 来年の大統領選を迎え、ヒラリー・クリントン民主党大統領候補の選挙資金を取り扱うことで大きな成長が期待されている。

 特に政治関係については、優れた知識と敏速な判断を駆使して、多くの民主党関係者の政治献金の集金や支払いを取り扱い、その24時間対応にはオバマ・キャンペーン・スタッフが当たり、TVや新聞広告にも時間ギリギリの予約や支払いで、資金を効率的に運用させている。また時としては未納の献金を担保にローンを引き受けることもある。
 その他、ウォルマートやギャップの不当労働行為問題の時には、保有する400億ドル(約4兆7884億円)の年金基金を背景に、労働組合や人権グループに融資して、訴訟を支援した。
 また、デリバティブ問題に絡む電力会社訴訟への融資、訴訟費用の株主への転嫁阻止を目指すデラウェア州議員への融資、さらには妊娠中絶や同性婚問題、そして環境問題を訴える上院立候補者の支持団体への融資などの事例があり、それぞれのケースで預金金利や手数料収入を得ている。
 こうした分野は大手銀行が扱わないニッチの分野で、合同銀行が得意とするところだが、特に2015年には、民主党上院選挙委員会など71の新規顧客を獲得する中で、クリントン選挙への参入が決まり、合同銀行の更なる躍進が予測されている。

*1ドル=120.16円(2015年10月9日現在)

過去の関連記事.
メルマガNo.194(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/194.html

米国最大小売企業アマゾン社、傷だらけの労働環境

 ウォルマートを抜いて米国最大の小売企業に成長したネット通販、アマゾン社の職場実態については、過去にもジャーナリストの潜入ルポで、非人道的ともいえる実態が報道されているが、ニューヨーク・タイムス(NYT)が、8月16日の新聞で少数の勝利者だけが生き残る過酷な労働環境について、特集記事を掲載した。
 新入社員は「前の職場での悪い習慣を忘れること」「壁に突き当たったらその壁を登るしかないこと」、そのためには同社の14の経営原則を実践して従来からの因習を覆し、それができた者は「私は特異だ(Peculiar)」の称号を得る。
 会議では他人と違う意見を述べて戦うこと、長時間かつ深夜に及ぶ労苦も厭わないで不当に高いと思われる目標にも挑戦すること、また他人の欠点や長所をその上司に告げ口することも奨励されている。その中で、ドローンによる商品配達、トイレットペーパーの巻き方を計算して在庫調整する仕組み、ニューヨークでも見つからなかった商品を注文から23分間で配達したシステムなどが開発された。
 こうした環境の中では、多くの者が短期間に脱落するが、勝ち残った者は2億5000万人の顧客に自分の革新的アイデアを提供しつつ急騰する株式からの利益を積み重ねる。しかし敗者は退職や解雇を余儀なくされ、病気の者は療養の時間もなく低く評価されて排除される。退職者の中に「限界を超えた新しい自分を発見した」というものが少なくない。
 こうした厳しい環境の企業を引っ張っているのが創業者のジェフ・ベゾスCEOだが、彼は巨大かつ革新的、開拓的な事業展開を目指しており、ついて行けない者も多く出ている。入社希望者も多いが、入社時には仕事が容易でないと告げられている。同社の内部事情は秘密主義に包まれており、報道関係者に話のできる人間も限定されていて、ペゾスCEOへのインタビューも、その人達に拒否された。
 同社は他社に先駆けて世の中の変化に対応しつつ、データを駆使して従業員の行動、就職や退職、顧客志向の変化、世界企業の競合と盛衰などを把握しつつ、テクノロジーの指向する敏速かつ生産的な近代事業展開の先駆となっている。データの量は他社を遥かに凌駕するもので、運用も卓越したものがある
 アマゾンの14原則は、休みなく顧客を喜ばせる事を考え、自分の仕事の全てを熟知しマスターしている事を表現する、発見し単純化する、学習を続け物事に好奇心を持つ、反対意見の陳述とそれに責任を持つなどで、自分を燃焼させて全力で当たることを要求される。
 そのため、長時間の勤務ができない社員は必然的に排除され、女性や特に妊娠した女性は不利な立場に立たされる。こうした能力と意欲のある退職者への採用を希望する企業はフェイスブックなどがある一方で、アマゾン社員があまりに闘争的に訓練されているため、敬遠する企業も多い。
 こうしたNYTの記事について、カナダのグローブ・アンド・メール新聞も記事を組み、14原則を肯定しながらも、組織が巨大化するにつれて、結果だけが重視され敗者淘汰の事態が生じていると指摘、14原則のバランスある運用が必要であると指摘した。
 NYTの報道を読んだベゾスCEO自身も思慮にかけた管理の実態にショックを受けたとして、18万人の社員に公開書簡を送ると同時に、広報担当者をCBSテレビに出演させて、同様の話を知っている社員はCEOに直接連絡をするよう要望を出した。
 なお国際労働組合総連合(ITUC)は、2014年5月、ペゾスCEOが労働者をロボットのように扱い、納税も回避しているとして世界最悪の経営者に指定した。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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