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No.347(2015/10/6)
イタリアの労働事情

 2015年7月28日、ドイツ・イギリス・イタリア3カ国の労働組合リーダーを招き、「人口減少下における経済・社会の活性化と雇用政策を考える」をテーマに国際シンポジウムを開催した。このうちイタリア労働総同盟(CGIL)報告の概略を紹介する。

移民によりわずかながら増加する人口
 先進国に共通の人口減少と高齢化が進む中、社会の公正と成長をめざすためにも雇用政策は最優先課題の一つである。イタリアの人口は6080万人で、ここ数年減速してはいるものの、わずかながら増加を続けている。その要因は、自然人口の減少を移民の増加で補い、上回っているからである。2014年12月31日現在、イタリアに居住する外国人は人口の8.3%(約500万人)を占めている。こうした状況は、長期にわたる人口動態の変化がもたらしたものであり、イタリアの社会構造、そして、社会動態を根底から変えてきている。

一段と高まる高齢人口比率、歯止めがかからぬ少子化
 現状のイタリア人の平均年齢は44.5歳となっているが、2059年には49.8歳になると予測されており、高齢化の基調がさらに高まると見られる。人口に占める65歳以上の高齢者の割合が21.7%(2015年年初)であるのに対し、2059年には30.9%になると予測されている。
 イタリアにおける自然人口(出生数-死亡数)はマイナス基調となっており、少子化が将来に向けての懸念材料となっている。1995年に上昇し始めた出生率は、2008年に一転して低下となり、2013年には世界224カ国中210位に甘んじ、2050年には人口が400~500万人減少するという姿が透けて見える。
 2014年におけるイタリアの母親は平均すると1.39人の子供を生んでいるが、これはきわめて低い水準であり、しかも第1子は31.4歳と高い出産年齢である。

不安定な労働環境にさらされる若年層
 懸念の一つは、不安定な労働環境にさらされている若年層についてである。若年層の失業率は42%以上という高いレベルにあり、深刻な問題となっている。ちなみにイタリアの30歳未満の成人の79%が親と同居(2011年)しているという実態があり、経済的に自立のできない状況を如実に表している。
 国のサービスやインフラが高齢層に集中し、若年層が阻害されるという問題も生じている。こうした状況では夫婦が子育てにかかる経済的な負担に耐え切れず、一層の出生率低下を招くことになる。さらに、若い家族がイタリアに安定性を見いだせないとして海外移住に向かうケースも増えている。

厳しい課題に直面する福祉制度
 イタリアの福祉制度は、それを支える人口構成の変化や深刻な経済危機などから、厳しい課題に直面している。まず年金制度は、2011年の改革で支給開始年齢が2018年までに66歳、2021年までに67歳へと段階的に引き上げられることが決まっている。こうした改革はマイナスの影響をもたらすばかりであり、CGILとしては、年金支給年齢に合わせる法定退職年齢引き上げの必要はないと考えている。しかし同時に、どうしたら長い間雇用を維持することができるのか、あるいはその影響を被る若年労働者にどう新しい雇用を生み出していくのか、自らもさまざまな角度から考えていかなければならないと認識し、闘争を展開していく。
 一方、社会政策財源が減るということでは、以下のような問題も浮上している。具体的には、[1]職場における年齢差別により、労働者が労働市場から追い出される、[2]高齢者に対する不十分な社会的保護で不平等、貧困の増大、[3]増大する高齢者層への年金やサービスのための財源不足問題、[4]医療及び長期ケア部門における技能・労働力不足問題、[5]医療介護部門における労働力の非正規化問題――などが挙げられる。 
 高齢化に対応するため、2050年までに、正規のケアワーカーを少なくとも倍に増やし、ほとんどが非正規という現状は変えていかなければならない。同時に、介護ケアサービスの質の高さという点も重要視されなければならない。まさに医療・介護体制の整備が求められている。
 CGILは、以下の政策を提起する。まず一つ目は、長期医療介護のユニバーサル・ヘルス・カバレッジに対する公共投資を強化する。二つ目は、介護ケアワーカーの新規の正規雇用を創出する。三つ目は、高齢者のために雇用機会を確保し、職場における差別との闘争。四つ目は、質の高い仕事を保障する。五つ目は、あらゆる年齢を対象にした職業訓練の機会を提供する、六つ目は、ワーク・ライフ・バランス関連の法制化とその実現を図る、七つ目は、ワーク・ライフ・バランスを各部門および各企業レベルで展開するとともに、労働協約への反映を図ること。そして、八つ目は、生涯にわたる全体的な生活の質に目を向けることである。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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