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No.346(2015/10/2)
アゼルバイジャンの労働事情

 7月10日に行われたユーラシアチームの労働事情を聴く会から、アゼルバイジャン労働組合連盟(AHIK)から報告のあった労働事情の概要を紹介する。

【石油収入により拡大続く経済、増える所得】
 アゼルバイジャン共和国の経済は、ダイナミックに発展を続けている。
 2014年1月1日現在、GDPは5.8%増え、735億ドル(約8兆8134円)に達した。2015年年初におけるアゼルバイジャンの国民1人当たりGDPは7985ドル(約95万7481円)となった。
 アゼルバイジャンの歳入の60%は石油・ガスなどの天然資源からであり、大統領はこれを40~50%にまで下げ、その分を別の産業の振興によって賄えるように、国の進む方向を変えようとしている。例えば観光などに力を入れている。
 社会福祉の構造及び社会保障の強化を目指す政策の結果、2013年の国民所得は8.0%増となった。国民1人当たりの所得でも6.6%増え、月平均の所得を米ドルに換算すると432ドル(約5万1801円)となる。雇用労働者の月平均賃金は6.2%増え、542ドル(約6万4991円)となった。最低賃金は13%引き上げ135ドル(約1万6188円)となった。年金の基礎部分も17.6%増え、128ドル(約1万5348円)となった。全ての社会手当が引き上げられ、公務員の賃金は平均で10%引き上げられた。逆に国の貧困率は5.3%まで下がっている。
 アゼルバイジャンの国内では、システマティックな雇用政策が実施されており、改革の結果、労働市場では肯定的な変化が続いている。雇用促進を目的としたプログラムを実施した結果、2014年の9カ月間だけで10万人以上の新規雇用が生まれ、過去10年間では130万人の新規雇用が創出された。
 国とともに労働組合も発展している。現在、AHIKには150万人以上の組合員が加入し、27の産別労働組合センターが加盟している。アゼルバイジャンの労働組合は、国の労働法規の改正に実質的な影響を与えており、我々労働組合の提案により、過去8年間で労働法、行政法律違反法、労働組合法、その他の法律に約100件の追加及び変更が加わった。
 組織化については、アゼルバイジャンでは、企業の労働集団内でこの問題を解決しているという現状にある。AHIKの執行委員会では、2008年に中小企業における労働組合設立パイロットプロジェクトを採択した。このプロジェクトは3年間実施されたが、労働者の権利保護という観点から労働組合の活動に大いに刺激を与えた。
 アゼルバイジャンの労働組合は、多国籍企業の労働者の組織化という経験が蓄積されている。2005年に多国籍企業には68社にしか労働組合はなかったが、今では約600社の外資系企業に労働組合がある。労働組合がある多国籍企業の業種は、石油・ガス、自動車、農業、食品、保険、建設などとなっている。
 現在、有期の雇用契約で働く人たち、非正規雇用の労働者の改革が、差し迫った問題である。アゼルバイジャンでは、非正規雇用の労働者を労働組合になかなか組み込むことができない。こうした非正規雇用の労働者をどう組織化するのかが問題である。

*1ドル=119.91円(2015年9月30日現在)

ベラルーシの労働事情

 7月10日に行われたユーラシアチームの労働事情を聴く会から、ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)から報告のあった労働事情の概要を紹介する。

【90%の労働者が非正規、労働者の権利も大幅に制限される】
 ベラルーシの経済は輸出の4割~5割をロシアに依存するなど、ロシア経済の影響を受けやすく、今後の動向もロシア経済の回復がカギを握っている。ベラルーシの経済指標と法定労働時間等については、別表の通りとなっている。

<別 表>
  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 0.9 1.5 1.8
物価上昇率(%) 116.47 116.24 104.91(2015年3月)
最低賃金(US$) 162.7 174.3 176.4
法定労働時間 8H/日 40H/週
時間外規制
(割増率)
1日4時間まで、週10時間以下、年間180時間以下
(50%)

 次に、ベラルーシの労働事情に関して紹介する。ベラルーシでは、労働者の90%以上が不安定雇用者になっており、このことは契約状況を見るとわかる。ベラルーシ労働組合連盟(FTB)の調査によれば、労働者は有期契約で仕事をしており、有期契約者を雇用する期間は、35%が3年~5年、31%が1年~3年、30%が1年未満となっている。一方、企業の多くは国営企業となっているが、大株主は大統領府や州政府となっている株式会社であり、民間企業と言ってもいい企業形態である。
 ILOは2000年から15年間、ベラルーシに関して、労働者、または労働組合の権利の侵害について取り上げている。本来であれば、ILOの勧告にもとづき改善をはかる必要があるが、労働情勢はまったく改善されず、かえって悪化している。
 大統領の一存で通る法令である大統領令には力があり、それが労働組合、また労働者の権利を侵害する内容になっている。例えば、木材加工の労働組合に対する特別な法律が採択された。この法律は、国の許可なしに労働者を解雇してはいけないという内容になっているが、これは国内に強制労働を導入したようなものである。
 次に、労働組合の活動に関する問題点を紹介する。まず、団体交渉をする権利はあり、実際に交渉に参加している。しかし、経営側は我々との交渉を嫌がるし、労働協約を結びたくないためさまざま障害事項をつくり邪魔をする。そのために、御用組合を利用し労働協約が結べないように画策する。我々の独立系のナショナルセンター傘下の企業と労働協約を結んでいるというのは2社しかない。ほかの労働組合では、労働協約が結ばれていないか、または既に御用組合との間に結ばれた労働協約に、追加条項として我々の労働組合も加わっているという形である。
 最近、石油化学産業部門で、賃金体系に関する労働協約が結ばれたが、それも中心になったのは御用組合である。BKDPは最初から最後まで、交渉に加われたわけではなく、交渉からはずされた時期もあった。ただし、BKDPは国レベルでは、三者合意の基本合意書の調印をする三者のうちの一つとなっている。
 デモ、スト、集会に関しては集団行動法があり、許可をとらないとできないことになっているが、過去5年許可が出ないため何もできていない。メーデーは、ベラルーシでは国によって「労働の日」という祝日にされ、単に仕事が休みで楽しく過ごす日になってしまっている。
 ストに関しては、現行のベラルーシ労働法では実質上ストは不可能である。ストを行うためには、まず団体争議であるという事実関係を政府が認める必要がある。争議の事実関係を経営側、行政がもし認めたとしても、ストをやるためには2カ月間の和解期間を経る必要がある。この間、第三者による和解の道を探ることとなる。2カ月たっても和解に至らなかったときには、ストを実行してもいいということに理論的はなっている。しかし、相当多くの除外リストがあり、多くの職種、部門でストが禁止されている。
 また、賃金の遅配などに怒った労働者の偶発的な集団行動によって、ラインが止まった場合でも、労働組合がそれを主導したと見なされれば、労働組合の登録が抹消されてしまう。したがって、実際には実力行使に入れない。
 国民は、政権、警察を恐れ何もできない。一つの事件を紹介したい。
 ベラルーシは2011年に200%の平価切り下げ、つまり貨幣の価値を下落させた結果、賃金の価値も下がってしまった。そこで、一般市民は広場に出て、賃金が足らない、お金がないということを訴えるために手をたたいた。集団で集会やデモができないので、単に広場で手をたたいて政府に意思表示をしたが、政府、民警が制服を脱いで一般人の格好をして出てきて、広場いる人たちを捕まえ、ナンバーのない車に乗せて連れ去った。結局、裁判が行われ出された判決は、10日~15日間の拘禁と罰金を科せられた。
 このような厳しい状況の中で、我々BKDPは労働運動の継続をしつつ、労働者の権利・利益を守るために闘っていく。BKDPの第9回大会では、次の決議を行った。第1点目、ベラルーシにおける労働組合及び労働者の権利侵害について。第2点目、労働組合の連帯と団結について。第3点目、国の労働者が置かれている社会・経済状況についてである。さらに、我々のナショナルセンターの活動家及び組合の主要課題として、全国の組織や独立労働組合運動の全面的な強化と、発展させること、独立労働組合の運動の影響力を社会の中で強化し、その権威(ステータス)を高めていく。そして、独立労働組合員及びそのほか全ての労働者の権利・利益をしっかり守っていくということを確認した。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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