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No.344(2015/9/29)
アメリカ大企業のCEO報酬公表義務付け、従業員平均賃金の300倍

 仏経済学者トマ・ピケティ氏は、世界的ベストセラー「21世紀の資本」において、米国社会の格差の象徴として「スーパー経営者」を批判したが、米国大企業のCEO報酬の公表を義務付ける、証券取引委員会(SEC)の新規約が実施に移され、従業員の中位賃金に比較したCEO報酬は、1965年の20倍から、今や300倍になったことが明らかになった。
 新規約の制定は、オバマ大統領就任後の2010年に提唱され、5年後の今年実施されたが、その間に医師や弁護士と同程度であった企業経営者の報酬が、飛躍的に向上していた。
 ISSコーポレート・ソリューションズ(ICS)のデータによると、米国の最大手企業3000社の最高経営責任者(CEO)平均報酬は2014年に640万ドル(約7億6653万円)と、13年の550万ドル(約6億5874万円)から増加した。また、年金の引き上げでCEO報酬の中央値は12.7%大幅上昇したという。
 シンクタンクである米経済政策研究所(EPI)は、米企業の最高経営責任者(CEO)に対する報酬の急激な増加は、所得不均衡の主因であり、またCEOの能力や業績に明確に裏付けられたものではない、との見解を発表している。これはCEO報酬が減少しても、経済成長や生産性は損なわれないことを意味するという。
 米社会保障局が公表している2013年統計では、米国の平均年収は4万3041ドル(約515万5021円)と、12年の4万2498ドル(約508万9985円)からわずか1.3%増にとどまっており、平均的な労働者がCEO並の報酬を得るには約127.7年かかる計算になる。
 また、70兆円もの公的資金を使い、金融機関の救済をしたリーマン・ショックから7年目となり、批判の対照だった金融機関トップに高額報酬へ復活の兆しが出ている。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン会長兼CEOの2014年の報酬総額は、2000万ドル(約23億9540万円)、ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン会長兼CEOの報酬総額は2400万ドル(約28億7448万円)と、格差問題の象徴であるウォール街の高額報酬が批判にさらされる可能性がある。

*1ドル=119.77円(2015年9月18日現在)

エクアドルでゼネスト

 8月13日、南米の石油産出国のエクアドルでゼネストが発生し、首都のキトでは樹木や岩石を置いた道路封鎖、またタイヤを燃やすなどでの行為で首都機能が麻痺したが、中央広場での集会を目指した1万人は機動隊により阻止された。その他、いくつかの都市で警官隊と衝突し、双方に多数の負傷者が出た。
 ゼネストは、ラファエル・コレア大統領の左翼政権に抗議するもので、活動家や労働組合、環境団体などで組織された。抗議内容は各地で多岐にわたるが、先住民からは鉱山や石油開発についての政府の協議拒否、労働組合からは結社の自由と抗議活動を制限した新労働法、実業界からは輸入品に対する新課税や75%の土地売買税、そして相続増税、さらにはコレア大統領が立法しようとする無期限大統領制への反対などがある。
 2013年2月の選挙で、約57%の得票率で再選を果たしたコレア政権は、経済を重視し,「生産マトリックスの変更/強化」という産業多角化を目指すスローガンを掲げ,豊富な石油収入を背景に、社会福祉や教育の普及、道路などインフラ整備に多額の支出を行い、一般国民から幅広い支持を集めてきた。しかし、最近の石油価格の下落で、こうした政策が行き詰まった結果、各種の政策変更を余儀なくされている。そのため政権支持率が過去最低の45%に落ち込んでいる。また、大統領の荒削りで衝動的な政権運営や、反対派への強権発動などに国際的な批判も起きている。
 しかし、コレア大統領に対するゼネストは、就任8年以来初めてであり、経済学者でもある大統領は「少数グループが要求を押し通そうとしている。ただ、この騒乱は警備隊ではなく市民の力で鎮めて欲しい」と述べたが、ストライキ指導者は「聞く耳を持たない大統領へのゼネストは、必要があれば2週間は続く」と訴えている。
 なお、コレア大統領は、ベネズエラのチャベス大統領が国連総会で「米国のブッシュ大統領は悪魔だ」と呼んだとき、「ブッシュを悪魔と比べるのは悪魔に失礼だ。悪魔は邪悪だが少なくとも知性がある」と発言して、当時の南米諸国の反米機運を代弁したことがある。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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