バックナンバー

No.336(2015/8/27)
UAW協約改訂交渉の焦点

 9月14日に期限切れとなる全米自動車労組(UAW)の協約改訂交渉が行われている。交渉の焦点は以下の4項目に絞られるとともに、今回の交渉でストライキが行われるかどうかが注目されている。

1)賃上げ
 現在の時間当たり総労務費はフォードが57ドル(約6831円)、GMが55ドル(約6592円)、フィアット・クライスラーが47ドル(約5633円)であり、外資メーカーは47ドル(約5633円)となっている。
 デトロイト3社の従来組合員の時給(上層階賃金)は10年間据え置きで29.50ドル(約3536円)であり、それに諸手当がつく。賃上げ据え置きの代わりにプロフィット・シェアリング・ボーナスが支給され、去年の額は最低とされるクライスラーで9000ドル(約107万8650円)と言われ、賃上げに換算すると3%となる。しかし、今年の交渉では賃上げの実現を求める声が非常に強い。

2)二重階層賃金
 新入社員を対象にして設定された下層階賃金は、15.78ドル(約1891円)から始まり19.28ドル(約2311円)まで上昇する。多くの組合員がこの二重階層賃金の撤廃を望んでいるが、労務費削減を図る会社は継続に固執している。これに対してUAWは下層階賃金の対象者をクライスラーで45%、GMとフォードで20%程度に抑えようとしている。交渉を予測する者は、下層階対象者が上層に移行する期間として8年間で合意されると見ている。

3)メキシコへの生産移転
 メキシコの自動車生産は過去10年間に倍増した。GMとフォードはさらに多くの生産移転を発表している。これに対しUAWは米国内での生産を要求すると思われるが、ある程度の妥協は必須であり、賃上げや医療費の会社負担などが代償になる可能性がある。

4)医療費
 組合員は全体で健康保険料の6%を負担している。それでも会社は全国平均の28%よりはるかに軽いと述べている。ただし、現役組合員の健康保険料は原則無料である。この点でウイリアムズUAW会長は、60万人の退職者医療保険信託基金と会社の現役組合員保険とを共同基金にして、保険会社とプロバイダーから大幅割引を引き出そうと提案しているが、会社はプロバイダーの数を絞っての割引を考えている。

5)ストライキ基金
 2011年の協約改訂時には会社が倒産して政府の救済援助を受けていたために、GMとフィアット・クライスラーはストライキを打つことができなかった。しかし、今回は会社が立ち直り、またUAWのストライキ基金が充実したこともあり、強力な交渉が可能であるが、ストライキの可能性は不透明であり、あるとすればクライスラーにその可能性が強い。

*1ドル=119.85円(2015年8月25日現在)

メキシコ南部における業績評価制度への教員労働組合の反対行動続く

 メキシコには南米中南米最大の教員組合、全国教員労働組合(SNTE 30万人)があるが、その他に、SNTEの穏健路線に反対して1979年に分離した全国教員労組総連合会(CNTE 8万人)がある。中でも、最も貧しい南部のオアハカ州を中心に活動するのが、戦闘的な“セクション22労働組合”だが、S22は同州公立教育省(IEEPO)の実権を掌握して、教育予算や昇進・昇給を権限に収め、教員の休暇や転勤も組合活動への参加度合いで決めるといわれる。その労働組合が政府の成績評価制度を拒否して、激しい抵抗を展開している。
 オアハカ州における教員労働組合の抗議活動は2006年から始まったが、当時は賃上げ要求を巡って市の中央広場を数カ月にわたり占拠し、それを軍隊や警察が排除する事態が起きて、それからの4年間に年間64日の休校が続いた。
 2012年12月に発足したペニャニエト大統領政権は、教員の評価制度を導入、テストを拒否する者は解雇されるとしてから、再び抵抗が強まり、座り込みと休校が続いている。
 S22はメキシコ・シティの公園を占拠してテント村を作り、政府建物に放火、ガソリンスタンドを閉鎖、先月の議会中間選挙では各地の投票所を襲って投票用紙を焼き払うなどして選挙に反対した。ある45年のベテラン教師は「教育改革は子どもの教育問題だけではない。制度的な労働改革が必要だ。労働組合は教員を予算削減や解雇から守り、ブルジョア改革を阻止している」と語る
 こうした事態の進展を怖れた連邦政府は、オアハカ州だけでなくミチョアカン州やチアパス州でも評価制度の実施を中止して静観の構えであるが、ある識者は「評価制度は貧しい地域や農村などの様々な教育レベルに応じて、実態にあったものに変えるべきだ。評価というと教員は脅迫を感じて、今度は政府を脅迫する。政府もどう対応して良いかわからない。解決は労使交渉でしかない」と語る。
 教職員への評価試験を監督する全国教育評価庁は、今回の決定は教員の採用、昇進、雇用継続の決定における教員評価を義務づけた憲法第3条に違反するものであると、公共教育省を批判、連邦政府に対して教育改革を後退させないよう求めた。
 また、メキシコの教育問題に取り組むNGO団体は,子どもが良質な教育を受ける権利よりも,選挙に関わる政治問題が再び優先され、CNTEの脅しに教育省が屈したと、強く批判している。

過去の関連記事
メルマガNo.210(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/210.html
メルマガNo.198(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/198.html
メルマガNo.174(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/174.html
メルマガNo.168(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/168.html

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.