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No.334(2015/8/20)
カンボジアの労働事情

 6月26日に行われたミャンマー・カンボジアチームの労働事情を聴く会から、ITUCカンボジア評議会(ITUC-CC)から報告があった労働事情についてその概略を紹介する。

【最低賃金では生活ができず、不安定雇用も問題が多い】
 カンボジアの人口は1400万人強となっているが、このうち労働力人口(15歳~55歳)は800万人から1000万人といわれている。若い層に人口が集中しているため、平均年齢は26歳くらいである。
 GDP成長率は、2013年に7.6%、2014年は7.0%、2015年は7.8%に達する見込みである。カンボジア経済は外国からの堅調な投資に支えられて高い成長が続いている。物価の上昇率(注1)は、2013年に0.8%、2014年は1.2%、2015年は1.12%と見込まれている。
 最低賃金は全国一律に適用されるのではなく、縫製・靴の製造業にのみ適用される。最低賃金の水準(月額基本給で皆勤手当等は別)は、2013年の80ドル(約9955円)から2014年は100ドル(約1万2444円)となり、2015年は128ドル(約1万5928円)(注2)となった。
 現在、衣料品、縫製関係と、靴の製造工場は、合わせて600あり、そこに従事している従業員数は58万人で、その売上は58億ドル(約7218億円)となっている。GDPの中で縫製業の占める割合は9.9%であり、輸出に占める縫製業の割合は55.1%(いずれも2012年)となっている。このようにカンボジアの最低賃金は、経済的規模が大きい産業にのみ設定されている。また、縫製・靴産業には社会保障制度もあるが、それ以外の産業には社会保障制度は適用されない。
 労働時間は、1日8時間、週48時間となっている。残業は、緊急の場合において認められ、1日2時間まで、割増率は50%(22時超は100%)、休日出勤の場合は100%の割増率となっている。
 現在の最低賃金128ドル(約1万5928円)で、本当に生活ができるのかを考える必要がある。現在、法律上は、残業は2時間と規定されているが、多くの労働者は生活資金が必要であることから、1日4時間の残業時間をしているのが現状である。1日12時間労働となるがそれでも生活費が足りないため、生活費を削ることになる。その結果、栄養不足から病気になり健康を害している。それでも、多くの経営者は最低賃金を上げれば、みんなミャンマーへ投資すると脅迫をしてくる。
 労働契約にも問題がある。労働契約には、有期の雇用契約(2年以内)と、期限の定めのない雇用契約の2種類がある。若年層の失業率が高いことも背景にあり、有期契約の労働者は非常に不安定な状態にある。例えば、労働条件の改善の要求をしただけで、雇用契約が途中であっても解雇されてしまう。また、組合員になった場合でも解雇されてしまうため組織化の障害となっている。同様に試用期間も問題が多い。一般的な労働者の試用期間は法で1カ月となっており、一定の基準を満たせば正式に採用されるはずである。しかし現実は1カ月の試用期間が終わったとしても、さらに試用期間が延長され、それが繰り返されることもある。この結果、労働者は労働組合への加入をちゅうちょすることになる。労働組合へ加入すれば正規従業員として採用されないだけではく、雇用契約そのものが打ち切られるからである。
 今後、我々の取り組むべき課題としては、労働界全体で互いに協力し、使用者に対して有期の労働契約の利用を止めさせるよう訴えていくとともに、我々は、組合員の立場に立って組合員の利益のために運動を進めていくべきである。また、労働組合の安定性を確保するために労働組合法が必要であるが、設立の自由を規制(注3)するような条文は削除または改正をしなければならない。

注1:IMFの資料によれば、カンボジアのインフレ率は2013年2.96%、2014年3.85%=推計となっている。
注2:カンボジアでは一般的に米ドルが流通しており、賃金もドルで支払われることが多い。
注3:労働組合は、法律で定められた権利と利益を享受するためには、労働省に組合規約と管理・運営の責任者のリストを提出しなければならない。

*1ドル=124.44円(2015年8月18日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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