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No.331(2015/8/11)
カナダ各州の最低賃金

 住みやすい国のランキングで常に上位にランクされ、1人当たりのGDPも日本より約174万円(2014年度:1米ドル123円で換算)多いカナダの最低賃金は、実質価値で40年間ほとんど上がっていないという状況にあったが、最近大きく変化しようとしている。
 労働組合支持色の強い新民主党(NDP)が政権を取ったカナダ・アルバータ州で、州政府は最低賃金を現行の10.20カナダドル(約962円)から2018年には15カナダドル(約1415円)に引き上げると言明、第1段階として今年10月から1カナダドル(約94円)引き上げる。これにより同州の最低賃金はカナダ最低から一気に第2位に上る。しかし実業界は物価高騰と解雇を招くとして反対している。
 この15カナダドル(約1415円)は、生活に必要な最低賃金が13カナダドル(約1226円)から17カナダドル(約1603円)と試算されていることから目標に設定された。同時にチップ収入が大きい酒類部門では、時給9.20カナダドル(約868円)が10.70カナダドル(約1009円)になる。
 賃上げ議論においては、購買力増進で雇用が増加するという意見、影響の大きいレストラン業界では、生活向上どころか25人に3人が職を失うという意見、最賃引き上げ対象の62%は女性とする指摘などがあったが、見解の統一はできなかった。
 その他の州の最低賃金はBC州で10.25カナダドル(約967円)と酒類の9.00カナダドル(約849円)を9月から10.45カナダドル(約986円)と9.20カナダドル(約868円)へ、サスカチワン州は10.20カナダドル(約962円)、マニトバ州は10.70カナダドル(約1009円)、オンタリオ州は10月から11カナダドル(約1038円)を11.25カナダドル(約1061円)へ、ケベック州では10.55カナダドル(約995円)、北極に近いノースウエスト・テリトリーでは12.50カナダドル(約1179円)に改定されることになっている。

*1カナダドル=94.32円(2015年8月4日現在)

米国最高裁が公務員労働組合の組合費問題を審議へ

 保守派グループに支援されたカリフォルニア州の教員たちが、「労働組合非加入の公務員から労働組合費は徴収できないはずだ」と訴えている問題について、米国最高裁は審議を開始すると表明した。徴収できなくなると公務員労働組合だけでなく労働運動にも大きな打撃となる。カリフォルニア州の主要都市であるサンディエゴ、サンノゼ両市で、2012年に市職員の公務員労働組合の組合員の年金を削減する提案などへの住民投票が実施され、いずれも可決され、労働組合員の減少につながった。
 現在、米国では約半数の州において、「労働組合に加入していなくとも労働協約の適用を受ける場合は、交渉費用を分担するという意味で組合費を徴収できる。ただしこの組合費は政治目的には支出できない」とされ、この1977年判決は38年間踏襲されてきた。アメリカには日本の労働組合法のように労働組合について規定している法律はなく、税制上の優遇措置を受けるために内国歳入法上の規制があるのみである。
 提訴グループは「支持しない事項に代金を支払うことは憲法違反だ。学校予算の増額や賃上げにしても、税金の使い道の交渉であれば、それは政治交渉となる」と主張している。しかしその主張は連邦地裁では否決され、上訴されている。
 他方、昨年に最高裁がイリノイ州の在宅介護労働者の組合費徴収問題を審議した時に、1977年判決に疑問が投げかけられて、5-4で徴収が違法と判定された。しかし長年の先例を重視する最高裁が今回どう審議するかが注目されている。
 共和党による労働組合勢力削減の動きは全米各地に起きており、ウィスコンシン州など巨額の赤字に悩む各州では、労務コスト削減のために公務員の団体交渉権制限が起きている。労働省の統計では、民間労働組合の組織率6.6%に対し公務員労働組合は35.7%という高率を維持している中で、労働組合加入と組合費支払いを従業員の自由意思とする“労働の権利法”を採用している25州全体の組織率が6.7%であり、そうでない州の13.8%の半分にも満たない状況で、労働組合全体の組織率に大きな影響を及ぼしている。
 共和党などは「強制的な組合費を廃止することで、労働組合が本来の姿に立ち返って、本当の力を身に付けることができる」と主張する。

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