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No.330(2015/8/6)
ベトナムの労使関係の動向と改正労働法の状況

 ベトナムの労使関係について、近年注目されているものにストライキの動向がある。同国では、「ドイモイ(刷新)政策」により経済改革がすすみ、2000年から2009年にかけて、年平均9%を超える経済成長を実現した。一方、その中で消費者物価が上昇し、2008年には23%を記録するなどの問題が生じ、従来は年間100件以下であったストライキが増加、2008年には700件を超え、2011年には1000件に迫る勢いを見せた。ベトナム政府は、2012年に労働法制の大きな改正を行い、労使紛争処理制度を強化した。ストライキの件数は、その後、2012年には約530件、2013年には約350件と減少した。

 しかし、2014年以降ベトナムを取り巻く新しい要因も加わり、ストライキは再び増加の傾向を見せるようになる。2014年の場合は、中国の南シナ海への進出に対する国民、労働者の強い反発がある。例えば、その年の4月、両国関係の緊迫化に伴い、ホーチミン市の北方に隣接するビンズオン省の工業団地では、数十の中国系企業でストライキが行われ、10カ所程度では放火も見られた。この動きは各地に広がり、労働争議の件数を引き上げる結果となった。

 今年は年金制度改正への抵抗という要素が加わっている。ベトナム政府は、定年後の生活安定のためとして、定年前の退職の場合は、年金を一時金として受け取ることを禁止する法改正を行った(改正社会保険法第60条)。しかし、労働者の反発は想定を上回るものがあり、3月にはホーチミン市郊外の工業団地で9万人を超える労働者がストライキに入った。政府は、年金改正のその部分を停止することを表明、労使紛争は収束したが、今年前半のストライキの件数は既に250を上回るという。この背景には、タイの半分以下というワーカーの低賃金の問題がある。

 ベトナム労働総同盟(VGCL)は、労働争議を取り巻く情勢について、労働法制の改正に基づく対策を多国籍企業などが十分に実施していないことも大きな要因として、つぎのように指摘する。「改正労働法では、労使対話の促進に向け、例えば、『職場の労使対話を3カ月に一回、または労使いずれかの要求により行う』(改正労働法典第63~65条)としているが、順守しているところは少ない。また、労働法改正を踏まえた労働協約の普及も遅れている」。一方では、日本を含む進出企業による商工会などが、労働争議の解決に向けた政府指導の強化と労働基準の緩和を要請した。また、ILOは、2016年を最終年とする政労使参加の「労使関係の開発と労働法制の実施プログラム」を展開している。ベトナムでは、産業と社会が変化するなかで、労使関係をめぐる今後の動向が注目される。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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