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No.322(2015/6/30)
最大手ブログメディア企業に労働組合誕生

 プロのブロガーを雇ってブログを使ったメディアを作る一方で、ブログシステムや広告・渉外は一本化して利益を得るというビジネスモデルを開発・実践した企業の1つとして知られているゴーカー・メディアに、労働組合が誕生した。大手のデジタル・メディアでは初めてのことである。
 ゴーカー・メディアの従業員は118人、脚本家や編集者、イラストレーター、ビデオプロデューサーなどだが、80人が賛成票を投じた。組合結成のきっかけとなったのは賃金諸手当と並んで、バラバラだった仕事のあり方を定型化したかったことと、ある意味では同社の特徴である無方針な労使のコミュニケーションを改善することであった。このことは企業が成熟して従業員の在籍が長期化し、扶養家族が増えるにつれて当然起きることであるが、それでも多くの従業員は労働時間や仕事量などに労働組合が規制を加えることには強く反対している。
 同社は低コスト経営で、1つのブログの担当記者は初期には1~2人、現在でも5~10人で、名前の売れた記者でも年収3万ドルだとすっぱ抜かれたことがある。その後5万ドル以上になったというが、記者はどんどん転職し企業も引き止めることはない。不況になれば売上の低いブログは売却し、スタッフはリストラするといわれている。
 労働組合の結成はシニアー・ライターのノーラン氏が主導したが、さる3月にたまたまアメリカ脚本家ギルド労働組合(WGA)の幹部と話をしていて組合の結成を思い立ち、同社のウェブサイト上で従業員の間に議論が重ねられてきた。
 従業員はおおむね会社とクラッグ編集長のやり方に満足しているといわれ、ノーラン氏は「最後まで賛成が集まるかどうかわからなかった。しかし労働組合をつくるなら会社が好調な今の時期にできたほうが良いと思った」と語る。
 他方、会社創始者のデントンCEは労働組合結成のニュースに「将来の会社方針に制約が出るかもしれないが、その方針もあまりアピールできるほどのものではない。労働組合誕生で新しい未来が開ける可能性の方が多いのではないか。クリエイティブな労働者は会社の力だ。心のないコングロマリットに働く労働者より、我が社の従業員に期待する」と語り、クラッグ編集長も労働組合に好意的である。
 労使協議が軌道に乗るには数カ月を要するといわれ、多くの事項について意見収集を続けてゆくが、将来は他のデジタル企業にも働きかけていくとして、ノーラン氏は「デジタル・メディア産業の労働者が広く組織化されれば、企業が労働者の権利を無視し、労働者同志を競わせ経営者の意のままにあやつることができなくなる」と語る。

ミッキーマウスの中にはどんな役者さんがいるの?

 ミッキーマウスの着ぐるみの役者は誰か、ウォルト・ディズニー・ワールド社は役者の名前を明かそうとしない。それを憲法違反だとする不当労働行為の訴状がチームスター労働組合から全国労働関係委員会(NLRB)に出された。
 同社は役柄を演じる役者の名前の公表禁止規則を作り、違反すれば解雇を含む罰則が課されるが、こうした役者は1200人を数える。この問題は過去の労働協約改訂時にも協議されたが、協定化できていない。
 アメリカの著作権法は、ミッキーマウスら主要なキャラクターの著作権が切れる直前に保護期間の延長が繰り返されている。一私企業の都合で法律が改変され、既得権維持に執着する強引さに対し、方々から皮肉の意味を込めて「ミッキーマウス保護法」(著作権延長法)とも呼ばれている。
 また、同社は過去に何度も自社の映画と連動した玩具や衣服などの関連商品を生産する工場で児童労働が蔓延するなど、多くの労働問題を起こしている。
 1998年、アメリカのNGO組織「人と労働者の権利を支援する国際労働委員会(NLC)」によって、ハイチにおけるディズニーのキャラクターグッズの生産工場が、ハイチ人の労働者に時給60セントの条件を呑ませようとしていることを明らかになり、このハイチの工場で労働組合を作ろうとした従業員150人が即座に解雇されている。2000年代になって、ハイチ工場の責任者が「より安い生産拠点」として中国に拠点を移すと発表した際には、米国政府は経営者のマイケル・アイズナー宛てに労働条件改善を促す親書を送ったが、アイズナーはこれを無視した。ハイチの工場は閉鎖縮小され、中国への移転が行われた
 着ぐるみ役者について会社は「従来から役柄を誰が演じているのかは明らかにしないで、その役柄の一体的イメージの保持を大切にしてきた。」と述べる。
 しかし労働組合側は「役者が他に仕事を探す時に、どんな仕事をしてきたかを説明する必要がある。また親兄弟や友人にグーフィーを演じていると言ってはいけないのか。テーマパークの外でミッキーマウスのコスチュームを着て子供たちに顔を見せ、名前を名乗るわけではない。役柄のイメージ保持は大事であり、それを壊したくはないのは分かっている」と語る。

民主党大統領候補者が相次いで労働組合幹部と対談

 2016年の大統領選挙を控えて、民主党の大統領候補が次々に労働組合指導者との対談を重ねている。
 最有力候補と目されているヒラリー・クリントン氏は、メリーランド州マーチン・オマーレー前知事とともに6月8日に地方自治体労働組合(AFSCME)の役員会に出席し、バーモント州のバーニー・サンダース上院議員は9日に対談した。AFSCMEは1992年にビル・クリントンを支持した最初の労働組合であり、2008年の予備選でもヒラリー氏を支持した。
 3氏は同様に全国教育協会労働組合(NEA)、アメリカ教員組合連合会(AFT)と会談して賃金労働条件や団体交渉権の強化、貧富の格差解消などについて議論した。AFTは2008年にヒラリーを予備選で支持したが、最大教員組合のNEAは予備選では中立を保ち、最終選でオバマを支持した。
 7日にはヒラリー氏は、サービス労働組合(SEIU)の会議に出席して賃上げ問題を議論したが、「どの労働者も公平な賃金への権利と仕事への発言権を持つ」と述べながらも、最低賃金15ドル(約1840円)には態度を明確にしていない。他の2氏は15ドル支持である。
 また、労働組合が反対しているTPPについて候補者の多くが反対を鮮明にしているが、ヒラリー氏は曖昧な態度をとり続けており、共和党は「政治を弄している」との批判を浴びせ、ヒラリー氏への批判を強めている。

*1ドル=122.71円(2015年6月22日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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