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No.320(2015/6/24)
インドネシアの労働事情

 5月22日に行われた中国・インドネシアチームの労働事情を聴く会から、インドネシア労働組合総連合(CITU)の報告の一部を紹介する。

【最低賃金、アウトソーシング、社会保障が課題】
 インドネシアは、投資先として魅力のある国で投資も年々増え、ビジネス面では非常に有望な国とされているが、実際には様々な課題、問題を抱えている。まず1つ目の課題としては、賃金が非常に低いレベルにあるということがあげられる。2つ目は、いわゆる契約労働者、あるいは派遣労働者の問題がある。そして3つ目に社会保障が不十分であるということが指摘できる。健康保険、年金の保障もいまだに十分な形で実施されていない。我々労働組合としても2011年以来、この3つの課題を闘争のテーマに掲げて運動を展開してきた。さらに、HOSTUMというスローガンを掲げて運動を進めてきた。このスローガンの意味は派遣労働の廃止、低賃金を拒否するという言葉を略したものである。
 まず初めに低賃金の問題であるが、我々の賃金とインドネシアに投資している企業の本社のある国とを比較すれば、インドネシアは非常に低い水準にあるが、周辺の諸国と比べても、インドネシアの賃金水準は非常に低いといえる。インドネシアの首都ジャカルタの賃金は、マレーシア、タイ、中国、フィリピンに比べて低い水準にある。一方で、ベトナム、モンゴル、パキスタン、カンボジア、ラオスと比べれば高い水準にあるが、それは首都ジャカルタの水準であり、地方のバンジャムガラの賃金水準はカンボジアよりも低い。
 このため我々の運動は、最低賃金の決定は適正生活が可能となる賃金水準でなされるべきと主張してきた。しかし、インドネシアにおいて適正な生活を送るために必要な品目数は不十分であり、2012年以前は46品目しか調査されておらず、2012年以降にようやく60品目に増えた。我々は、さらに84品目へ、そして122品目まで増やしていくことで適正な生活が可能となる最低賃金水準へ引き上げを求めていく。
 次にアウトソーシング(派遣)では、違法な派遣が行われており、これを廃止しなければならない。インドネシアの派遣労働者は大きく2つに分かれる。1つは業務そのもの、仕事そのものをアウトソーシング、外部委託すること。もう1つは、労働力をアウトソーシングし外部から調達することである。業務自体の外部委託は、我々は問題視していない。問題なのは、労働力の外部調達、アウトソーシングである。
 労働力のアウトソーシング、外部からの調達に関しては法律も制定され、労働力の外部調達では、コア業務、中核となる業務には、派遣(労働力の外部調達)は禁止されている。派遣、アウトソーシングが認められるのは5つの業種に限られている。それは、警備、ケータリング、ドライバー、清掃サービス、鉱業部門(マイニング)の労働者に限定されている。しかし、現実には、派遣労働者たちが生産部門の製造ラインや中核業務、コア業務というところで大勢働いている。これがまさに我々にとって非常に大きな問題となっている。我々は、違法な派遣の根絶を目指して運動を進めていかなければならない。
 インドネシアにおける社会保障制度は2004年に定められた。2004年の法律第40号に定められているが、2012年になってようやく施行された。その中に、国民社会保障システム(SJSN)があるが、その実施に当たっては社会保障実施機関(BPJS)が設置され、その社会保障実施機関は、医療、保健分野を扱うところと労働分野を取り扱うところがある。労働分野を扱うBPJSは、老齢保障、死亡保障、労災保障、年金を扱っている。我々が問題視しているのは、健康保障と年金の2つの保障である。
 まず健康保障、これは既に実施されているが、実際には様々な問題がある。加入率が、組合員においても低い状態であり、国民全体で見ればさらに悪くなる。また、前の健康保険制度の給付内容の方が充実していた。一方、年金制度のほうは2015年7月からスタートする予定である。年金制度では、現時点においても保険料と実際に受け取れる年金額について、いまだ合意がされていない。これらの問題について、我々は2011年以来現在に至るまでさまざまな取り組みや闘いを進めてきたが、今後も継続して運動を強化していく。

インドネシア・フィリップス社での労働争議

 バタム工業団地で操業するフィリップス製造で、インダストリオール傘下インドネシア金属産業労働組合連盟(FSPMI)に所属する600人の労働者が、組合つぶしと不当解雇に抗議し6月3日ストライキに入った。
 フィリップス経営者への要求は以下の3点である。
・経営側の組合つぶしの一環で不当解雇された組合員の職場復帰
・インドネシアでの労働権とILO結社の自由権の尊重
・インドネシアフリップス労組を重視し、交渉の再開
 これまでのところ、経営側は労働組合要求を無視し、トイレや食堂へのアクセスを妨害したり、お祈りのモスクの使用を拒否したりするなどの嫌がらせをしている。
 FSPMIによると、フリップスバタム労働組合は2015年3月18日に登録された。バタムはインドネシア地方自治政府より貿易自由地域の認可が下り、労働組合への敵対的圧力が日に日に増している。
 2015年4月9日、フィリップスバタム社は労働組合の登録が公式に認められた旨通知を受け取った。ところがその翌日に会社側は組合員を1人ずつ呼び出し、契約終了のサインを強要した。それらの対象は正規社員と契約社員双方であった。
 労働組合役員に支えられた労働者は解雇に対して抵抗したが、会社の外へ退去させられた。しかも、自分の社内ロッカーから私物を持ち出すことも許されなかった。83人のFSPMIの組合役員と組合員は、この4月にフィリップスバタム社から解雇通知を受けた。組合は何度かこの不当解雇を撤回させようと交渉を申し入れたが、会社側は効率化のために解雇したと毎回主張した。
 解雇された労働者は同僚より充分な支援を受けている。1900人の従業員のうち、519人が4月末に新労組に加入した。FSPMIはあらゆる手段で経営側に解雇撤回を説得したが受け入れられず、5月末にスト通告を行った。
 インダストリオールは地域だけでなく、全世界のフィリップス社の指導者に接触し、紛争の公平な解決を探った。フィリップスバタムのトップだけでなくオランダのフィリップス社CEOへ、ユリキインダストリオール書記長は解決に向けて「不当解雇の即撤回と組合員への嫌がらせをやめ、彼らの労働組合加入への選択権尊重を」と求めた。
 また、ユリキ書記長は「FSPMIとの団体交渉を再開すること、そしてこの紛争を公正に解決するだけでなく、建設的な労使関係を生み出すこと」をフィリップスバタム社に要請した。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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