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No.318(2015/6/11)
カンボジア、フィリピンに見る労働環境保全の事例

 国際標準化機構(ISO)は2016年秋にも、企業などが労働者の健康と安全を確保できる体制を持つことを認証する国際規格45001を新設するとの報道があった。今回新たに設ける「ISO45001」は、「管理規格の労働環境版」と位置づけられ、労働者の働く環境を客観的に評価し、企業に安全や基本的人権の維持を促すなど、ISOの役割が広がる。最近、アジアにおける企業の労働者から健康と安全の確保に対するニーズは強くなっている。

 カンボジア政府は、労働権の制限を含んだ新労働法制定に動いている。その内容は労働法で保護される労働者の範囲を狭め、労働組合の登録を理不尽なくらい厳しくし、団体交渉権を制限し、裁判所の許可無しで政府にスト禁止やロックアウトの権限を与えるといったものだ。
 カンボジア政府は2011年の2国間協定により、カタールへ最初の出稼ぎ労働者団を派遣する準備をしているが、カタールでは、ILOが本質的な懸念事項と指摘するカファラという受け入れ制度が待っている。カファラは、外国人労働者のパスポートの徴収権を使用者に認めるなど圧倒的に雇用主に優位な制度で、外国人労働者の労働組合結成は禁止され、50度を超す炎天下で週7日間12時間以上働かされ、1カ月間で32人が死亡したとの報告もされている。
 国際労働組合総連合(ITUC)とグローバルユニオンのインダストリオールとユニは、カンボジアのフンセン首相に新法を棚上げし、ILO基準に則った法をつくるよう要請した。カンボジア繊維産業の顧客である国際企業にも、新労働法は国際基準を満たすものでなければならないと申し入れた。最近のカンボジア政府の行動は、政府が自国民をどのように扱っているのか、不信感を増幅させている。
 5月に通勤用のトラックが事故を起こし、21人の衣料工場労働者が死亡し、多くの負傷者がでたことにシャロンバローITUC書記長は言及して、「カンボジアでは労働者は消耗品のように扱われている。政府は経営者が労働者を搾取したり、不当に扱ったりすることを放置しないでむしろ労働法を強化するべきだ」と述べた。

 フィリピンでは5月13日バレンズエラ市のカンテックス社スリッパ工場で火災があり、72人の労働者が犠牲となった。2階建ての工場には非常口も無く、窓には格子があり、逃げ道が無いのが原因だった。また工場のスタッフは火災避難の訓練もされてなかった。同工場は300人の従業員の内、正規従業員は54名でその他は派遣会社からの労働者だった。労働省からの報告によると、火災予防基準を含む労働安全基準もなく、年金、健康保険などの社会保険に未加入で、法定最低賃金も守られていなかった。
 インダストリオールのフィリピン組織は労働省と火災の原因を調査しているが、アジア地域書記長は「火事の責任と基準を守らなかった責任は大きい。2度とこのような悲劇は起こしてはならない」と語った。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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