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No.314(2015/5/14)
ブラジル、労働の非正規化問題でゼネスト含みに

 ブラジルで労働の非正規化が焦点の課題となり、労働界はゼネストの可能性にも触れて政府との対立を強めている。現大統領は労働者党のルセフ氏であり、2011年に国民的人気の高かったルーラ氏を継いで、本年1月から二期目を迎えた。しかし、政府はこの間の経済の低迷を背景に、構造改革路線に踏み出した。労働のアウトソーシングを促進する法案(PL4330)はその一環であるが、4月22日(水)に下院を通過した。最大組織のCUT(ブラジル中央統一労働組合:約800万人)をはじめ労働団体は、これに強く反発しており、政府と厳しく対立する局面を迎えている。
 ブラジル経済は、このところの停滞が目立っている。2000年代には経済成長が続き、鉱物資源が豊富で農業生産も順調であることから、“BRICs”の言葉に示されるように、世界経済をリードする新興国に位置づけられた。ところが、経済成長率でみると、ルーラ大統領時代には平均4.5%で(2003~2010年:リーマンショックの影響年を除く)、貧困対策なども前進したが、現大統領の就任以降は平均1.5%(2011~2014年)と大きく低下した。一方、インフレ率は上昇傾向にあり本年度は7%以上ともいわれ、国民の不満が高まるなど、「このままではBRICsから脱落」と予測するエコノミストも現れている。
 経済が低迷する要因としては、過度な資源依存のなかでの国際的な資源価格の低下がある。同時に、「ブラジル・コスト」ともいわれる経済制度や行政の非効率の問題がある。このため、現政権は規制緩和の政策に踏み切り、その一つが今回の法案である。具体的には、従来は禁止されていたコア業務のアウトソーシングの解禁などである。下院の審議で、与党では第二党の労働者党が、「今日でも約1300万人の請負労働者がおり低賃金に苦しんでいる」として反対し、修正案を提出した。しかし、野党だけではなく最大与党の「ブラジル民主運動」などにも支持があり、投票の結果、230対203で可決された。
 今回の法案については、今後、メーデーでの労働団体のアピールや、国会上院での審議が行われる。ブラジルの労働法制は、欧州をモデルに1930年代に整備がすすみ、1943年には「統一労働法」を制定、さらに民主化に伴う1988年憲法による修正があり、今日の労働者保護を規定した歴史がある。CUTのノブレ事務局長は、ルーラ前大統領が委員長を務めた金属労働組合の出身であるが、「今回の法案にはゼネストによる抗議を考える」として労働団体に共闘を呼び掛けている。ブラジルでは今後しばらくの間、雇用政策と構造改革をめぐり、労働組合をはじめ、使用者団体、政党などを巻き込んだ論議や活動が続くことになると思われる。

米の低賃金労働者に1530億ドル(約18兆3355億円)の税支出

 米国のファストフード産業従業員の平均時給は、約9.08ドル(約1088円)、フルタイムで勤務しても年間平均1万8880ドル(約226万2579円)にすぎず、生活費を賄える水準ではなく、賃金引上げの必要性が大きな世論となっている。
 マクドナルド、バーガーキング、ケンタッキー・フライドチキンなど各チェーン店の従業員たちは、国際サービス業従業員労働組合(SEIU)の支援のもと、現行賃金を大幅に引き上げ、時給15ドル(約1798円)とすることや、労働組合の結成などを要求している。  こうしたなか、バークレイ労働調査・教育センターは、マクドナルドやウォルマートなど、繁栄を続ける企業に働く低賃金の労働者に対して、1530億ドル(約18兆3355億円)の血税が使われているという報告を出した。
 この金額は、連邦政府と各州が支出する公的補助費の半分以上を占めるが、それはフードスタンプ(低所得者向け食券)や健康保険など最低生活を維持するための補助であり、言い換えれば、フルタイムで働いても生活維持が困難な賃金しか払わない企業の後始末をしていることになる。
 ある家庭の例では、マクドナルドとバーガーキングをかけ持ちで働く夫の時給は8.50ドル(約1019円)で週に35時間労働、在宅介護ケアの妻は時給10ドル(約1198円)で働いているが、3人の子供を養うのに月に240ドル(約2万8762円)のフードスタンプを受けている。
 また、在宅介護とケンタッキー・フライドチキンに働くある女性労働者は、午前6時から夜11時まで働きながら時給7.50ドル(約899円)で、年収1万3000ドル(約155万7920円)にすぎず、一人娘と生活するのに公的補助なしには生きていけない。
 こうした公的補助を必要とする人は、ファストフードだけではなく、在宅介護労働者の48%、児童ケア労働者の46%、パートタイムの大学助手クラスでも25%が補助を受けている。
 最低生活を補助する公費は、州の一般公的補助費の52%を占めており、中でもカリフォルニア州の37億ドル(約4434億円)、ニューヨーク州の33億ドル(約3955億円)、テキサス州の20億ドル(約2397億円)が大きい。
 かくして最低賃金引き上げの必要から、カリフォルニア、コロラド、メイン、オレゴン、ワシントンの各州で、最低賃金を12ドル(約1438円)に引き上げる法改正が進んでいる。また、コネチカット州では低賃金を支払う大企業に対し罰金を科する法改正が検討されている。
 公的補助を必要とする人の73%が労働者家庭の人たちであるが、2003年から2013年にかけて、労働人口の70%で物価調整後の収入が低下し、同時に企業負担の健康保険適用者が激減した。
 オバマ米大統領と米議会民主党は、連邦最低賃金の7.25ドル(約869円)から10.10ドル(約1210円)への引き上げを支持しているが、共和党議員の多くはそうした動きに反対している。

*1ドル=119.84円(2015年5月11日現在)

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