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No.308(2015/4/9)
ウォルマート社が賃上げ、全米に影響及ぶか

 2月18日、ウォルマート社は最低賃金を4月から9ドル(約1076円)へ、2016年2月には10ドル(約1196円)に引き上げると発表した。全米の全従業員130万人のうち50万人が対象となるが、平均賃金は12.85ドル(約1536円)から13.00ドル(約1554円)へ、パートは9.48ドル(約1134円)が10.00ドル(約1196円)への賃金引上げということになる。
 引き上げ額はわずかだが、「賃金が低すぎる」と批判されてきたウォルマートが賃上げに踏み切ることで、米国内の賃上げ機運に火を付けそうだ。
 ジョージア大学の調査によると、米流通業の平均時給は16.47ドル(約1969円)で、民間部門平均より3割以上低い。一方、全米小売業協会(NRF)の調べでは、米国で働く4人に1人は流通業に携わるとしている。流通業で賃上げが広がれば、米国民の所得が底上げされ格差是正につながると期待されるほか、米経済をけん引する個人消費も刺激しそうだ。
 最近ではギャップ社が最低賃金を10ドル(約1196円)に引き上げ、家具のイケアも17%増の10.76ドル(約1287円)、健康保険会社エトナ社は16ドル(約1913円)と発表した。こうして連邦最賃7.25ドル(約867円)を含めて10ドル(約1196円)以下で働く労働者に転職の機会が広がる。ワシントン州では州の最低賃金を9.47ドル(約1132円)に引き上げた効果で、近隣のアイダホ州から労働者が働きに来るようになった。
 マクドナルドの労働者は、15ドル(約1794円)への時給引き上げを要求しているが、直営店方式のウォルマートと違って、マクドナルドなどはフランチャイズ制であり、親会社が賃金等の指示はできないとしてきた。ところが昨年、全国労働関係委員会(NLRB)が特定フランチャイズ店について”共同経営者”の立場に有ると定義してから、事態が変わる可能性が出てきたが、マクドナルド社はNLRB決定に異議を唱え上訴した。
 一方、マクドナルド・フランチャイズのある店主は「ウォルマートに近接するところでは賃上げを余儀なくされる。しかし、賃上げによる待遇改善で応募が増え、退職が減るなら店の評判も上がり、みんなが得をする。ただ、マクドナルドからの材料指定や店舗改装、フランチャイズ料は依然として重荷だ」とも述べている。
 他方、マサチューセッツ工科大学(MIT)のオスターマン教授は「最近の雇用改善でウォルマートに人が集まらなくなった。過去にも都市部への進出には低賃金に対する強い抵抗運動が起きたが、同社が成長を目指すには都市部への進出が不可欠だ」と指摘する。
 州別には、今年初めにフロリダやニューヨーク、ワシントン州といった20州が最低賃金を引き上げた結果、連邦最賃を上回る州が29を数え、初めて過半数を上回った。
 経済政策面で、ある経済学者は「連邦準備理事会(FRB)は賃上げ速度が加速するまでは利息の引き上げを遅らせるべき」とするが、反対派は「利上げの遅れは資産バブルを引き起こし、インフレを助長する」として警戒感を強めている。

*1ドル=119.57円(2015年4月7日現在)

石油業界に35年ぶりの全国ストライキ

 米国石油業界では、1980年以降全国規模のストライキがなかったが、2月1日に全米9精錬所で35年ぶりとなるストライキが起きた。
 石油業界はシェル石油など20社程度の会社側グループと、米国の石油労働者3万人が加盟する全米鉄鋼労働組合(USW)が3年の労働協約を結び、全米の石油精製施設の3分の2をカバーしている。組合員は、1984年の5万人から現在は3万人に減少している。こうした中で労働協約改訂交渉が始まったが、争点は他の労働組合とは異なり、賃金ではなく労働安全問題にあった。賃金は業界の好況を反映し時給35ドル(約4185円),年収6万2000ドル(約741万3340円)と高水準にある。しかし会社側は、新規採用を縮小して現有人員による生産強化を図ってきたために、労働時時間が延長されたほか、メンテナンス業務などが外注に出されるようになった。人員配置は会社側が権限を握っている中で、他の業界に比べて事故件数は減少傾向にあるとは言え、この点に労働者の不満が高まってきた。
 石油労働者は港湾労働者と同様に、米国経済に大きな影響力を持っており、その動向が注目されていたが、3月12日に、石油各社を代表して交渉しているロイヤル・ダッチ・シェルと、期間4年の労働協約で暫定的に合意した。これにより1カ月余りにわたって続いたストライキが収拾する可能性が出てきた。

*1ドル=119.57円(2015年4月7日現在)

メキシコ43人学生の殺害事件、抗議デモ隊がコカコーラ従業員2人誘拐

 昨年9月にメキシコ南部のゲレロ州イグアラ市で警官隊が教員養成学校の学生が乗るバスを襲撃、その際6人死亡、25人負傷、43人が拉致された。メキシコのカラム検察庁長官は7日、拉致された学生らは市長の命令で警察に拘束された後、麻薬カルテルに引き渡され殺害された。遺体は燃やされ、川に遺棄されていたと発表した。
 そのため教員労働組合などから、行政に対する激しい抗議行動が燃え上がっており、州都チルパンシンゴでは、座り込みを行っていた教員・学生や教員労働組合の組合員などがコカコーラ事務所に抗議デモ、その際火炎瓶などで警官、ジャーナリスト、デモ隊に10人の負傷者を出し、更にデモ隊は逮捕者5人の釈放を要求してコカコーラ従業員2人を人質に取った。
 43人が行方不明になってから、コカコーラは250台のトラックが焼き討ちや襲撃に遭ったというが、その他にメキシカーナ・デパート、大手コンビニの車も狙われた。メキシコ全土に社会不安が広がっている。
 3月10日には、メキシコ南部ゲレロ州アウアクオツィンゴ市の市長選に出馬を予定していた女性のアイデ・ナバさん(42)が誘拐され、首を切断された状態で殺害されているのが見つかった。遺体のそばには、地元犯罪組織が「言うことを聞かない政治家は同じ目に遭う」と書いたメッセージが残されていたという。アウアクオツィンゴ市長だったナバさんの夫も昨年銃殺され、ナバさんの息子は2012年に誘拐されたまま行方不明となっている
 近年、メキシコでの暴力事件は全体的に減少してきたが、麻薬カルテルが冷酷な暴力事件を起こし、治安部隊が残忍な行動をとり、国の一部を蝕む汚職が横行している実態が再び浮き彫りとなっている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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