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No.305(2015/3/24)
ラオスの最低賃金引上げと労働法制の動向

 2月17日、ラオスの労働社会福祉省は、今年の4月1日より、最低賃金を約44.8%引上げ、現在の月額62万6000キープ(約8764円)から、90万キープ(約1万2600円)にすることを発表した。これは、1日8時間、週6日、1月では26日就労するミニマムの技能を持つ労働者についてである。このほか有害物の取扱いなど危険性のある業務の場合はそれに15%が割増しされる。
 この背景には、タイ、ベトナムなどの最低賃金の引上げに伴う労働力の流出がある。ラオスは、この数年間、GDPでは年7~8%の経済成長が続き、政府は経済開発を最優先とする政策をすすめている。しかし、労働者の賃金が東南アジア諸国連合(ASEAN)では最低レベルにとどまっていることから、海外に移動する労働者が増え続けている。このため、同国の産業には深刻な人手不足がみられる。これまでに外国人の就労規制の緩和や、就労可能な最低年齢の引下げなどが行なわれているが、社会の格差やゆがみも増大しつつある。
 また、ラオスでは、昨年10月末に労働法の大きな改正が行なわれたが、本年からその施行が本格化する。市場経済時代に向け制定された「2006年労働法」(「ラオス人民共和国労働法」)をさらに見直したものだが、そのポイントとして、労働協約に関する規定の新設と、労働組合のない職場への労働者代表の選任義務の明確化がある。労働協約について、今回の改正では、労使で締結ののち、労働監督事務所に提出し、裁判所での登録を受けることなどが規定された。国際労働財団は、2009年以来、同国で労働協約についての教育を進めているが、その役割がさらに重要になるものと思われる。
 労働者代表の選出についての規定も注目される。これまでは「事業所に労働組合がない場合には労働者代表を置く」とのみ規定されていたが、今回は従業員数に対応して選任する義務が明記された(10人以上事業所で1人、50人以上で2人、それ以上では100人ごとに1人追加)。労働法の改正は、このほか、外国人労働者、有期契約、退職手当、変形労働時間、母性保護など多岐にわたる。
 ラオスは、人民革命党(共産党)の一党独裁による社会主義国であるが、ベトナムとの結びつきが強い。1986年、ベトナムが「ドイモイ」(刷新)政策を採用すると、同年、「チンタナカーン・マイ」(新思考)を掲げ、社会主義市場経済路線に転換した。そのなかで、2007年に「労働法」と「労働組合法」が制定されたが、昨年の改正は、ベトナムの労働法と、その2012年改正を参考にしている。
 今回の最低賃金の引上げと労働法の改正は、ASEAN主要国の動きが、後発国であるラオスにも本格的に及んできたものといえる。ラオスは、今年、王政を廃止した社会主義革命から40周年、日本との国交樹立から60周年の節目の年を迎えた。年末のASEAN経済共同体(AEC)設立の動きのなかで、社会と労働の分野を含め、今後の動向が注目される。

*1キープ=0.014円(2015年3月20日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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