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No.303(2015/3/17)
ブラジルの労働事情

 2015年1月23日に開催された中南米チームの労働事情を聴く会で、報告されたブラジルの労働事情について紹介する。ブラジルからはブラジル中央統一労働組合(CUT)、労働組合の力(FS)、ブラジル一般労働組合(UGT)から2名ずつ6人が参加した。

【雇用情勢は改善するが、雇用の不安定化、外注化が進む】
 ブラジルでは、1990年代の10年間で労働市場が構造的に破壊された。この間に失業率は、かつて見られたことのない水準まで上昇し、より不安定な労働形態が大幅に増加し、同時に労働の柔軟化が進み、業務提供契約あるいは有期契約等の導入が行なわれた。賃金も変動報酬の仕組みを通じた所得の柔軟化が進み、実質勤労所得の低下をもたらした。しかし、2003年(失業率は12.32%まで悪化)以降は国の政策の方向性が変えられたことにより、失業率の改善とフォーマル雇用の増加の期間に移行し、2008年11月まで労働市場は極めて好調であった。
 ブラジルの失業率は、2014年11月に4.6%にまで低下した。失業率の低下に最も貢献したのは商業とサービス部門である。もう1つのプラスの要因としては、ブラジルではインフォーマル就業者の割合が非常に高いものの、労働手帳に雇い主の署名を受けたフォーマル雇用が増大していることがある。フォーマルセクターで働いている人の割合は51.1%で、インフォーマルセクターで働いている人たちは48.9%となっている。インフォーマルセクターの労働者は非常に非人間的な条件下で働かざるを得ない。労働時間も法律で定められている時間を超えて1日8時間以上の労働が行なわれることもあり、最低賃金を下回る賃金で労働を強いられている者もいる。そうした労働者の中には、外国からブラジルに働きに来ている移民も含まれている。
 勤労者の所得(実質賃金)は過去12カ月間で3%の伸びを示し、景気を下支えしている。2015年1月1日から適用される最低賃金は、前年比8.8%引き上げられ月額788レアル(約3万606円)となっている。しかし、この水準ではまともな生活はできない。ナショナルセンターが設立した労働組合間社会経済調査・統計所(DIEESE)の試算によれば、4人家族に必要な最低賃金は、3000レアル(約11万6520円)となっている。製造業の労働者の平均的な賃金は、概ね2300(約8万9332円)~2400レアル(約9万3216円)となっている。
 雇用の創出、賃金の引き上げなど、私たちが獲得した成果もあるが、依然として低賃金の職業はまだ多く、労働移動率も高いままである。雇用の不安定化、業務の外注化、労働者の健康に対する悪影響、そして、性、人種、年齢に対する強い差別などの問題がまだ残されている。
 この業務の外注化は、無制限に広がってきた。この結果、労働条件の不安定化、疾病の増大、低賃金などの問題が起きている。外注化された業務で働く労働者の賃金水準は、一般の労働者に比べて27%低い水準となっている。この問題について、我々は、連邦政府、連邦議会に対して、業務の外注化を規制する法案を提出し、成立させることができた。
 一方で、労働検察庁が労働組合の活動に直接介入することが頻繁に起きている。例えば、労働組合が、組合費を労働者から徴収する内容の労働協約を企業内で定めようとすると、そこへ介入してくる。また、組合費の徴収ができたとしても、その徴収された組合費に労働組合がアクセスすることを禁ずる判決を、労働裁判所で出させている。労働検察庁は、労働組合役員の選挙にも直接介入しようとしている。例えば、労働組合幹部の選出を検察側が決めようとする、また、選出された幹部を検察側がノーという介入がなされている。この背景には、組合員の一部が労働協約や労働組合の決定に反対し、労働検察庁に不服の申し立てを行なうことで起こるものである。
 ナショナルセンターはお互いに力をあわせながら、労働者の権利を奪う新しい労働政策に断固反対し、抗議行動を行なっていく。

*1レアル=38.84円(2015年3月12日現在)

ベネズエラの労働事情

 2015年1月23日に開催された中南米チームの労働事情を聴く会で、ベネズエラ労働総同盟(CTV)から報告されたベネズエラの労働事情について紹介する。

【国の監視と規制で、自由な労働組合活動が阻害される】
 ベネズエラは、石油の産出国として有名であるが、石油に次いで力が強い産業は建設業で、建設業の労働組合は、労働組合活動が非常に活発である。
 ベネズエラは、国際条約の批准もされ、様々な法律も整備されてきた。労働者を保護するための法律も制定されてきた。憲法、労働法、女性家族保護法、住宅取得権利法などである。労働者の権利を守るための労働組織法というものがあり、労働者の住宅や賃金、あるいは社会的な保護などが盛り込まれている。また、この法律によって自由に組合活動ができるようになっている。このように様々な法律があるが、それは絵に描いた餅であり、労働者の日常生活には反映されておらず、例えば組合活動の自由を謳歌することはできず、自由な活動を行なおうとすれば、政府から弾圧に遭い、非常に危険なことになる。
 ベネズエラの失業率は2013年では7.5%となっているが、失業者には若年層が多く、15歳から24歳の若者が全失業者の20%を占めている。また、男性の場合は60歳から、女性は55歳から年金が受け取れることになっているにもかかわらず、高齢者世代の失業者も増えている。
 ベネズエラでは、労働組合の結成は業種別に行ない、その業種ごとに三者構成の話し合いによって、賃金などの労働条件が決定される。女性保護法が制定されたため、業種ごとの団体交渉の成果として、労働協約に女性の保護がうたわれるようになった。建設業界の労働協約の中に学費補助があり、これは子供を持つ母親のために支払われるもので、子供が学校で使う筆記具をはじめとする学用品を買うための手当である。しかし、建設業は、非常に労働者の出入りが激しい業界であるため、建設業で働いている間だけ、その手当を受けられることになる。
 労働組合の活動の自由に対して、当局は目を光らせている。例えば、労働組合の幹部の選挙をする場合、まずその労働組合は労働省に申請し、その後、国家選挙管理委員会にも申請を出す必要がある。この2つの国家機関が「よし」と言えば、初めて自分たちの労働組合幹部の選挙が行なわれることになる。
 労働組合として、また、ベネズエラの労働者のためにも、労働組合が労働者を代表する力をつけていかないと、よりよい労働条件、労働者と家族の生活の向上は勝ち取れない。このような行政当局からの監視により、私たちはより草の根のレベルで労働者に接近し、労働組合の重要性を訴えていくということをしなければならない。
 ストライキ権は認められているが、ストライキを行なうためには、政府の強制する手続を踏まなければならない。きちんとした手続きで設立された労働組合であっても、政府の許可なしに工場でストを行なえば、罰則の対象になる。
 我々は、労働組合活動のリーダー育成が必要と考えている。政治、社会の様々な組織と連携をとり、私たちの労働者の生活条件をよくするために貢献してくれる労働組合リーダーの育成をしたいと考えている。また、国際的な連携にも力を入れ、ほかの国々の労働組合の事情についても理解し、我々の活動の参考にしたいと考えている。ベネズエラでは、よく言う言葉があり、つらいとき、逆境でこそ、労働組合リーダーは育つと私たちは考えている。
 今、国にとって必要なものは、民主主義と平和である。この2つの要素がなければ、労働者の安心というものは勝ち取れないと考えている。

ペルーの労働事情

 2015年1月23日に開催された中南米チームの労働事情を聴く会で、ペルー統一労働組合同盟(CUT)から報告されたペルーの労働事情について紹介する。

【政府の失業対策では、若者の雇用の質は悪化】
 ペルーの労働問題では、天然資源の採掘を行ない輸出する産業において、最も問題が大きい。このような産業では、労働者は搾取され、非常に低い賃金で働かざるを得ない。加えて、労働者の環境や安全・衛生の保護も行なわれず、社会保障にも加入できない。また、環境保護も行なわれていないため、作業している場所が有害廃棄物を廃棄する場所となり、環境汚染につながっている。
 2005年から2010年にかけて、ペルー経済は大変好調であったが、雇用状況は良くならず、不安定なインフォーマルセクターで働く労働者が増えるだけであった。また、ラテンアメリカ諸国に共通していると言えるが、失業の問題では若年層の失業が多いことである。
 現在のオジャンタ・ウマラ政権は、「若者労働市場アクセス及び社会保護法」という法律を公布した。この法律は、社会保護法という名前はついているが、若者を保護する内容とはなっていない。この法律によって、若者たちに安定した雇用は提供されず、かえって若者たちが搾取されることになると考えられる。法律では、企業は、税制面で優遇措置を受けることができるが、雇用される若者は、最長3年間の有期雇用契約であり、また、社会保障の保護もないため、労働者を搾取するための法と考えるのが妥当である。このような不安定雇用では、労働組合に加入することができなくなるため、この法律によって労働組合が消滅することも懸念される。
 この法案に対し、CUTはITUUCとともに政府に対して、労働の柔軟化と労働者の権利をはく奪する政策に反対する書簡を送るとともに、労働者の権利保護を目的に国際的な連帯を求めている。

【労働組合の危機的な時期にCUTを結成】
 ペルーでは労働組合運動が弱く、組織率もラテンアメリカの中で最も低い8.65%となっている。労働組合活動が弱体化したのは90年代であり、その原因は、日系の大統領(アルベルト・フジモリ)によるテロ撲滅政策であり、この政策は、労働組合も一緒に撲滅するためのものであった。この結果、労働組合の活動家に世代ギャップが生まれ、ある世代の活動家がいなくなってしまった。しかしながら、CUTは、このような危機的な時代である1993年に誕生したナショナルセンターであり、徐々にではあるが労働組合の活動家を増やしている。
 CUTは、ディーセントワークの実現のために国の政策を変え、貧困対策を行なうことなどについて、社会対話によって合意形成をめざしていくことが重要だと考えている。加えて、男女平等を推進し、意思決定プロセスに女性が加わることを重視している。また、環境の持続的な発展、保護への取り組みも重要であるとともに、リスクマネジメントによる自然災害の予防で、減災をしていくことが必要であると考えている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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