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No.302(2015/3/12)
アルゼンチンの労働事情

 2015年1月23日に開催された中南米チームの労働事情を聴く会で、アルゼンチン労働総同盟(CGT)から報告された、アルゼンチンの労働事情について紹介する。

 アルゼンチンの失業率は7.5%で、未登録労働者の割合は33%となっている。登録労働者とは、会社と雇用契約を結び、社会保険その他の掛け金を会社と折半で払っている労働者のことを指している。未登録労働者は、いわばインフォーマルセクターの労働者と同じ意味となる。CGTは、中小企業等で登録されていない労働者の登録を進めるための運動を行なっている。
 最低賃金は、4716アルゼチンペソ(約6万5505円)で、米ドル換算で550ドルになる。アルゼンチンの最低賃金は、地域の中では一番高い水準となっている。最低賃金は、賃金審議会で決められており、賃金審議会のメンバーには、経営者団体、労働省、我々CGTと、もう一つのナショナルセンターが参加している。
 アルゼンチンでは、10年前から団体交渉が推進されている。団体交渉の強化は、最低賃金の引き上げ、インフォーマルセクターの労働者を減らすための活動でもあり、成果をあげてきた。しかしながら、まだまだ解決すべき問題があり、例えば、質の高い雇用の創出、労働者の減税、医療制度の強化、貧困の問題、インフォーマルセクターの労働問題などで、我々は、このような問題を解決するために様々な努力をしている。その問題を解決するツールとして重要なのが、団体交渉で、この団体交渉をいろいろなレベルで強力に押し進めていくことである。
 団体交渉では、単に賃金の引き上げで購買力を改善するだけではなく、所得の分配の改善、課税の平等、そして、インフォーマルセクターの労働や児童労働の撲滅、さらには、衛生や安全基準の遵守、男女平等の推進などがある。
 我々CGTの活動は、登録労働推進・不正労働予防法の実現である。この新しい法律は、未登録の労働者を雇う企業主やインフォーマル労働を推進するような企業主、さらには、きちんと給料を払わない企業主を登録し、経営者を罰することが盛り込まれている。
 また、私自身が所属する建設業関係の労働組合(UOCRA)が取り組んできた建設業関係の早期退職法では、建設業で働く労働者は55歳で早期退職ができるようになった。ほかの産業の定年は、女性は60歳、男性は65歳(男女とも年金支給開始年齢)となっているが、建設業は肉体労働であり、健康に対する負担も大きいため、早期退職が可能となる成果を獲得した。
 UOCRAでは、労働者のために色々なセーフティネットワークを持っており、そのひとつにテレビ局がある。おそらく、労働組合でテレビ局を持って放送しているのはUOCRAだけだと思う。ナショナルセンターや産別組織、UOCRAがテレビを通じて、労働者だけでなく、社会全体に対して様々な意識向上のための活動を行なっている。
 CGTやUOCRAが、ラテンアメリカだけに限らず、世界に向けて発信している周知活動があり、そのキャンペーンの名称は、「私に5つの指をください」である。このキャンペーンには、もうひとつのナショナルセンター(CTA)も参加している。この運動は、ITUCも進めており、特に若者の人たちのディーセントワークを促進し、労働者の権利の獲得を進めていこうという活動である。

*1アルゼンチンペソ=13.89円(2015年3月10日現在)

チリの労働事情

 2015年1月23日に開催された中南米チームの労働事情を聴く会で、チリ中央統一労働組合(CUT)から報告されたチリの労働事情について紹介する。

【経済発展の陰で、労働者のインフォーマル化が進む】
 チリの1人当たりの国内総生産は、1990年から2012年までの間に4倍になったことから「チリの奇跡」と言われている。2012年にIMFは、1人当たりの国内総生産をもって高所得国に区分した。このことは、国にとって非常に幸せな状況を示すデータであるが、チリの労働者の現実を必ずしも反映していない。
 雇用の質の問題は深刻であり、雇用は益々インフォーマル化、不安定化が進んでいる。最近のデータによれば、失業率は6.1%に達し、特に女性(6.5%)と若者の失業率が高く、20歳~24歳が13.8%、25歳~29歳が9.1%となっている。
 失業率だけではなく、その就業の質も問題が多い。社会保険や医療保険、失業保険のある無期限雇用契約を結んでいる労働者の割合は、給与所得者の内56.2%で、この人たちが正規雇用となる。また、就業者の内、23.7%が直接雇用の給与所得者で、40.2%の労働者は、外部雇用契約者(下請、派遣等
 )で不安定で雇用保証の無い仕事であり、30.8%が自営業となる。

【チリ労働組合の現状】
 チリには、2つの労働法があり、1つは、公務員の労働者を管轄する行政内規で、もう1つは、民間の労働者を管轄する労働法である。しかし、チリの労働者の40%は、どちらの法律にも保護の対象とはなっていないのが現実である。このような労働者は、労働組合の結成、団体交渉、ストライキの権利も無い状態にある。
 最低賃金が法律によって定められており、月額22万5000ペソ(CLP)(約4万3650円)で、米ドル換算すると367ドル相当となる。若者の中には、最低賃金を下回る労働者も多く、最低賃金の改善は、CUTにとって主要なテーマであり、これまで政府と交渉を重ねてきた。
 労働者の状況、労働環境は、ますます不安定になってきており、さらに、労働条件も劣悪化している。こうした中で、組織率は14.8%という非常に低い数字になっている。労働組合に参加する人々は、もっぱら大企業の人たちであるが、その大企業も次々に縮小化している事情から、労働組合加盟率も縮小化しつつある。労働組合に参加していない労働者の人たちは、その大多数が中小企業の労働者、従業員の人たちで、そういった人たちは全労働者の80%を占めている。このような事情から、労働組合が存在する企業は、全体の7.8%に過ぎない。また、労働組合が存在していたとしても、その68%はいずれのナショナルセンターにも所属していないのが実態である。
 2013年に、CUTは、大統領選挙のための政治プラットフォームを作成した。そのうち労働に関する重要なテーマは3つある。
 1つ目は、新しい労働制度をつくる。これは独裁時代のピノチェト将軍(大統領)の時代につくられた労働法を新しいものに変えようということである。
 2つ目は、新しい社会保障制度をつくること。そして、年金制度を改革し、年金額を策定するために三者構成の審議会を設置すること。
 3つ目の重要な点は、税制改革である。この税制改革は一定の進展があり、政府内で承認を得ることができ、改革が進んでいる。改革の目玉は、高額所得者の税率を高くすることと、法人税も引き上げることである。
 2015年には、労働法の改正が議論されていくことになっており、我々も歓迎している。

*1チリペソ=0.194円(2015年3月10日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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