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No.297(2015/2/18)
ベトナムの最低賃金と労使対話

 ベトナム労使関係・労働政策セミナーが1月14日から2日間の日程で、ホーチミン市で開かれ、JILAFから2人が参加した。セミナーの前には、日系企業、日本領事館、JETRO等を訪問し、ベトナムの社会・労働事情や労使関係について聞く機会を得た。また、このセミナーには、ベトナム労働総同盟(VGCL)から70人が参加したほか、ベトナム商工会議所(VCCI)の代表も参加し、日系企業は総じて法令を守って企業行動をしていることが報告された。訪問した日系企業からも、法令遵守は当然のことであることと、労使関係では、労使協議制の充実をはかっていきたいとの発言がなされた。
 セミナーを通じて得た労働事情について、紹介する。

【最低賃金の引き上げ】
 ベトナム経済は、2012年に実質5.2%、2013年も同じく5.4%成長となったが、2011年、2012年の6%台の成長に比べると、景気はまだ回復していないという考え方が一般的である。このような経済成長を背景に、一人当たりGDPは、2007年には920ドル(約10万8376円)であったものが、2013年には倍以上に伸び1902ドル(約22万4056円)となっている。ベトナムの一人当たりGDPは、メコン経済圏の中では、タイの5647ドル(約66万5217円)には及ばないものの、カンボジア、ラオス、ミャンマーよりも高い位置にある。
 ベトナムの最低賃金は、最高で14.8%引き上げられ、2015年1月1日から実施された。地域別に決定される最低賃金(月額)は、別表の通りである。ベトナムの最低賃金の決定方法は、3年前から変更され、それまでは政府の権限で決定されていたものが、国家賃金評議会(政労使の3者構成で、各5名)の審議を通して決定されることになった。今回の改正で労働側は340万ドン(地域Ⅰ)を主張したが、その背景には、現在の最低賃金では、生活に必要な資金の65%にすぎないとの調査結果も出ているためである。別表の最低賃金は、職業訓練を受けていない労働者に適用されるもので、訓練を受けた労働者(有資格者)は、この最低賃金に7%を上乗せした賃金が適用される。VGCLによれば、職業訓練を受けた労働者の割合は徐々に増え、現在は労働者全体の約35%に達する。

<別 表>
地   域 2015年 2014年 上昇率
地  域 I
(ハノイ、ホーチーミン市内)

310万ドン
(約148ドル)
(約1万7434円)
270万ドン
(約129ドル)
(約1万5196円)
14.8%

地  域 II
(ハノイ、ホーチーミン周辺)

275万ドン
(約131ドル)
(約1万5432円)
240万ドン
(約114ドル)
(約1万3429円)
14.6%

地  域 III
(地方都市)

240万ドン
(約114ドル)
(約1万3429円)
210万ドン
(約100ドル)
(約1万1780円)
14.3%

地  域 IV
(I~III以外の地域)

215万ドン
(約102ドル)
(約1万2016円)
190万ドン
(約90ドル)
(約1万602円)
13.2%

【労使による職場対話】
 ベトナム労働法では、労使間で情報を共有し、理解を深めることを目的に職場対話について定めている。対話の内容は、生産・経営の状況、労働条件、使用者側に対する意見・要望、労働者側に対する意見・要望となっている。対話は3ヵ月ごとに1回開催する必要がある。
 日系企業の組合代表から対話に関する事例報告があり、3ヵ月ごとに開催する対話は、労使合わせて15人以内で行い、年に1回200人程度の労働者(代表として選ばれた労働者)が参加する対話を行なっている。この対話は、労働者会議と呼ばれ、経営側は社長も出席(義務)して対話に参加する。対話は団体交渉とは異なるため、ここでは労使合意をする必要はない。組合では、悪い影響が出ることを懸念して意見が出にくくなることもあるため、メールボックスを設置して労働者の声を吸い上げるよう努めている。労働者の主な意見は、賃金、一時金、休暇のほか、給食、福利厚生、休憩時間等となっている。

【団体交渉と労働協約の締結】
 団体交渉は、労働協約を締結するための根拠となる新たな労働条件を確立すること等を目的に行なわれ、各当事者は団体交渉要求権を有し、要求を受けた当事者は交渉を拒否することができない。また、その内容は、賃金、労働時間、雇用保証、安全・衛生となっており、労使で合意した内容は労働協約となる。有効期間は1年~3年で、労働協約の内容は、法に違反してはならず、法の基準を上回るものでなければならないとされている。
 日本と大きく違うのは、労働協約は、締結日より10日以内に、国家管理機関(企業別労働組合の場合)または、労働傷病兵社会事業省(産業別労働組合の場合)に送付する必要があることである。

*1ドル=117.80円(2015年1月26日現在)
*1ドン=0.0055円(2015年1月26日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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