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No.290(2015/1/16)
コロンビアの和平交渉、中断の危機を回避

 コロンビアでは、50年にわたる内戦によって20万人以上の生命が犠牲になり、反乱軍および右翼民兵組織から敵視されている労働組合の幹部数百人も標的として誘拐、殺害され、国際労働機関(ILO)は同国を労働組合にとって、世界最悪の国と指定している。
 そのコロンビアで、米国で訓練されたコロンビア軍の成果もあって、2年前に和平機運が高まり、キューバのハバナ市で和平交渉が行なわれてきたが、11月16日にコロンビア最大のゲリラ組織であるコロンビア革命軍(FARC)が、ジャングル地帯で軍最高指導者のアルツアーテ将軍他数人を捕虜としたことから、サントス大統領は交渉の中断を決定した。しかし3日後の19日に至り、キューバとノルウエーによる仲介で、釈放への同意が成立し、交渉再開の見通しが立った。
 ただ、FARCは、和平交渉中にも公共施設への攻撃や民間人の誘拐を繰り返しており、ウリベ前大統領および政権内では、反乱軍が時間を稼ぎながら勢力を再編成し、麻薬栽培による資金源を整えようとしているとの警戒心が強い。
 和平交渉は1999年にも行われたが2002年に上院議員が誘拐されて中断した経緯がある。反乱軍はその間、休戦地帯を戦闘員の訓練などに使用して兵力を再編成し、コカイン栽培と民間人の誘拐金により資金源を充実させた。
 現在の和平交渉では農地改革、FARCの政治参加、違法薬物対策などに合意ができたが、反乱軍の武装解除、大量虐殺事件や麻薬取引に対する処罰には、厳しさを増す世論の批判もあり結論が出ていない。

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メルマガNo.217(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/217.html

米国の雇用と賃金に上昇の兆し

 米国で5年前の景気後退時から待望された雇用と賃金の上昇に、持続的な兆候が出ている。
 米労働省雇用統計で、非農業部門の雇用者数の伸びが20万人以上であれば、米景気の堅調ぶりを示す材料となるといわれているが、12月5日発表によると、11月の雇用は市場の予測を上回る前月比32万1000人の増加を記録して、10ヶ月連続で20万人の純増を示した。同時に、顕著な雇用の増加に支えられて平均時間賃金は予測された0.2%に倍増する0.4%を示し、9月の0%、10月の0.1%に比べて大きな違いを見せている。他方失業率は前月と同じ5.8%で推移した。
 さらに1月9日発表の12月統計結果でも25万2000人の増加となり、2014年は1990年代後半以降、雇用者数の増加が最高となった。
 他方、労働人口に占める雇用者比率は相変わらず低率に推移しており、職探しを諦めている潜在失業者の存在、そして690万人のパートタイム労働者を計算すると、広義の失業率は10月の11.4%からわずかに減少の11.3%であった。
 こうした中で、過去12ヶ月間の賃金は2.1%増加で推移しており、原油安による雇用を押し下げる影響は軽微とみられ、逆に個人消費を喚起し、労働市場の改善に寄与するとみられている。
 多くの経済学者は雇用と賃金に持続的な上昇の兆しが出てきたと見ているが、本格的な実質賃金の上昇を見るには失業率がさらに低下して、5%以下になる必要があると主張している。
 こうした経済情勢の中で、連邦準備理事会(FRB)による金利引き上げの予測が強まっているが、大方は引き上げが今年中盤と見ており、物価上昇を招来しないで失業率を如何に低下させてゆくか、これからの経済運営の大きな課題となる。

米フォルクスワーゲン・チャタヌガ工場労働組合組織化をめぐる動向

 全米自動車労働組合(UAW)による労働組合結成の取り組みと、労働組合結成を阻止しようとするグループがしのぎを削っているフォルクスワーゲン(VW)チャタヌガ工場において、昨年2月にUAWの労働組合結成を失敗に終わらせた反UAW組織が、“アメリカン従業員協議会(ACE)”という組織を結成した。
 その委員長がショーン・モス氏(46歳)だが、彼はデトロイトメーカー破綻の一因となったUAWのやり方には反対しながらも、労働者の発言権は必要だと主張している。
 他方、VW社はCOE(Community Organization Engagement=(共同体組織契約)と称する方針を発表し、1500人の工場労働者の声を代表する組織を15%、30%、45%の代表に別けて、会社との定期協議などを行なう制度を発表した。そこでは給与や諸手当、安全問題などが話し合われるが、強制力はなく、協約交渉も行なわれない。
 他方、協約交渉を重視するUAWは、50%以上の賛成署名を集めたと主張しつつ、労働組合承認を求めているが、一方のACEもかなりの署名を集めたとしている。ACEは一定の労働者の声を代表しているとしているが、UAWは交渉力のないACEはまやかしの組織であると非難し、労働者の声を反映させるためにはストライキ権も必要だと主張している。いずれにしても、VW社は特定グループを相手として“労働者協議会”の設立に向けて動き出すと思われる。
 労働者協議会は、中国を除く世界各地のVW社に存在する組織であり、労働組合と並行して選挙により選ばれ、健康や安全、生産スケジュール、労働時間などいくつかの委員会により運営され、監査役会にも代表を送る強力組織である。モス氏もそのことに魅力を感じ「毎日の労働の中で改善すべき点は不断に出てくる。労働者の声はどうしても必要だ」と言う。
 こうした声があるのに、どうして労働者協議会が暗礁に乗り上げたのか。ドイツVW本社監査役のユルゲン・スタンプ氏は不思議に思う。
 スタンプ監査役は労働者出身として、VW監査役会10人に名を連ねており、4年前にチャタヌガ工場が開設された時、労働者協議会はすぐにでも動き出すと想定していた。しかし、米国労働関係法には労働者協議会設立に労働組合としての承認が必要とされることを知り、上部団体のIGメタル労働組合とも協力して、UAWとの連携に動き出した。
 その際VW社からはさしたる抵抗もなく、2013年にUAWが過半数署名を集めてからは労働組合承認を待つだけかと思われたときに、米国の保守勢力が突然台頭した。
 テネシー州のハスラム知事は、UAWがテネシーに橋頭保を築くことは州の評判を損なうとして、3億ドル(約356億円)の補助金撤回を示唆し、会社は単なる承認ではなく投票実施に変更した。それでもVW世界労働者協議会は事態を楽観視していたが、チャタヌガ工場の前社長および“税制改革グループ”などUAW反対派による攻撃が激化し、スタンプ氏も、ウエブ上でテネシーを破壊する癌と非難される状況になった。
 さらにUAW承認投票日直前に至り、共和党コーカー上院議員が「UAW否決を条件に、チャタヌガ工場存続に必要な新型SUV生産が承認されるとの確約を得た」と発言して、当時の年間生産13万5000台では存続に必要な20万台に不足するとして、雇用に不安を持っていた従業員に動揺を与え、結果は否決712対承認626というUAWの敗北に終わった。
 スタンプ氏は「民主主義のアメリカでこのような結果が出るとは思っても見なかった。北朝鮮にでもいるかと思うほどだ」と語る。
 一方、モス氏は「労働組合みんなが悪いわけではないが、UAWのやり方のまずさ、違法行為、縁者びいきなどはみんなが知っている。組合員がこれほど減少したのに、雇用を保障できると言えるのか。二重格差賃金のUAWに比べて、VWの待遇のほうが良い」と指摘する。
 こうした事態の中でUAWは次の再投票までに1年間の猶予を置かなければならないが、VW社はそれまで待っていられない。
 UAWは、組合員だけのローカル組織を設立しながら、COE実施の中で、一定の地歩を固め、交渉相手としての会社承認を目指している。他方、COEはACEにも労使交渉相手、ないし労働者協議会メンバーとなる可能性を残しており、世界の他工場に見られる複数の労働組合による代表性もあり得る。

*1ドル=118.57円(2015年1月13日現在)

過去の関連記事
メルマガNo.233(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2014/233.html
メルマガNo.230(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2014/230.html
メルマガNo.206(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/206.html

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