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No.286(2014/12/24)
ケニアの労働事情

 11月14日に行なわれたアフリカチームの労働事情を聴く会で、ケニア労働組合中央組織(COTU)のから報告された労働事情について紹介する。 

【治安、物価、インフォーマル化の拡大など問題も多い】
 ケニアの人口は、4318万人、人口の51%が未成年者、成人が49%という構成になっている。ケニアの経済は、農業(コーヒー、紅茶、園芸作物等)が基盤となっているが、最近、大量の埋蔵量を誇る石油、ガス資源が発見され、経済成長に寄与すると見込まれている。ただし、石油とガスの商業生産は、あと3年~4年待たないと始まらない見通しとなっている。
 現在、問題となっているのが物価の上昇である。VAT(付加価値税)に関する改正法が2013年9月から施行され、これまで非課税であった400品目にも課税(税率16%)される品目が増え、非課税品目は100品目程度に減少した。電力についても、改正前に12%であった税率が16%に引き上げられた。今回の改正で、新たに課税対象となったのは、食料品の加工ミルク、調理用のガス、新聞など生活必需品が含まれている。また、非課税品目の価格も上がっており、便乗値上げも見られる。インフレによって国民生活は、非常に厳しい状況に置かれていることから、国民からの不満、批判も強い。
 昨年、ウエストゲートモールというショッピングセンターで、テロリストによる大規模な攻撃があり、この事件で69人の人命が失われた。この事件の背景には、ケニアの隣国であるソマリアの暫定政府を支援するために、ケニア軍を派遣したことに対する報復として起きたものである。現在も時々、爆弾テロ事件が起きている。ウエストゲートモールの大規模なテロ事件は、ケニアの市民、労働者にも大きな傷跡を残した。
 ILOが提唱しているディーセントワークについて、ケニアにおいて現在重視している2つのポイントがある。この2つを確実に実行することによって、ディーセントワークの実現がはかられる。一つ目は、社会的保護の提供を確実にすることで、貧困を撲滅することである。
 2つ目のポイントは、ILOの中核的労働基準である8つ条約のうち7つを既に批准していることから、残りの条約(第87号条約「結社の自由・団結権保護」)についても早期に批准させることである。2010年に公布された新しい憲法の特徴の一つに、労働者の保護と結社の自由が謳われている。新憲法には、アファーマティブアクション(※)が謳われているにもかかわらず、労働組合における女性の代表は少数で、足りない状態である。
 最低賃金は月額167ドル(約1万9823円)となっている。ただし、組織化されているところでは、団体交渉等を通じて最低賃金額を上回る水準を目指して交渉している。組合がないところでは、最低限の保障として最低賃金の水準となっている。
 現在、ケニアにおける労働運動が直面している課題は、まず第1に、40%という高い失業率がある。加えて、貧困レベルの生活をしている人も46%にまで増えている。さらには治安の面で不安を抱えている。
 インフォーマルセクターが拡大していることから、労働組合の組織率が低下している。働き方の問題としては、短期の有期雇用契約で働かざるを得ない労働者が増えていることである。このような不安定雇用と低賃金労働しか雇用の場ないという問題がある。社会保障のカバレッジが不十分であるとともに、レベルが低いことが問題である。退職後の十分な保障が老後の生活において受けられない問題がある。
 グローバル化により、多くの多国籍企業が輸出加工区域に進出しているが、そこでは労働法が軽んじられていることも問題である。その一方で、電力料金などの生産コストが高いために、企業が国外に逃避している。現政権は、今年の年末までに地熱発電を活用することで、現在の電気代よりも4割価格に引き下げるための努力をしている。
 最後に、政治不安の問題がある。2009年に総選挙のときには、さまざまな暴力的な事件が各地で頻発し、大きな混乱となった。当時の大統領と副大統領は、そのときの彼らの行動が犯罪にあたるのかあたらないのか、国際刑事裁判所で争われている。このような状況のため、残念ながら投資や貿易などに大きな影響が出ている。このことは、地元の労働者にも大きな影響となって表れている。

(※)民族、人種、女性など差別を受けたり、不利な状況に置かれたりしている現状を、是正するための改善措置。

*1ドル=118.72円(2014年12月18日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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