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No.284(2014/12/11)
デトロイト市の財政再建計画承認、年金支払いに不安

 自動車工場の閉鎖、住民の市外移住による税収の大幅減、連邦政府からの補助金削減などが重なり、180億ドル(約2兆1402億円)に上る米国史上過去最大の規模の財政破綻に陥り、破産法申請に至ったデトロイト市で、策定された財政再建計画が連邦裁判所により承認され、破産法の管理下から脱却し、財政再建が始まることになった。
 再建計画は市債券の償還を最高14%にまで減額し、市職員の年金を4.5%削減するとともに、医療保険の患者負担を増額するなどして債務を70億ドル(約8323億円)減額し、警察や消防を含む市行政の縮小を図る。一方、今後10年間に17億ドル(約2021億円)を確保して老朽建物を取り壊し、新規消防車や救急車を購入、コンピューターシステムを更新し、投資の勧誘、住民の引き留めと増加などに取り組むことにしている。
 ゴッホやピカソの名画などを所蔵している市営のデトロイト美術館は、一時売却も検討されたが、国内外からの寄付で存続することになった。日本企業の自動車大手や部品メーカー、商社など21社が、財政再建のため合計216万7000ドル(約2億5765万円)の寄付を表明している。その寄付金は、4分の3をデトロイト市の再建向け献金、残りは美術館が日本の作品の展示を整備するのに使われる予定だ。
 しかし、3万2000人の年金受給者に対する年間5億ドル(約595億円)の年金額が、市の所得税収入の2倍に達する規模であることと、運用目標6.75%が余りにも高すぎるとする懸念が強く残っている。
 デトロイト市はこれからも数年、小規模ながら年金基金への納入を続け将来はその額を増やすとしているが、一般職員の年金基金の現状は満額の74%であり2043年には65%に低下、警察官・消防士は87%が78%に低下すると見られている。そのあとは市による納入を飛躍的に増大して2053年までには100%に戻していく計画である。しかしそれは市の財政が充分に回復することが前提である。
 2033年迄は州政府や美術館などが献金を続けるが、その間に既存の年金受給者の数は減少に転じる。一方現在の職員は既に確定拠出に切り替えている。こうした保険数理上の算定が再建計画の年金支払いの基礎になっているが、裁判所のローズ判事は「公正で実現可能な計画。美術品を売れば、デトロイトの未来を奪うことになった。市は正しい決定をした」と述べたものの、不安を隠していない。

*1ドル=118.90円(2014年12月1日現在)

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