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No.283(2014/12/9)
マレーシアとフィリピンの労働事情

10月24日に行なわれたアジア・太平洋チームの労働事情を聴く会から、マレーシアとフィリピンの労働事情について報告する。マレーシア労働組合会議(MTUC)から2人が参加、フィリピン労働組合会議(TUCP)からは1人が参加した。

【マレーシアの労働事情】
 マレーシアの人口は、約3000万人で、その人種構成は、マレー系が64%、中華系24%、インド系が8%となっている。労働人口は1400万人で、このうち完全雇用(正規雇用)は280万人にすぎない。また、外国人労働者が550万人と推計されており、外国人労働者は労働人口の約40%を占めている。外国人労働者のうち合法的な就労者は270万人、不法就労者が280万人と言われている。非常に多くの外国人労働者が雇用されているが、働く場所は主として労働集約型、または3D型(日本の3Kの職場)と呼ばれる職場で雇用されている。外国人労働者には結核などの疾病が見られる場合もある。また、労働災害に巻き込まれる者が増加している。MTUCでは、外国人労働者を組織化する上で9つの大きな課題を抱えているが、外国人労働者の組織化に向けた全国規模の運動を展開し、主要な3地域において、非常勤の労働組合幹部による組織化を進めている。
 マレーシアの労使は、これまで友好的な関係を保ってきた。これまで20年以上にわたり大きな労働争議はない。しかし、使用者は、労働組合を認めて交渉するよりも、労働者との紛争を訴訟で解決する傾向が強くなっている。また、使用者は、経費削減のために事務管理業務を外部委託する傾向も見られるとともに、外国人労働者を好んで雇う。政府もILOの中核的条約、第87号条約(結社の自由、団結権)の批准を拒否している。
 現在の労働組合数は700以上、組合員数は90万人以上。民間部門の組合数は462組合、政府部門の組合数は144組合となっている。地方政府、旧公営公社に当たる企業の労働組合が100組合である。産業別労働組合は多くはなく、政府は企業別組合を推進している。
 我々は、産業別労働組合の結成を促すために、「結社の自由委員会」という名称の委員会を結成し、マレーシア政府に対してILO第87号条約の批准を強く要請している。中核的条約の批准を政府が否定しているが、MTUCは全労働組合に対して、第87号条約違反や異議申し立てなどがあれば、ILO及び政府に報告するために、MTUCに通知・送付することを呼びかけている。

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【フィリピンの労働事情】
 フィリピン(レイテ郡を除く)15歳以上の人口は6407万人で、このうち労働人口は4123万人となっている。レイテ島は、台風ハイヤンによって甚大な被害を受けたことからこの統計から除外されている。
 この労働人口の中には、雇用者(就業者、以下同じ)と失業者が含まれており、雇用者の割合は93.3%となっている。雇用者を産業別に見ると、サービス産業が54%、農業部門が30.1%、工業部門が15.9%となっている。サービスセクターの中を見ると、特に多いのが卸・小売、自動車・バイク修理の従事者で、全体の34.7%を占めている。
 失業率は6.7%となっているが、このうち15~24歳層の失業率は49.3%、25~34歳層では30.8%となるなど、若年層で高い。また、生活のため、今の仕事で労働時間を増やしたいと思っている不完全雇用者は、2014年7月に705万人、雇用者(就業者)の18.3%にあたる。不完全雇用率は、昨年は19.2%であったので0.9ポイント下がった。このように失業率、不完全雇用が高いことは我々にとって大きな問題であり、組織化にも影響している。
 仕事の形態別で見ると、肉体労働者と未熟練労働者が多く、全体の31.6%になっている。雇用者(就業者)のうち、賃金及び給与所得者の割合(雇用者)は58.4%で、多くの労働者が民間部門で働いている。また、雇用者のうち62.7%がフルタイムの労働者、36.2%がパートタイム労働者である。
 次にインフォーマルセクターで働いている人は、1530万人(2011年)で、全雇用者の41.1%となっている。このうち、従業員のいない自営業が1100万人、無給の家族労働者が430万人である。
 フィリピンの最低賃金は、地域別、大産業別に設定されている。しかし、民間企業で働く労働者のうち、半数近い46.1%の労働者は最低賃金以下である。最低賃金が支払われている者は4分の1の24.6%、最低賃金以上の労働者は29.4%となっている。このため、多くの労働者とその家族は、尊厳をもって生活できるような賃金水準とはなっていないのが実態である。このように、最低賃金以下の労働者が多いのも、高い失業率と不安定雇用率が影響している。
 次に、ILOの中核的労働基準(結社の自由と団体交渉)に関する問題が起きている。問題は2つあり、1つは、組織化について会社側が介入し、妨害をすること、2つ目は国内法を、実行すべき労働省や地方政府の役人が理解していないことである。法律では、労働組合の組織化に対して、会社が介入することを明確に禁止している。このほかにも、従業員側、労働者側の問題ではあるが、自分たちの権利を認識していないことがある。
 組織化に対する会社の介入とは、労働組合リーダーの解雇、または労働組合リーダーを昇進等で懐柔する、労働組合リーダーに対する訴訟(ねつ造によることもある)等がある。また、会社は知識のない地方役人と共謀(汚職の疑いもある)して、労働組合の結成を妨害してくることである。

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