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No.281(2014/12/2)
フィジーの労働事情

 10月24日に行なわれたアジア・太平洋チームの労働事情を聴く会から、フィジーの労働事情について報告する。フィジー労働組合会議から1人が参加した。

【景気低迷、失業率上昇の中で貧困ラインを下回る労働者】
 フィジーの労働人口の大半は、インフォーマルセクターである衣料、小売、漁業で働いているが、その労働条件はよくない。失業率は、景気低迷と政治問題のために過去7年間上昇が続いており、現在の失業率は8.6%(2010年は7%)となっている。我々は、実際の失業率は、これよりもはるかに高い15%ぐらいになると考えている。失業率には、日雇い労働者や臨時雇いなどの不完全雇用は考慮されていない。また、失業者の中には、最も生産性の高い19歳~30歳層が多く含まれている。
 フィジーの就職危機は引き続き深刻化している。2012年には、職業学校の新卒者9523人が就職できず失業状態となったが、この無職の新卒者のうち858人は学位取得者であった。このような状態は2006年以降毎年続いている。国内で多数の新卒者が失業している状態は、十分な雇用の場がないことに原因がある。この背景には、過去数年間、フィジー経済が低迷しているため、雇用創出ができないことにある。フィジーは、教育を受けた多数の若者を活用するために労働需要の拡大と、中小企業の発展を促していく必要がある。
 政府は失業率低下に向けた解決策を見出そうと努め、労働省と全国雇用センターはさまざまな積極的措置を策定してきた。しかし、全国雇用センター(NEC)は雇用を創出することはできず、結果的に失業率は上昇している。また、政府は、失業中のフィジー国民のために外国で職を探す担い手となる職業紹介事業者を厳しく監督してきたが、成果は上がっていない。
 フィジーの最低賃金は1時間当たり2ドル(約235円)となっているが、この金額は4人家族の貧困ラインである週230ドル(約2万7037円)を大きく下回っている。また、労働法の執行状況も極めて不十分、お粗末な状態にある。
 三者代表で構成されている賃金審議会は、10の産業(道路・輸送、印刷、卸売・小売、ホテル・飲食、衣料、伐木・製材、建築、土木・電気、製造、採鉱・採石、保安サービス=発言のママ)から選出され、賃金や労働の最低条件に関して、所轄の労働省に対して勧告を行なっている。しかし、実際の賃上げは、賃金審議会で合意された水準に及ばないケースがほとんどである。全ての産業のほとんどの労働者の収入と生活は、貧困ラインを下回っている。
 軍事政権は、55歳定年制を導入したため、労働者が55歳で職を失う事態となっている。フィジーには定年退職金(FNPF)があるが、これ以外の失業手当や老齢年金はなく、老後の生活にとって大きな問題である。
 フィジーの主要な労働法令は雇用関係法であるが、このほかにも、さまざまな政令が労働組合に参加する労働者に影響を与えている。例えば、公共部門では、公務員から組合費を直接控除(組合費の天引き)し組合に直接支払う制度は廃止された。政府は公共部門の労働組合を認めておらず、公共部門における組合と政府との団体交渉は存在せず、労働者との個別契約しかない。同じことは、すべての国有企業ならびに「基幹産業令」(Essential Industries Decree: ENI)に当てはまる他の民間企業にも該当する。ENIは団体交渉と結社の自由を認めていない。
 使用者側が労働組合ではなく個別に交渉を行なうため、若い組合員の組織化が困難となっている。いかに労働者を組織して組合に加入させるかも、現在の労働組合の課題である。また、フィジーでは女性の労働組合への参加も非常に少なく、指導的地位にある女性はごくわずかである。
 フィジーは、2006年から軍事政権が続いており、9月に総選挙が行なわれた。しかし、我々は、この選挙は自由、公正に行なわれたとは考えていない。今はこの選挙結果が経済にどのような効果をもたらすのか、静観しているところである。

(JILAF注)
 外務大臣談話では、9月17日に行なわれたフィジーの総選挙について、平和裡に実施されたことを歓迎するとともに、フィジーにおける民主主義の定着に向けた重要な一歩であると評価し、今後も民主化促進に向けた取組を支援するとしている。日本は、多国籍選挙監視団(MOG)へ要員を派遣し,選挙監視活動を行なってきた。

2006年12月 バイニマラマ国軍司令官による無血クーデター、セニランガカリを暫定首相に任命
2007年1月 セニランガカリ暫定首相辞任、バイニマラマ司令官が暫定首相に就任、暫定内閣が発足
2011年2月 国名を「フィジー共和国」に変更
2013年9月 新憲法公布
2014年9月 総選挙実施

*1ドル=117.55円(2014年11月27日現在)

民主化への一歩となるか、フィジーで総選挙実施

 南太平洋の島嶼国フィジーで9月17日、2006年の軍事クーデター以降初めての総選挙が実施され、2006年のクーデターの指導者でバイニマラマ暫定首相率いる政党フィジーファーストが大勝し、バイニマラマ新内閣が成立した。18歳以上の有権者の投票率は83.97%だった。
 日本を含む100人以上の多国籍選挙監視団は、選挙は公正に行なわれたと総括しているが、厳しい抑圧を受けている労働組合は深刻な雇用問題に直面している中で「選挙の結果が経済にどのような影響をあたえるか静観する」としている。2006年以降の軍事政権に対して欧米からの制裁も受け経済も低迷している。
 公式発表の8.6%といわれる失業率は、実際は15%であるといわれ深刻な状況にあり、ほとんどの労働者の・収入は貧困ライン以下であるともいわれる。そのため海外の労働市場(ドバイやイラクなど中東諸国のほか、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカなど)や、海外雇用サービスなどを通じて仕事を求めている。
 フィジーはILOの8つの中核的国際的労働基準すべてを批准している。その中には結社の自由を及び団体交渉も含まれているが、労働組合は反労働者・労働組合的な条例の改正を要求して、ILOにも提訴してきた。2012年9月にはILOミッションが派遣されたが、軍事政権の横やりによって目的を達成できないまま引揚げ、その事態は世界の関係者に衝撃を与えたが、今回の総選挙を受け10月初旬にようやくフィジー政府はILOの直接接触ミッションの入国を認めた。 
 フィジーは「南太平洋の十字路」に位置し、フィジー労働組合会議(FTUC)はこの地域で中心的な役割を果たしている。この地域の国際労働組合総連合会(ITUC)には、FTUCのほかにキリバス労働組合会議(KTUC)、クック諸島労働組合(CIWA)、サモア労働組合会議(STUC)、仏領ポリネシアのA Tia I Mua労働組合連合(TIA)が加盟している。フィジー共和国の民主化への動向は、周辺国をはじめ世界の労働運動も注目している。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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