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No.268(2014/10/2)
米で残業代未払いの請求訴訟が記録的に増加

 6月24日に日本政府が発表した「『日本再興戦略』改訂2014」の中に、アメリカで実施されている「ホワイトカラー・エグゼンプション」(=ホワイトカラー労働者を労働時間規制から除外するという意味)と同じ内容である「多様な正社員制度の普及・拡大やフレックスタイム制度の見直しに加えて、健康確保や仕事と生活の調和を図りつつ、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応える、新たな労働時間制度を創設することとした」と書かれているが、米国各地では、残業代未払いの訴訟が起きており、連邦政府や州政府関係者も、そうした事例が記録的に増加していると指摘している。
 ニューヨーク州の司法長官は、過去3年間に残業代支払い滞納1700万ドル(約18億6031万円)を摘発して支払いを命令したが、そのほかの具体的な事例としては、ウォルマート関連企業のシュナイダー運輸会社の数百人による集団訴訟があり、訴訟金額は2100万ドル(約22億9803万円)に達する。そこでは労働組合を作らせず、極限までコスト削減を追求するウォルマートの企業姿勢の影響がみられ、週70時間の労働でも残業代が支払われたことがないという。
 また大手の運輸業者、FEDEXでもトラック運転手に1日10時間労働が命じられているが、運転手は独立契約業者として残業代は支払われず、訴訟を受けた裁判所がこれを違法としたが、会社は控訴した。カリフォルニア州の清掃会社では、スーパーマーケット17店舗の清掃に41人の労働者を使用しているが、白紙のタイムカードに署名させ、残業代をごまかしたとして33万ドル(約3611万円)の訴訟が起こされている。
 日本において、店長が管理監督者にあたらないとの判決が下され、米国でも低賃金に抗議して、時給15ドル(約1641円)要求が起きているマクドナルドでも、残業代はしばしば削られており、7件の訴訟が起きている。テネシー州のあるホテルでは、9人の清掃労働者が、1カ月の給与遅配に抗議してホテル前でデモをしたが、これは下請け業者がホテルから受け取った代金を、賃金支払いに回さなかったためで、最終的にはホテルが遅配分1万2000ドル(約131万3160円)を支払った。
 こうした残業代や賃金の未払いは、厳しい企業競争の中でフランチャイズ店の展開、下請け業者、期間労働者の採用という労働環境の中で起きているが、トップに立つ親企業はそうした事実を知らなかったとして、責任を逃れようとするケースが多い。

*1ドル=109.43円(2014年9月30日現在)

アップル社中国下請け工場の劣悪労働条件摘発

 アップル社の中国の下請け工場における劣悪な労働条件を、ニューヨークの労働者保護団体のチャイナ・レイバー・ウオッチ(CLW)と、ワシントンの環境保護団体グリーン・アメリカが摘発した。
 この下請け工場は、山蘇州省宿遷市にあるキャッチャー・テクノロジー社で、金属ケースを研磨する際に、火災を誘発する危険のある化学薬品が使っており、上記2団体が過去にもその危険を指摘したにもかかわらず改善されていないという。この種の事故については、アップル社の工場で2011年に2件の爆発事故が起きている。また、この工場からの産業廃棄物の投棄による、河川の汚染も問題とされている。
 この工場へは、CLWが秘密裏に調査員を従業員として潜入させて100人以上の社員から聞き取り調査も行なったが、ここでは労働組合もなく、16歳―18歳の学生が毎日10時間を超える労働法違反を強いられ、アップルが決めた週60時間も超えている。
 中国では、学生が、大学が認めた企業で実際の仕事に参加するインターンシップ制を導入している職業学校や大学が多数あるが、実際はインターンシップの美名のもとに、生産ラインでの強制労働を強いられる実態が問題視されていた。
 2013年のアップル調査員による成都市の報告書では、「2011年9月以来、成都市ではインターン学生が就労した形跡はない」とされているが、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2011年9月時点で、同工場の従業員の実に1割以上にあたる7000人の学生が働いていたと述べている。
 スマホやコンピュターなどのIT産業においては、安全問題や労働条件に厳しい批判が起きており、マイクロソフト、サムスン、アマゾン、ソニー、ヒューレット・パッカードなど多くの企業がその槍玉に挙げられてきたが、特にアップル社は、業界リーダーであるだけに批判が強い。そのため同社は三大目標として、年少労働の禁止、安全基準の向上、労使関係の改善を掲げて、昨年も451件の監査を実施している中で、外部のNGO団体から摘発がされた。同社は早速調査に当たると言明した。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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