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No.261(2014/8/21)
東欧の労働事情(その2)

ハンガリーの労働事情

【ハンガリー 労働法の改正で法を下回る労働協約の締結が可能に】

 ハンガリーの労働法(レイバー・コード)では、労働組合が労働協約を結べるのは、組合員数が、その会社の全従業員数の10%を超えて組織されている必要がある。
 労働法によって、さまざまな労働基準が定められているが、労働契約の内容は、法よりもさらにいい条件、高い水準を定めることはもちろんのことであるが、大変残念なことに労働法が改正されて、労働法が定める基準よりも悪い条件、低い基準で労働協約が結べることになった。例えば、時間外労働は、法律では年間250時間までとなっているが、労働協約の場合は最大300時間とすることが可能となる。
 しかし、二つほど、いいと思われることがある。一つは、労働組合幹部の保護がある。これは、労働組合の幹部が会社との、交渉など組合活動を行なうことによって職を失うことはないという、労働組合の幹部の雇用が保護されている。もう一つは、タイムオフという仕組みがあり、これは組合員1人につき30分、組合の専属の人(役員)が仕事を離れて組合活動に従事する時間が持てるという仕組みである。組合員2人で1時間、仕事をせずに組合活動に従事できる。したがって、組合員数が多ければ多いほど、専属の人の給料を会社に払ってもらいながら組合活動に専念できる時間が長くなる。
 労働組合としては、改正された労働法を再度改正し、従業員、働く人、組合員にとって現在の不利な状況を変えて、組合に力を取り戻したいと考えている。ストライキ法も改正され、現在、ほとんどストライキができない状態になっているのを再改正して、力を取り戻したいと考えている。そのために、最も重要なことは、組織化して組合員を増やすことである。組合員数の減少に歯止めをかけるためにも、組織化に力を入れていきたい。
 ハンガリーの最低賃金は月額10万1500フォリント(約4万3645円)で、フルタイム労働者の賃金(23万2300フォリント 約9万9889円)の43.7%に相当する。しかし、最低賃金の手取りは6万6483フォリント(約2万8588円)にしかならない。ハンガリーの税金は一律16%であり、これに社会保険料18.5%が加わるため、月収から34.5%控除される。同様にフルタイム労働者の平均手取り額は15万530フォリント(約6万6483円)となる。加えて付加価値税は、食品や医薬品などへの軽減税率があるものの、27%とEUの中でも最も高い水準にある。一律16%の所得税は、高額所得者に有利で低所得者の負担が重くなる逆進性の問題があるため、累進税率に戻すべきである。

*1フォリント=0.43円(2014年8月18日現在)

 

ブルガリアの労働事情

【ブルガリア EUの中でも最も低い賃金水準】

 EUの中でも、ブルガリアの平均賃金は最も低い水準となっており、月額で約414ユーロ(約5万6751円)となっている。輸送部門における平均賃金は、388ユーロ(約5万3187円)と全国平均に比べ低い。ブルガリアの労働者の70%は、全国平均以下の賃金となっている。法定最低賃金は、月額約170ユーロ(約2万3304円)となっている。低賃金労働者の割合が非常に高く、トータルで見て27%余りが低賃金労働者である。現在、最低賃金について政府と協議中であり、労働組合側は380ユーロ(約5万2090円)を提案しているのに対して、政府からは190ユーロ(約2万6045円)の提示がされている。
 平均失業率は、13%でEU加盟28カ国の平均値からすると2.2%上回っている。とくに、若年層の失業率が22%と高いことと、上昇が続いていることが問題である。また、全ての年齢層において失業の長期化が進み、さらに深刻化している。加えて、失業における性差(男性が有利)がより拡大しているという状況にある。
 新自由主義的な圧力は、EU全体に及んでいるが、この圧力はブルガリアにも大きな影響を及ぼしている。それは、民営化、一部または完全なアウトソーシングといった形で影響が顕在化している。こうした新自由経済的な圧力を背景に、毎日のように団体交渉、労働権もしくは団結権に対して、さまざまな形で労働側に対する「攻撃」が行なわれておいる。このため、労働組合が弱体化し、場合によっては消滅するケースも出てきている。労働法による保護があるにもかかわらず、労働組合員を解雇から保護するということが極めて難しい状況にある。経済危機(注)を理由に、年々、社会対話も弱体化してきている。
 ブルガリア運輸労連(FTTUB)の取り組みでは、アウトソーシング化を阻止する運動に成功を収めている。この結果は、労働協約という形で非常によい成果を収めることができた。このような闘争と対話とのバランスを保つことや、ロビー活動等の組み合わせで労働側の主張を反映させようとしている。社会的対話については、企業レベル、部門レベル、ナショナルレベルなど様々なレベルで行なっている。

(注)ブルガリアは1996年の経済危機(マイナス成長と500%超のハイパーインフレ)を受け、1997年にカレンシー・ボード制(自国の通貨に見合う外貨(ドルなど)を中央銀行が保有する制度)を導入。その後、ブルガリア経済は一定の安定を達成したが、2008年の世界同時経済不況の影響で、2009年の実質GDP成長率は-5.5%と大幅に下落。その後は、2011年1.8%、2012年は0.8%成長。一人当たり名目GDPは、7004ドル(約71万6789円)で世界100位。

*1ユーロ=137.08円(2014年8月18日現在)
*1ドル=102.34円(2014年8月18日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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