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No.260(2014/8/20)
東欧の労働事情(その1)

 JILAFの招へい事業に参加した東欧チームによる、労働事情を聴く会が7月10日に行なわれた。今回は、チェコ・モラヴィア労働組合連盟(CMKOS)と、ルーマニア自由労働組合同盟(CNSLR-FRATIA)からの報告について紹介する。次回は、ハンガリー労働組合全国総同盟(MSZOSZ)とブルガリア独立労組連盟(KNSB/CITUB)を予定している。

チェコの労働事情

【チェコ、政権交代で最低賃金の引き上げが実現したが、その水準は低い】

 2007年からチェコでは右派政権が続いていたが、2014年1月に左派政権が誕生し状況が変わりつつある。
 右派政権は、最低賃金の引き上げに消極的であったが、現政権との合意の結果、金額について完全に満足というわけにはいかないが、最低賃金を2015年には9000コルナ(約4万4100円)、そして2016年からは9500コルナ(約4万6550円)に引き上げることになった。最低賃金に対するチェコ・モラヴィア労働組合連盟の目標は、少なくとも平均月収の50%の水準にまで引き上げることである。平均月収は、2万6637コルナ(約13万521円)で、中央値が2万2288コルナ(約10万9211円)となっている。
 チェコの失業率は、2014年の5月時点で7.5%、この水準は2013年より若干上がっているが、季節労働の変動があったためである。その失業給付金は、最低賃金よりも高い実態にある。したがって、最低賃金水準で働いて納める税金よりも、政府が失業者に払う給付金のほうが高いという状況にあるため、失業者は職を探そうという努力をしなくなっている。漸く職を見つけても、最低賃金で働くことになれば、失業手当よりも収入が少なくなってしまうからである。こうしたことからも1日も早く最低賃金の引き上げが必要と考えている。
 政権交代前の右派政権時代に民法が改正された。この民法の改正は、1960年に民法ができてから最大の改正であり、改正民法が発効したのは2014年1月1日である。この改正は、労働組合に悪影響がある条文が多い。その中で最も大きなものは、組合設立の手続きについてである。改正前は、労働組合として適正なものであるという証拠さえあれば済んだものが、改正後は政府に登録をすることが義務づけられた。こうした条文は、チェコ・モラヴィア労働組合連盟としては、ILO第87号条約の「結社の自由、団結権の保護」に対する重大な侵害であると考えている。

*1コルナ=4.90円(2014年8月18日現在)

 

ルーマニアの労働事情

【ルーマニア、右派政権による労働法改正で組合活動が困難に】

 ルーマニアの人口は減少傾向にあり、1990年代は2400万人いた人口が、現在は1960万人となっている。このうち、納税をしている労働者は(登録労働者数という)570万人で、年金受給者数が530万人にのぼる。登録労働者には、農業、自営業、海外に出稼ぎに行なっている労働者は含まれない。年金財政は非常に厳しい状況にあり、海外(国際機関)からの借入金で年金を支払ってきたことから、政府は、給付の切り下げを検討している。
 失業者数は40万人で、失業率は比較的低く7%となっているものの、海外で働く移民労働者は多く、300万人ほどになっている。これらの労働者は、欧州における先進国ドイツ、フランス、イタリアなどで働いている。
 ルーマニアの最低賃金は比較的低く、月額180ユーロ(約2万4674円)となっている。平均賃金(中央値)は、月額500ユーロ(約6万8540円)となっている。
 ルーマニアの政権は右寄りであるため、労働関連法、対話に関する法律は、労働組合に対しては厳しいものになっている。また、労働組合の組合員、または役員の権限が縮小されている。このような状況下にあるため、ストライキを行なうことが難しくなっている。また、ストライキを違法と宣言することが容易であるということがいわれている。
 このような流れの中で、労働組合リーダーあるいは組合員が、労働組合の活動を行なうための休みをとることができないという法的な障害も存在する。また、以前は団体交渉については、あらゆるレベルで可能であったが、現在は全国レベルではできなくなっている。
 ルーマニアでは、労働組合が政治に関わることは、法律で禁止されている。
 
(注)ルーマニアの改正労働法は、2011年4月に施行され、それまで労働側に有利であった規制が、経営側が有利となる内容となった。例えば、試用期間は30日から90日へ延長され、試用期間中はいつでも解雇が可能となった。また、会社は、評価結果にもとづいて労働者を解雇することが可能となった。
 労働法の改正に対しては、ルーマニア国内の労働組合によるストライキなどの抗議行動のほか、国際労働組合総連合(ITUC)もルーマニア議会に「労働者の権利の保護を弱める」との書簡を送るなど国際労働運動からも問題視されている。

*1ユーロ=137.08円(2014年8月18日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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