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No.259(2014/8/13)
シンガポール、労働者保護強化の労働法改正

 シンガポールの基本的な労働法制である「雇用法」の改正が注目されている。一人当たり国民所得では日本を上回り、経済発展と国民生活の向上が続く同国であるが、一方では、厳しい競争社会であることが知られている。そのなかで、「雇用法」が、労働者保護を強化する方向で改訂され、この4月に施行されたのだが、3か月を経て、適用は順調に進められている。
 シンガポールの「雇用法」は、日本でいえば、労働基準法に労働組合法の一部を合わせたようなものといえる。労働者保護の特徴は、労働者の種類と収入により、そのレベルが大きく異なることである。今回の改正により、労働力人口の約13%にあたる45万人程度に、労働時間や労働契約などの保護規定が新たに適用される。
 これまでの規定では、「雇用法」による労働時間や労働契約の保護は、肉体労働者の大半と低収入の一般事務職(月収2000シンガポールドル・約16万3620円以下)にのみ全てが適用される。それ以外の一般事務職は、労働時間、休日休暇などの保護は適用されない。専門的、監督的労働者はさらに保護される範囲が制限される。一定収入以下(月収4500シンガポールドル・約36万8145円以下)の場合は労働契約のうち「解雇」など一部は適用されるが、収入がより高い場合には、その適用もない。
 今回の改正により、労働者保護が全面的に適用される一般事務職の区分が「月収2500シンガポールドル・約20万4525円以下」にアップされた。専門的、監督的労働者については、上記の一定収入以下の場合、労働契約関係はすべてが適用されることとなった。
 シンガポール全国労働組合会議(NTUC)は、グローバル化にさらされるオフィスワーカー、専門的、監督的労働者の保護強化を求めていた。今回の改正について、「前進であるが、今後一層の保護強化を求めていく」としている。
 シンガポールの労働法制は、「雇用法」を基本とすることころなど、旧英国領の国・地域と共通する面を持つが、最近では、マレーシア、香港で最低賃金法が制定されるなど、自由競争主義に歯止めをかける動きがみられ、今回の労働法改正はアジアの労働法の動きとしても注目される。

*1シンガポールドル=81.81円(2014年8月7日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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