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No.256(2014/7/30)
ミャンマー労働者の賃金事情について

 JILAFの招へい事業で、6/22~7/1までの10日間、ミャンマー労働組合連盟(FTUM)から10名の若手労働組合指導者が来日し、日本の労働事情等について研修を受けた。日本滞在中に、研修参加者から提供された情報をもとにミャンマーの賃金実態を報告する。

【残業なしでは生活ができない実態】
 ミャンマー労働者の賃金水準は、残業代込みで月8万チャット(約8000円)~15万チャット(約1万5000円)である。製造業で働く労働者の最低レベルの賃金は月2万5000チャット(約2500円)となっており、残業を含め1日10時間~12時間働かざるを得ない状況にある。ミャンマーの労働法では、1日8時間労働(週休1日)で、会社からの残業指示に従うかどうかは、労働者本人の意思に委ねられている。しかし、現実には生活が苦しいことから残業をせざるを得ないのが実情である。
 縫製業の会社に勤めて3年(縫製業で17年の経験有)となる労働者の賃金実態(1ヵ月分だけではあるが)を紹介する。

労働者の賃金実態(縫製業)
基本給(26日出勤)
時間外手当(63H)
精勤手当
勤続加算
食事手当
能力給
救援手当
33,280 Kyat
21,993
8,000
2,000
7,600
12,000
30,000
注1 2014年5月14日支給
注2 ミャンマーチャット(Kyat)
1Kyat=約0.1円
注3 支給額は、下2桁を切り捨て(四捨五入ではない)て支払う。
 合計 114,873
控除(健康保険料) 1,200
 控除後 113,673
 支給額 113,600

【低い基本賃金の割合】
 基本給は賃金合計の29.0%にすぎない。時間外手当は、63時間の残業をして得たものであり、同じく19.1%となっている。また、63時間の残業は少ない方で、別の労働者(プラスティックの家庭用品製造)からは月108時間働いているとの報告もあった。日本の基準(週40時間労働)で考えれば、63時間の残業は80時間(注)の残業に相当する。基本給を小さくしているのは、残業をさせるためであると彼(女)らは主張する。これだけの長時間労働では、倒れる人や死亡した人もいるというが、監督官は、会社寄りの立場をとりほとんど労働者の方に目を向けることは無いという。
 基本給に次いで大きな割合を占める救援手当は、2008年5月のサイクロンで甚大な被害が発生したことに対する救援のための手当として政府が定めたものであるが、金額、支払期間等については企業に委ねられている。企業にとっては、賃上げによって基本給を上げるよりも、コストがかからずに済んでいるとの見方もある。

【最低賃金決定プロセスに課題】
 ミャンマーでは、最低賃金法が制定され今年中にその水準(金額)を決めることになっている。労働側の目標は、1時間700チャット(約70円)、1日5600チャット(約560円)、1カ月14万5600チャット(約1万4560円)にすることである。これは、残業なしで必要な1ヵ月の最低生計費から導き出したものである。ミャンマーのGDP規模からすれば、1カ月12万8000チャット(約1万2800円)の支払い能力は十分にあるとFTUMは試算している。
 最低賃金の水準は、最低賃金制定委員会で議論が行なわれているが、委員会のメンバーは、公労使が各5人(合計15人)、このほか政府委員(大臣も含まれる)が12人となっている。委員の構成から、労働側が不利なことは明らかであると労働側は見ている。

(注)ミャンマーの工場法では、1日8時間以内、週44時間以内と規定している。また、法定労働時間外の労働に対しては、2倍の賃金を払うこととされている。

*1チャット=0.10円(2014年7月24日現在)

過去の関連記事.
メルマガNo.171(2013/04/12)http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/171.html

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