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No.253(2014/7/16)
労働運動の歴史教育を要求する労働組合

 アメリカでは1960年代に労働組合の要求によって、公立大学にレイバーセンターが設置され、労働運動の調査研究・学位取得などのプログラム運営が行なわれている。さらに労働組合への理解を醸成するため、労働運動の歴史を高校カリキュラムに組み込む要求がイリノイ、マサチューセッツ、ペンシルバニア、テネシー、バーモント州など6つの州で出されているが、反対され実現できていない。
 カリキュラムには19世紀の職能組合の成立から1930年代の産業別労働組合の勃興、政治勢力としての労働運動などが考えられている。しかし現在実施できているのは、カリフォルニア州とデラウェア州の2州だけである。 
 コネチカット州でも労働組合の精力的な運動がなされているが3回失敗しており、前回は資本主義の歴史を入れる譲歩や、法律でなく教師の選択で行なう提案もあったが、議会で反対された。導入が認められたのは大量のアメリカ移民を生んだアイルランドの飢饉、黒人アメリカ人の歴史、ユダヤ人に対するホロコーストであったが、労働運動については限られた時間と資金の中で、余裕はないというのが反対理由である。
 連合も、政府に対する政策・制度要求の中で、教育の場から労働の場への円滑な接続を実現するため、労働教育のカリキュラム化を推進することを掲げ、実現に向けて取り組みを進めている。具体的な内容は、労働教育のテキストを策定し、「働くことの意義」を学ぶ授業時間を確保する。特に「労働の尊厳」を深く理解するとともに、働くことを通じて社会に参画することを学ぶ機会を充実する。ILO憲章、日本国憲法や労働関係法にもとづく、「働く者の権利・義務(ディーセント・ワーク、ワークルール)」について、労働者や経営者に対して学ぶ機会を確保することなどが中心となっている。

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メルマガNo.225(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2014/225.html

米国の産業別賃金の動向

 米国におけるリーマンショック(2008年)以降の雇用は回復しつつあり、賃金は全体的に見て年間で2%上昇し、物価上昇とほぼ均衡している。過去の景気回復時には、特定産業の賃金が上がると、その産業への労働者移動に伴って他の産業も上昇するパターンが多かったが、今回は景気回復ペースが遅く、賃金上昇率も低率にとどまっている。加えてEコマースなどインターネットの発達により、賃金上昇の効果が及ばない労働者が多く、産業別に格差が出ている。
 賃金上昇が大きいのは熟練労働で、それもエネルギー、運輸、医療、IT産業などであり、低迷しているのは公務員と小売業などである。

【賃金が上昇した産業】
[1]石油・ガス
 今年4月の賃金は前年同月比11%上昇し、平均を5倍以上上回る。
[2]一時契約労働
 今年1―3月期の賃金上昇は前年同期を1%上回る2.6%。
[3]IT
  今年4月が前年同月比4.1%の上昇であり、その上昇は2012年から始まった。特にビッグ・データと呼ばれる携帯電話を利用して大量データを集め分析する分野の上昇が著しい。また医療記録をデジタル化する労働者が不足しているため、そこの上昇率も大きい。
[4]ブルーカラーの分野
 工業生産の拡大に伴い、トラック運転手と倉庫労働者の賃金は、1-3月期に前年同期比4.4%上昇した。リーマンショック時の労働者を削減したことも要因となっている。また建設機械労働者の賃金は前年比で11%上昇した。製造業の80%を占める一般労働者は年率2.3%の上昇にとどまったが、前回の景気回復時は、3-4年後に賃金が4%上昇したことから、今後の上昇が見込まれる。
[5]住宅
 住宅バブル崩壊時に多くの労働者がほかの産業に移動したこの産業では、2012年から賃金が3.3%の上昇で推移しており、この傾向は続くとみられる
 
【賃金が低迷している産業】
[1]小売
 消費は増えているものの、小売労働者の賃金は連邦最低賃金レベルに張り付き低迷している。ファストフード店がその典型である。酒類販売のリカーストアの賃金は4月に前年同月比1%弱上昇、電子機器販売ではマイナス4%であり、上記ITにおける上昇のあおりを受けた感がある。
[2]公務員
 財政赤字に悩む市町村など地方自治体と連邦公務員給与は2013年に1%上昇した。
[3]芸術・演劇
 寄付金の減少などで俳優や脚本家、音楽家の給与は、今年1-3月期は前年同期比マイナス1.1%となった。
[4]全般
 全体的に見て、景気が回復し始めた2009年から大多数の労働者の賃金上昇は物価を0.2%下回る。以前の景気後退後の賃上げは物価調整後で2.3%であった。

 今後の賃金の動向については、1946年から1964年の間に生まれたベビーブーマー(推計7800万人)を含めて、退職者が増加していることから、賃金は上昇すると見る専門家が多い。中小企業もその3分の1が6カ月以内の賃上げを考えているといわれ、その数は1年前の2倍である。また、6カ月以内の失業者は4.1%であり、30年間の平均を下回る。その短期失業者は復職機会が多い労働者で、労働者不足は賃上げ要因になる。
 しかし、連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長など他の経済専門家は6.3%の失業率(6カ月以上の失業者を含む340万人)が、依然として賃上げ阻害要因とみている。

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米最高裁がオバマ大統領による労働委員会委員任命を違法と判決

 米国最高裁は、2012年の上院議会の断続会議中にオバマ大統領が行った全国労働関係委員会(NLRB)委員の任命を憲法違反との判決を下した。
 当時、上院共和党は20日間の延長議会開会中に、断続的に3日間の会議、その後は休会という審議延長戦術を繰り返したため、オバマ大統領は議会が実質休会であるとして、議会休会中の大統領任命権(リセス任命)を行使して、労働委員会委員を任命した。大統領が指名する政府高官などの人事には、上院の承認が必要だが、合衆国憲法の規定により、議会の休会中は上院の承認を得なくても、大統領が任命できるとされている。
 このリセス任命はジョージ・ワシントン大統領から歴代続いてきたものだが、昨年ある労働争議に絡んで、連邦ワシントン・アピール裁判所(控訴審)が公式休会期間以外の任命は憲法違反と判決したため、最高裁に最終判断が委ねられた。その結果、公式休会期間以外でも10日間以上の休会時には、リセス任命を認めるとの判決を下した。
 問題が起きたのは、ノエル缶詰会社の不当労働行為を認定したNLRBの判決について、労働委員会の委員そのものが違法だとするアピールが起きたためである。
 NLRBはリセス任命後の18カ月間に436件の判決を出しているが、今回の最高裁判決に基づく上訴側の要求で、すべてが差し戻しとなる可能性もある。しかし現在の委員会構成は議会が承認した 民主党3人、共和党2人ということから、NLRB判決の覆る可能性は低い。

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発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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