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No.248(2014/6/24)
タイの労働事情

 2014年5月23日、当財団の招へい事業で来日したタイ・インドネシアチームの労働事情を聴く会が開かれた。タイからは、ITUCタイ協議会 (ITUC-TC)の5名が参加し、タイの労働事情について報告がされたので、その概要を紹介する。

【クーデターについて】
 タイでは、5月22日に軍事クーデターが起こったこともあり、労働事情の報告後に日本の参加者から、[1]タイの労働組合と政党支持はどうなっているか、[2]労働者の基本的権利も軍の意向次第で停止されることに対する危機感について質問が出された。
 [1]については、ナショナルセンターが全部で15組合(JILAF調査では13)あるが、その中で政治に関係している組合は1つだけで、あとの14組合は、政治よりも雇用者と労働者に重点を置いて活動をしており、政治に関する活動はほとんどしない。したがって、政府を応援することもないし、政治的な見解も持たない。
 [2]については、5人以上の集会、デモ行動、あるいは政治的集会は禁止された。これだけが禁止、あるいは剥奪された権利であると理解しているとの回答があった。

【最低賃金をめぐる問題点】
 最低賃金が300バーツ(約942円)/日(2012年4月~2013年1月にかけ実施)、40%引き上げられたことは、これは良い生活あるいは労働者の生活レベルが上がると思わせるものがあった。しかし、現実はこれとは逆に生活は苦しくなってきた。その理由は、政府がインフレーションを、特に身の回りの生活用品、消費財の価格をコントロールできず物価が上がったことである。加えて、使用者は、最低賃金が上がったことを理由に、様々な福利厚生費を削減するようになったからである。
  た、ある中小企業経営者は、最低賃金の引き上げによるコスト増が非常に重く、事業を継続することができず、廃業するところも出てきた。その結果、インフォーマル労働者が増え、あるいは農業に戻るという人も増えているのが現状である。

【外国人労働者、解雇をめぐる問題点】
 外国人労働者の雇用にも問題がある。多くの会社で雇用状態、雇用状況をめぐる労使紛争が起きている。その背景は、会社が外国人労働者を雇うことによって組合員数を減らし、組合の交渉力を弱めようとするために紛争が起きている。同じようなことは、非正規雇用の労働者を、労働組合と交渉する上での材料にする形で利用することもある。
 現在、実際に起きている問題は、不当な解雇の問題である。
 解雇した場合、労働者に解雇手当の支給、補償が行なわれるはずであるが、それを免れるために、様々な不当解雇が横行している。
 例えば、労働者を不慣れな職場に異動させ、仕事がうまくできないことを理由に、警告書を出したうえで最終的には解雇する、という不当解雇がよく行なわれる。また、達成できないような高い生産目標を設定し、それを労働者の能力が無いからとの理由で解雇することや、通勤不可能な場所への異動を命じて解雇することもある。

【日系企業に対する要望】
 日本人の経営者の方、それから投資家の方にお願いしたいのが、タイにおける基本的な経営に必要な法律(労働法も含めて)に関すること、働くことへの倫理観、あるいは労働者への理解を、もう少し深めていただきたい。
 2013年は、タイにおける会社、日系企業において、労働者への権利侵害をめぐる労使紛争が多かった。そのひとつの理由として考えられることは、労使間で紛争が起こった場合に、タイ人の人事部や工場長に全部任せっきりにしていることがあげられる。労使紛争が起きた場合、タイ人だけに任せるのではなく、その上の日本人の上司が現場におりてきて交渉の場に加われば、問題を長期化させたり、深刻化させたりせずに済んでいるケースもある。

*1バーツ=3.14円(2014年6月20日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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