バックナンバー

No.244(2014/6/4)
6月のサッカー・ワールドカップを控えて、ブラジル各地でストライキ

 レシフェ市の消防署でストライキ、リオデジャネイロ市のバス、公共事業、銀行警備、学校職員のスト、ペルナンブコ州警察やベロオリゾンテ市の市役所もスト、全国公的年金基金・博物館労働組合、そして大使館・領事館職員もスト、リオのオ・グローボ新聞もストといったように、ブラジルでは60の労働組合がストライキ中であり、連邦警察や空港職員・パイロット労働組合もストライキに入る。
 連邦警察は、テロ捜査や入国審査、荷物検査など、ワールドカップ中の治安や交通を支える任務を負うが、待遇面での不満を抱えている。
 一説には、ブラジルの各労働組合が6月12日から始まるワールドカップ開催を質にして政府から好条件の賃上げを勝ち取ろうとしていると言われるが、去る3月のリオのカーニバルの際の清掃労働者ストに学んだ教訓も大きい。当時、市街にゴミが溢れた結果、市当局は37%の賃上げを行なった。
 ある労働関係者は「労使関係が深刻化したというわけではないが、状況を戦術的に利用している。過去6年間、かなりの実質賃上げができた。今は完全雇用に近く、労働組合が優位にある。しかし経済が低迷し始めて失業が増える恐れのある中で、労働組合の要求はやりすぎだ」と評する。
 またナショナルセンターの一つ、FS(労働組合の力)のトレス会長は「サッカーを利用しているわけではない。経済の停滞による生活の困窮が原因だ。400万人の組合員を代表する400の労働組合が賃上げ交渉の最中だが、インフレに対応する回答さえ出ていない。ただ、国際的な評判をてこに使うことは心得ている」と言う。
 このような労働状況について、フォルタレザ大学のアナ・ゴメス教授は「1930年代に制定された労働法が障害になっている。この法律は労働者保護をうたいながら労働者から自治権をなくした。雇用面の細かな点まで規定したことにより労使交渉の余地をせばめた。労働組合には政府が干渉しており、強制加入させられる組合員の労働組合支持は非常に低い。多くの労働組合幹部は使用者寄りで、汚職していると思われている。賃上げにしても組合員による投票はなく、幹部が一方的に受諾の是非を決める」という。
 あるジャーナリストは「こうした結果、労働組合幹部不信の組合員は過激な行動に走るようになった。現在のリオのバス・ストにしても、1週間で500台のバスに火をつけるような事態を引き起こした」と論評する。
 他方、ワールドカップ開催への多額の資金投入により、国民生活がなおざりにされたと感じる多数の人たちが、50以上の都市で道路封鎖やデモ行進などの抗議活動を行なっている。サッカー開催中には連邦警察のストライキも予告され、大会妨害を断固阻止する構えの政府が対処を誤れば、不測の事態も否定できない。
 昨年6月のコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)では、政権の汚職やワールドカップへの巨額出費を批判する市民が各地の街頭を埋め、商店の破壊や略奪も頻発した。日本対メキシコの試合があったベロオリゾンテでは、デモで交通がまひし、飛行機に乗り遅れた日本人観戦者が続出した。
 かつて10年近い間、着実な経済成長を成し遂げたブラジルだが、現職のディルマ・ルセフ大統領になってからは景気低迷とインフレ、犯罪の増加と投資の減少に見舞われている。昨年には、数百万人に上る大規模な抗議デモが全国的に発生し、大統領は公共サービスの欠如、教育や医療、運輸、警察力などすべての分野における不備を認めざるを得なかった。大統領は今年10月には再選の時期を迎える。

過去の関連記事.
メルマガNo.195 (http://www.jilaf.or.jp/mbn/2014/223.html)
メルマガNo.184(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/184.html

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.