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No.232(2014/3/12)
ブラジルの労働事情

 国際労働財団(JILAF)は、招へい事業で南米チームを招聘し、1月24日、労働事情を聴く会を開催した。BRICSのひとつであるブラジルの労働事情について、ブラジル一般労働組合(UGT)からの報告をまとめた。
 報告者はネイラ・タチアーニ・ノゲイラ・ドゥアルチコスタ氏(UGT・情報通信連盟ブラジリア支部書記)、ジョジネイデ・デ・カマルゴ・ソウザ氏(UGT・イビチンガ市被服労働組合教育担当書記)、ルイス・グスタヴォ・パドゥア・ヴァウフリドゥ・フィリオ氏(UGT・青年員会委員長)の3名。

【失業率は過去最低水準にあるがその質に問題も】
 ブラジル経済は緩やかな景気回復が続いている。失業率は過去には14%を記録したこともあるが、現在では5%前後で推移しており、過去10年間で最低の水準にある。しかしフォーマルセクターの労働者の流動性が非常に高く、年間に1600万人が入職するものの、1500万人が離職するという状況である。また若年労働力の36%は失業しており、職を求める若者たちにとって大きな不満となっている。
 このように労働者の流動性が高いことから、企業は労働者をより賃金の安い、ほかの労働者に入れ替えることを盛んに行っている。これが全国的に賃金水準の低下を引き起こしている。また黒人労働者、女性労働者は、一般にそのほかの労働者よりも賃金が3割低い。こうした賃金差別は法律違反であるが、労働市場における慣習となっており、組合はこうした差別とも闘っている。

【インフォーマル労働者は4割】
 ブラジルのフォーマル労働者とは、雇用契約があり労働手帳を持つ人たちを指している。しかし、労働手帳を持たないインフォーマルセクターの労働者比率が高く、都市部でも農村部でも、労働人口に対しておよそ4割がインフォーマルセクターで働いている。労働手帳には労働契約が無期限、あるいは日本で言うパート労働者と同じ、2、3カ月の期限つきの契約等が記入されている。インフォーマル労働者は、労働手帳を持たない労働契約がない人たちである。労働手帳を持たないと、法律で定められている社会保障が受けられない状態となることと、最低賃金以下での労働を強いられる場合もある。
 インフォーマルセクターで働いている人たちは、2つに分けられる。一つは、自営業等で自らその仕事を選んだ人たちで雇用されるのではなく、会社との業務契約によって仕事をしている人々である。もう一つは、その状態を本人は望んでいないが、インフォーマルセクターの労働を強いられている人たちである。労働手帳を持たないため、ほとんどの社会保障を受けることができないが、インフォーマル労働者に対する年金制度(フォーマル労働者に対する年金制度とは別)があり、女性は60歳、男性は65歳で受給できる。
 我々はディーセントワーク実現に向けたキャンペーンを展開しており、そのひとつにインフォーマル労働者を減らそうという運動を進めている。これが組合運動の一つの大きな目標でもある。また、労働時間の短縮にも取り組んでいる。連邦憲法(労働法も同様)では、労働時間を週44時間と定めているが、組合側は賃金を減らすことなく週40時間に短縮することを求め運動を進めている。

【最低賃金は5年で1.6倍に上昇】
 全国の一律最低賃金は、2014年1月に月額678レアル(約3万83円)から6.8%引き上げ、724レアル(約3万2124円)となった。これに対してインフレ率は、年間5.77%であり、最近13カ月間の最低賃金の引き上げは、インフレ率の30%増し以上となっている。5年前(2009年)の最低賃金は465レアル(約2万632円)であったことから、2014年の水準は1.56倍に上昇している。これは、各ナショナルセンターと政府との交渉の結果、獲得した成果である。最低賃金の決定にあたっては、今後も2年前のGDPに前年のインフレ率を加味して算出する方法が、引き続き確保されることとなった。
(注)2009年から2012年までの物価上昇率は17.5%程度。2013年は6%前後で推移している。

資料:IBGE(ブラジル地理統計院)
(注)ブラジルでは、年末(クリスマス)手当に相当するものとして1ヶ月分の賃金を2度に分けて支払う。2月~11月に半月分、12月に半月分が支払われる(労働法)。

1レアル(BRL)=43.68円(2014年3月7日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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