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No.230(2014/2/26)
全米自動車労働組合(UAW)組織化の前に立ちはだかるVW以外の部外者

 全米自動車労働組合(UAW)によるテネシー州チャタヌガのフォルクスワーゲン(VW)工場の労働組合結成に対して全国的な注目が集まっている。
 米実業界は、VW経営者がドイツVW労働組合と連携して、ヨーロッパで普及している労働者協議会=ワークカウンシル(WC)設置を計画し、労働組合を排撃するどころか、好意的な発言を行っている点に不満を募らせていた。
 労働組合結成キャンペーンの際には通常、労働組合が不公平を訴えるのが一般的だが、ここでは労働組合反対派が不満を大にしており、「UAWがここで成功すれば、アラバマ州のメルセデス・ベンツ工場、サウス・カロライナ州のBMW工場にも飛び火する」と述べ、「VW経営者が違法に労働者に労働組合加入の圧力をかけている」とまで主張している。そのほかにも、民主党が伸びると増税になると主張するグループもUAWの組織化に反対運動を行なっていた。
 こうした状況で2月12日~14日の3日間かけて行われたUAWによる組織化の賛否を問う工場従業員の投票は、労働組合賛成626に対して反対が712との結果となって、労働組合の組織化が否決された。
 今回の組織化は会社側も積極的に後押しし、州法も労働組合加入と組合費納入が従業員の自由意志による事を定めている関係から、労働組合の組織化は問題なく達成されるとみられていたが、結果は意外なものであり、米労働運動史上歴史的な出来事となった。これはUAWにとって大きな打撃であり、UAWキング会長は「今回の組織化に当たっては、当事者の労使ではない共和党コーカー上院議員などの外部関係者が大きく関与した。その事に大きな怒りを感じる」と述べた。
 事実、議会多数派の共和党議員たちは「労働組合ができれば税制面の恩典がなくなる。また企業への補助金も認めない」と公言し、コーカー上院議員は、会社がそうは言っていないのに役員の1人から聞いたとして、「労働組合に反対するなら、新型SUVはメキシコでなくチャタヌガで生産される」と発言、共和党のハスラム州知事は「UAWの組織ができると部品工場は来なくなる」と言い立てた。またあるグループは「デトロイトの二の舞を踏むな。オバマの手先になるな」と町中に書き立て、ラジオでも警鐘を鳴らした。反労働組合の従業員はUAWに×を書いたTシャツを着用し、ウェブ・サイトを用いた反労働組合組織化キャンペーンを行なって、労働組合賛成に署名した労働者多数を反対に変えた。UAWデニス財政事務局長は「組織化に成功するにはひどい使用者という敵が必要だが、VWはそうでなかった」とも語る。
 VWのある従業員は「今の待遇に満足している。労働組合が必要とは思わない」と語り、ミシシッピ大学のロール教授は「南部諸州は歴史的に低賃金で、高賃金の仕事を見つけるのが難しかった。そのため労働組合加入など雇用を危険にさらすことには極めて敏感に考える」と説明する。
 他方、VWチャタヌガ工場のフィッシャーCEOは「今回の投票が労働者協議会に反対したということではないと思う。これからどうしてゆくか考えていきたい」と語る。
 チャタヌガでUAWは、政治的敵意にさらされ、憎むべき相手もいない中で、デトロイトを破産させたという悪いイメージを引きずった。労働組合員に会ったこともないという一般人は労働組合に恐怖心を持っており、自動車労働組合に対する印象も大変ネガティブといわれる。自動車調査センターのある労働専門家はこの辺について「一般の人が、日常接しているUPS(米国小包郵便)の運転手や病院の看護師たちも組合員だと知ったら、凶悪犯みたいなイメージも変わるだろう」とまで語る。

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メルマガNo.206(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/206.html

米労働組合承認迅速化の審議再開

 団結権・団体交渉権・不当労働行為の禁止など主要な労働関係法を執行する米連邦政府の独立行政機関である全国労働関係委員会(NLRB)は、労働組合承認手続きを迅速化する法案の審議を再開する。
 この迅速化手続きは、労働組合の結成を容易にするもので、インターネットなどによる労働組合承認に必要な情報の提供を認め、また投票に関する反対訴訟は投票終了後に取り扱う、などの内容を含んでいる。
 これは、2009年のオバマ大統領の就任時に全米の労働組合が切望した、過半数従業員の署名集めをもって労働組合を承認し、無記名投票は必要としないという従業員自由選択法(EFCA)とその方向性を一にする。しかし民主党提案のこのEFCAは議会を通過しなかった。
 現在は、労働者が労働組合を結成するときには、一定数の賛同を集めてNLRBに申請し、その承認を待って投票を行うことになるが、その間の数週間、使用者から様々な干渉が行なわれたり、反対訴訟が起こされたりして、結成が妨害されることが多かった。
 NLRBでは、2011年にも今回と同様の迅速化が審議されたが、米国商業会議所や共和党の反対、それに連邦裁判所の承認手続きに問題があるとの判定がされ、廃案を余儀なくされた。
 今回のNLRB審議には、関係者などからの意見聴取などで75日間をかけた後、4月初旬に公聴会が開かれる予定だ。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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